疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

文字の大きさ
25 / 134

父親

しおりを挟む


隣領バスク地区の修道院に行く2日前

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


父親という人とケントお兄様と私3人で食事をすることになった。


「最後の晩餐とはこのことね。」苦笑しながら呟く。

「リリアお嬢様、大旦那様とのお食事会ですが、こちらのドレスはいかがでしょうか?」

デリスが用意したのは、バラとリボンとレースが散りばめられた
ピンクと水色配色の誰も着たがらないような最悪のドレスだった。


デリスは普段私に関心がない。救うこともなければ陥れることもない。
放ったらかすのが基本のメイド。お金で物事を采配する主義だから、うまくいかなかった時あのような行動に出るのだろう。

今日もおおかた兄に何かしら要請されたのでしょう。

「デリス。ありがとう、でも昨日街で今日のドレスは自分で購入しました。
全て自分で出来るのであなたは何もしなくていいわ。本家でお茶でも飲んでて。」

「いえ、でも…。」

「これからあなたもバスク地区に行くでしょう?何が起こるかわからないわ。
あなたに頼りっぱなしは良くないと思うの。私の身分のせいで危険なこともあると思うわ。
あなたを道連れにしたくないの。分かるわよね。」


もうこれ以上私のテリトリーに踏み込むなという意志を表情や態度にも出す。


「う…。わ、わかりました。でもケント坊っちゃまには…。」

「ケントお兄様には私がわがままを言ったとしっかり説明するわ。大丈夫よ。

あ、デリス、これはこれからお世話になるあなたに。」
趣味は悪いが価値のある宝石の指輪を渡す。


「分かりました。では、失礼します。」

「ああ、お化粧道具や髪飾りのセットはここに置いておいてね。」

「かしこました。では。」

デリスは部屋を出た後、リリアにもらった宝石を見て笑いを堪えている。

「もらっちゃった。これ、変なデザインだけどダイアじゃない。
くくくく。貴族の女の子一人で何ができるって言うの。着付けもメイクもヘアセットもきっとグチャグチャだわ。

私がいなくても一緒よね。さあ、この指輪を換金しに行こうっと!」スキップをして街に出た。


「ケント、リリアが二日後バスク地区にたつ。もしかすると今日が最後の晩餐かもしれない。
今までケントばかりにリリアの面倒を見せてきて本当にすまなかった。」

「父上、よして下さい。僕の力が及ばないゆえにリリアはあのように醜く成長してしまいました。
僕は出来る限りリリアを応援してきたつもりです。
母上がいないことが、あれ程までに僕を無力にしてしまうのですね。本当に残念です。」

「いや、ケント。悪いのは私だ。妻を亡くしてもう13年になる。
まだこの事に十分向き合えていない私の弱さがケントを不自由にさせてしまったな。
お前ももういい歳だ。リリアが家を出たらお前にも良い妻を迎えよう。」

「ご配慮ありがとうございます。僕もリリアはたった一人の大切な妹です。
今回は本当に残念ですが、僕がこの家を、父上が守ってきたこの領地を必ず守っていきます。」

「頼むよ。ケント。」




コンコン。




二人の会話中にドアをノックする音が鳴った。

「ご歓談中失礼致します。リリアでございます。私もご一緒によろしいでしょうか?」

「ん?あのリリアが言ったのか?普段なら夕食めがけて飛び込んできたではないか。」

「父上、空耳ではないですか。あのリリアですよ。姿を見れば分かりますよ。ああ、入りなさい。」

「失礼します。」リリアはドレスのスカートを両手で広げて優雅にお辞儀した。

父親はリリアの姿を見て固まった。


身長や体の丸みはあるが、愛する亡き妻にそっくりだったからだ。

優しく揺れる栗色の髪の毛、髪と同じ色の目、妻に似て少し垂れている目元、妻と同じ肌の色。

シンプルな淡い黄色のドレス。胸元に宝石を何もつけていないため耳にあるイヤリングがとても引き立っていた。
リリアの母が使っていたイヤリングだ。

妻と同じところもあるが、どことなく自分の顔と共通する部分もある。

私の子だ。私と妻の子だ。大切なケントと同様この子も大切な娘だ…。

もう少しで涙が流れそうになる。すぐ駆け寄って抱きしめそうになる。妻だけではない、私にも似ているこの子に…。
リリアは父親である私をじっと見つめながら歩いてくる。



本来嬉しいはずなのだが、リリアの目の奥には何とも言えない力が入っている。
ケントのような父親を尊敬し、敬愛するような眼差しではない。

かと言って、今まで関わってくれなかった事に対する憎しみでもない、恐れでもない。

どこか相手を探るような、

値踏みをするような、

心の中を隅々まで見透かすような眼差しだ。




私はこれでも長年領地を収めてきた。

場数を踏んだし修羅場といえるような時間もあった。人の見る目には自信がある。

目の前にいるリリアは何故か私と対等のようないや、
それ以上に威厳のある人物と対峙している気分にさせる。
一瞬ではあるが無言でお互いを探り合うような時間だった。



リリアが父親の目の前に到着すると、上品な笑顔を作り

「お久しぶりでございます。お父様。お会いしとうございました。お身体はいかがですか?」

とふんわり笑う。

今までの探り合いが無かったかのような優しい笑顔だ。

ああ、表情や目の動き、息遣いで全て私が見切られたのだろう。

今の短い時間で私の弱い部分を知られてしまった。そりゃそうだ。
私はこの子に償えないほど長い時間親としての関わりを放棄したのだから。

「ああ、リリア。すごく体調がいいよ。君もとても綺麗だ。」

「まあ、嬉しい。私も最後にお父様とお会いできて嬉しいです。今日はゆっくりお父様とお話がしたいですわ。」



リリアが入室してから父親と会話するまでの時間、ケントは二人の間に入らなかった。

いや、入ることが出来なかった。
無言で繰り広げられていたが、明らかに何かのせめぎ合いがあった。

自分では立ち入ることのできない高尚な時間、空間だった。

父親とあの様な時間が持てるリリアに嫉妬ではなくうっとり魅入ってしまっていた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

処理中です...