疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

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やっと会えました

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リリアとロイが向かったのは国家監視組織の建物周辺だった。

荒れている地区を監視する国の機関だが、監視するのみで介入はしてくれない。

国家の重篤な反逆が認められればその対象は捉えられ、裁判ののち処刑となっている。

バスク地区はこれまで反逆罪スレスレのことをやらかした輩が紛れるのにちょうど適した環境なのだ。


警備を担当するのはもっぱら末端の職員だ。

イチャモンをつけてくる輩が多いので皆やりたがらない。
先ほども警備に難癖をつけて憂さ晴らしをしている輩がいた。

「ねえ、ロイ。あなたは目立つからここで待ってて。私が捕まりそうになったら助けてね。」

「え?おい。何するんだ?」

「まあ、見てて。」


リリアが駆け出すと、警備の大柄な男のそばに近づいた。
大柄な男は黒髪で、三白眼。口はへの字になっており明らかにフランクに話しかけるような形ではない。
しかも業務中だ。下手に話しかけるとどうなるか分からない。

ロイは止めようと思ったが、リリアは背中の後ろでピースサインをしている。
まだ動くなということだろう。


「ねえ、おじさん。勤務中悪いんだけど僕そこの店で店子してんだ!これチラシ!
よかったら持っててよ。捨てるにしても一回は確認してよね。」と紙を差し出した。

「いらない。邪魔だからどけ。通報するぞ。」目も合わせず冷たい声であしらわれる。

「まあ、そう言わず!いい店だからさ!」無理やり男の胸ポケットに紙をねじ込む。

「おい!やめろ!触るなガキ!」

「気に入らなかったら破って捨てて!まあ、見るだけ見てよ!絶対だよ!」

リリアは手を伸ばして捕まる前にすぐ駆け出す。


「ったくなんだあのガキ。変なもの渡しやがって。」
ちらりと紙に書いている文字が目に入った。

『ジル氏へ妻セリさんの件で伝えたいことがあります。勤務後修道院前に来てください。』

と書いてあった。

「せ、セリだと?あのガキ何者だ?」周囲を見渡しても誰もいなくなっている。
紙は他の者に見つからないよう、その場で細かく破って捨てた。






「おい、リリア、あんまり無鉄砲なことをするな。捕まっても文句言えない行動だぞあれは。」

「フフフフ。女性なら不審がられたでしょうね。少年なら少しは警戒心を解いてくれると思ったの。
私名演技だったでしょ?と言いながらやっぱり怖かったわ。ロイが見守ってくれたから何とかできたの。
心強かったわありがとう。」

確かにリリアは笑っているが顔色が悪い。かなり緊張していたんだろう。
困った奴だ。しかし、あの男がリリアが探していた奴か?
普通の男じゃないか。何なんだ?





その日の晩修道院に大柄黒髪の男が来た。

もちろんロイも修道院前でリリアと一緒に待っていた。

「ロイ、いいのよもうお屋敷に帰って。あなたに悪いわ。」

「いいんだ。気になるんだよ。リリアの待ち人がどんな奴か。
リリアにふさわしい奴か俺も見ておく資格はある。」

「???待ち人?何か勘違いしていない?」ひそひそ話している間に男が近づいた。

「お前が今日の少年か。紙は見て破棄した。セリの話とはなんだ?何かの罠か?ん?お前女だな?」

「おっさんさー、さっきから失礼じゃないか?疑ってかかって質問攻めにしてまず、
リリアが何であんな事したのか聞くのが筋じゃねえの?」

「ロイ、ありがとう。でも、この方の態度今までのあなたの態度と大差はないわ。
ごめんなさい。今言う話じゃないかもしれないけど。」

「うっ。そう言われると、そうかも…。まあ、でも俺の言っていることは正しいぞリリア。」

「君はリリアというのか?」

「はい。私は隣領地から参りました。リリア・アルバと申します。
あなたのパートナーセリさんからご教授していただきました。」身なりは少年のリリアが上品に礼をした。

「リリア・アルバってあのアルバ家のどうしようもない令嬢だったはずだ。
君がそうなのか?信じられない。」

「リリアは今貴族の身だからな。そこんところ分かっている?」ロイが口を挟む。

「ああ、申し訳ありませんでした。リリア様。我妻セリの事で何か教えていただけるとの事ですが…。」

「あなたも身分で言えば私より高いでしょう?カイを相手にしている時そんな礼儀無理強いしていないじゃない。
もう。ジルさん、普通に話してください。この地区ではメイドのジーナで通しています。
貴族ではありませんからもっと気楽に話してください。」

「はい、ああ、すまない。社交的でないのと礼儀作法や勉学がなかなか身に付かないタチでな。
セリに何とか仕込まれて国家職員になったのだが全く出世できずこんな所で警備隊しか仕事をもらえないんだ。
せっかくまともな仕事につけたってのにセリには苦労をかけているんだ。魔力には自信があるんだがな。」

「まあ、人には向き不向きがありますから。
そのセリ先生ですが、そろそろお子様が産まれる頃です。産まれたかもしれません。」

「は?子供?誰の子供だ!!」

「あなたのお子さんですよ!」

流石のリリアも口調が荒くなる。
セリ先生の苦労を間近で見ていたから、なかなか会話が繋がらないセリ先生の夫ジルにイライラしていた。

(このジルさんは悪い人ではなさそうだけど、どこか頼りないわ。
セリ先生みたいなしっかりした聡明な女性がパートナーでないと
人生の方向性を迷ってしまうかもしれない人かもしれない。
セリ先生ならそのくらいの人の方が良いのかもしれないけど、やっぱり結婚って大変ね…。)

珍しくリリアが何とも言えない困った表情でジルを見ていた。

「なあ、このジルって人がリリアの探していた奴だろ?話は終わりか?」

「はっ!いいえ!ここから本題です!セリ先生は今身動きが取れません。
そばにリタさんがついてくれています。
リタさんの息子さんが今年から国家職員配属になったので官舎に身を隠しています。
ジルさんのことを心配されていました。頃合いを見て会いに行っていただきたいのですが…。」

「リタさんなら知っている。あのひとなら安心だ。
しかし、息子は三つ子だっただろう?何番目が官舎に入れるくらいのエリートのなったんだ?」

「全員と聞いています。」

「全員!?マジかよ…。セリが勉強を教えたって聞いてたけど、
平民出身で若くして官舎に入れるってことは魔力も学力もすごいんだろうな…。
俺はセリに教えてもらって何とか末端国家職員だ。」


「あなたのことはどうでもいいです。セリ先生が心配なのです。
あなたはセリ先生が心配ではないのですか!」


(リ、リリアが、いつも余裕なリリアがこえー。怒ったらこんなにきつく対応するのか。
普段温厚なのにな。まあ、リリアも人間で完璧じゃないんだなんだな。)
ロイは隣でちょっと笑てしまう。


「す、すみません!心配です!一刻も早く会いに行きたいです!」

「まったく…。やっと本題が伝わったわ。」

「し、しかし。あの官舎は王都近くの地区にあって
俺みたいな末端下っ端の職員はセキュリーが重厚で入ることが出来ないんだ。
くそっ、どうすればいいんだ。」

「私のお父様から口を聞いてもらうことも可能ですが…国家機関が相手なので時間がかかるかもしれません。
兄が介入しなければいいのですが。」

「ゴ、ゴホン!」ロイがわざとらしく咳をする。

「ワイズ王国の国家機関だろ?厄介払いされた俺にも一応ツテはある。
っていうか俺も王都に用事があるんだ。そのジルっておじさんを官舎に入れてやるよ。」

「まあ!ロイ素敵だわ!持つべきものはコネクションね!ぜひお願いしたいわ!」

「あ、ああ。まあ、いいけどよ。貸は作っておくからな!」

「何でも言ってちょうだい!あ。でもあなたが欲しいもの私用意できるかしら?」

「物じゃねえよ。まあ、何がいいか考えとく。そうだな、ジルのおっさんを俺の護衛としてつけるか。
魔力はあるんだろ?今の俺は魔力封じがされてるから道中頼むぜ。
まあ、あんた以外もつける予定だがな。それでいいか?」

「ああ!何でもいい!セリに合わせてほしい。頼む!いや、どうぞよろしくお願いいたしますロイ様!」

「何か白々しいが、じゃあ手続きしておく。
リリア、今日言い忘れていたが明日この地区の当主貴族に会うアポイントをとってやった。
それが済んだら俺はすぐ王都にこのおっさんを連れて行くよ。」

「本当に重ね重ねありがとう。あなたがお友達で本当に良かった。」

「と、友達か。まあそうだよな。眼中には入ったか。ああ、何でもない。じゃあ話は以上だ!じゃあなおっさん!」

「ロイ、何だか忙しないわね。ではジルさん失礼します。」

「ああ、ありがとうリリアさん。」

「いいえ。さようなら。」リリアはにっこり笑った。


修道院の門直前までロイがリリアを送る。

「おい、リリアあんまり男の前でニコニコしない方がいいぞ。
あいつは家庭もちだったが、それでも危なっかしいだろ?」

「え?何のこと?私みたいな人間が笑ったところで何もないわよ。
今は少年よ。変なこと言うのねロイは。」朗らかにリリアが笑う。


「男の格好してたってお前が割といい女ってよく見ればバレるんだよ。自覚しろよ!」
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