【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

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手帳

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 私は、いつもの様に絵画の中のガゼボに佇んでいると、ふいに誰かが歩いてくる。

 「やあ、婆さん。これを渡しに来た」

 エルリックが古い手帳の様な物を差し出した。

 持ち主のサインを見ると

 アラン・デューダ

 そう書かれている。

 この名前には心当たりがある。

 かつての魔術師長官で夫の懐刀でもあった人物。

 「これは、俺が見つけたんだ。長官の部屋の本棚の奥に隠されていた。婆さんは真実を知る権利がある」

 「そうか、ならば置いていくが良い」

 「ああ、婆さんも年なんだからあんまり無理するなよな」

 「ふふふ、妾の心配等せずともよい。ジョゼフィーネに宜しく伝えよ」

 「ああ、また来るよ」

 もう、私も年だ。次に会うことはないだろう。

 私は、寝台に座って手帳を開いた。

 そこに書かれていたものは、夫と魔術師長官の過ちだった。

 
ーーーー

 私はいつものように血縁鑑定を行っていた。
 だが、ハウエル伯爵家の鑑定がまだだった為、帰宅が遅れそうだ。

 ハウエル伯爵家には令息・令嬢が一人ずつおられるが令息は亡くなられ、令嬢のみが一人いらっしゃる。

 だが、それとは別にもう一人令息がおられた。

 この方が成人されたので血縁関係を更新する事になったのだが、不味い事になった。

 申請されている血と誕生した時の血が変わっている。

 私は直ぐにその事を王太子殿下サビエル様に報告したのだが、殿下の回答は

 「すり替えろ、問題がないと報告するように」

 そう指示され、多額の口止め料を渡された。
  
 私の家は当日、父が莫大な借金をしており、妹が返済の為、娼館に売られそうになっていた。

 正直ありがたいと思ってしまっている。

 そして、後日、王太子妃となられる方がハウエル伯爵令嬢だと知る事になる。

 だから、王太子殿下は黙認するように指示を出されたのだ。

 しかし、それが王家にとって最大の禍を招いてしまうことになった。

 マーガレット・ハウエル伯爵令嬢を手に入れるための代償は大きかったのだ。

 当日、ハウエル伯爵は奥方を失った頃に寂しさに屋敷のメイドに手をつけた。

 このメイドが生んだ子供は確かにハウエル伯爵の血を受け継いでいる。
 
 だが、子供は成人する前に流行り病で死亡しており、代わりに他の男との子供をハウエル伯爵の子供として申請しようとしたのだ。

 彼女は商家の出身の平民。恐らく貴族の血液鑑定の意味を理解していなかったのだろう。
 
 王妃の実家ということで、全くの他人が王宮の貴族社会を混乱に導く事になるとは国王陛下も予測しなかった事なのだ。

 これにより伯爵は異母姉が王妃という位についた為、気に入らない者を排除し、遂には第二王子まで手にかけた。

 そして、その子供も毒牙にかけている。

 私は死に行く運命だ。

 どうかこの手帳を開いた者が本来の正しき王室に戻れるよう尽力してほしい。

 だから、この手帳には特別な魔術を施す。

 必要な者のみ・・・・・・がこの手帳を手にできる様に

 私の大きな過ちにより国が混乱した代償を自身で払うことにする。

 未来永劫の闇に身を置くことを決めたのだ。

 罪を償う為に…

 手帳はここで途絶えていた。

 私は一息つくと、何故もっと早く教えてくれなかったのだろう。

 そう考えていた。
 
 私個人の為にこんな大きな代償を払う事に何の意味があったのか。

 多くの無実の人の死の上に立っている事実をまざまざと見せつけられたような気がする。

 今は亡き夫の執着が恐ろしい。

 生きている間は私を愛していると言わなかったのに、死んでからは思い知らされる。

 私はもうすぐ迎えがくるだろう。

 だが、夫と同じ墓に入りたいとは思わない。

 身勝手で傲慢な男は、最後まで私を振り回す様だ。

 私は寝台に横になって眠りについた。

 私を迎えにくる役目はあの黒髪の男

 エドワード・ブラックボンド

 である事を祈りながら、静かにその眼を閉じたのだ。二度と目覚める事のない世界に向けて───

 

 

 
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