58 / 134
王都にて 3
しおりを挟む途中、護衛の一人にある店に寄って欲しいと頼まれた。
何かの罠かと思ったが、どうもその様な感じではない。
理由はしっかり話さなかったが、今の自分にはコントロールはできないが膨大な魔力もある。
「分かったよ。行こうじゃないか。」と店に入った。
店の中には誰も客がいない。奥に通されると、知らない男がソファに座って待っていた。
見たことのない顔だが…。
「街を楽しんでいたところ、悪いな。
お前とどうしても話したかったがのだが、城の中では妙に勘繰る輩が多くてな。」
声を聞くと分かった。俺の母親を見殺しにした父親、つまり皇帝陛下だ。
「何でこんな所にいるんだよ。顔を魔法で変えやがって。」
「ロイーズ様!そのようなお言葉遣いはおやめなさい!」
隣に構えていた執事が割り入った。
「よい。今は陛下ではない。中堅貴族の爺さんとなっている。いいんだよ。」
「は、はあ。そうでございますか。」
「そうやって、王族であることを隠して母さんに近づいて…。
用が済んだら見向きもしなくなって、都合が悪くなったら見殺しにしたんだろ。
いいご身分だな王様は。」ロイが睨みつけながら吐き出す。
執事が顔を真っ赤にしている。
「そうだ。わたしは卑怯な奴だ。それを否定する気はない。」
「へ、陛下!ロイーズ様!違います!
あなたのお母上様は確かにこのような街で陛下とお会いになりました。
あなたを産んで陛下はあなたの事も大切になさっていました。
…しかし宮中はあなた方親子をよく思わない連中が多く、
陛下があなたの母上様と近づけば近づくほど過激な嫌がらせをしたので、陛下はわざと距離を取ったのです!」
「あっそ。だから?」
「結果的にそれがよくなかった。
お前の母親に対して、宮中での不安を誰もケアすることができなかった。
そこにわたしがいない隙を見てある組織に付け入れられたのだ。
気がついた時はもう、手遅れだった。
何とかして彼女を救おうとしたが叶わなかった…。
そうだ、わたしはお前の母より国の安全を取った大馬鹿者だ。」
「陛下!あの時は奥方をあのように扱わなければこの国が滅びるほどの状況でした。
あなた一人に責任があるわけではありません。」
「何の茶番を見せられてるんだよ。今さらあんたが謝ったって母さんは生き返らない。
もういいよ。その組織の連中に俺の存在をダシに操られてたんだろ。それくらい馬鹿な俺にだって分かってるよ。」
「ロイーズ…。本当にすまなかった。
お前の母親は子供を思う素晴らしい女性だった。儚くて美しかった。
王族の中でやっていけるほど器用な人でないともっと早く判断して、遠方で保護すればよかった。
わたしの慢心が招いたのだ。本当にすまなかった…。」
「もういい。俺今まであんたが憎かった。今も憎いには変わりないけど、
でも最近になって立場っていうのが分かった。
貴族の立場、大人の立場、強者の立場、弱者の立場。あんたの立場も大変なんだってのも分かった…全部はわかんねーけどな。
でも、俺は大切な人を絶対守る。決めたんだ。
…あんたを頼りにする気はないけど、ただ、見守っていて欲しいんだ。」
「お前の視野が広がったんだな。」
「あいつならそう言ったと思う。相手の立場を見て考えるんだ。」
「あいつとは、シスター見習いのジーナという平民か?」
「あ、ああ。そうだ。」
(リリアだけどな。レディダークの情報操作は完璧だな。国王を欺くなんて。)
「平民の女の子か…。わたしが言うのもおかしいが、身分のことを考えると心配だな。」
「あんたがそれ言うのかよ。
なあ、今まで中途半端な立ち位置にいさせてもらっているのは分かっている。
王族の関係者っていう平民でもない王族でもない、いいとこ取りってやつだよな。
本当は王族なんて興味ないし、むしろ憎くてたまらない奴らだ。でも、王族の肩書きがまだ必要なんだ。
俺は、あの地区が上手くいけば、平民になる覚悟なんだ。」
「王位は必要ないと言うことか?」
「いらない。強がりじゃないぜ。
俺自身の力で守って生きるんだあの地を。
だから、何度も言うけどあと少しこの立ち位置を利用させてください、国王陛下。」
ロイは深々と国王陛下に頭を下げた。
「まあ、いい。ある意味愛するもののために平民になる選択肢があるお前が羨ましいよ。」
少し寂しそうな表情でロイを見る。
「そうだな。まあ、そう言うことだから貴族連中に近づかれると色々面倒だから、そこんところ釘刺しておいてよ、国王陛下。」ロイがニヤリと笑う。
「はははは。分かった。お前は王族だが王位は今後譲る気のない人物と説明しよう。」
「これでもかって言うくらい、皆の前でそっけなくしてくれよ。
俺に媚を売るのは無駄骨ってわかってもらいたいからな。」
「分かっておる。では、あまり王宮を出ると隣の執事に大目玉にされるからな。
もうここを去る。他、お前の希望はないか?」
「あ、あの、これから魔法を使わなくても作れるものを考えたいんだ。
薬とか特産物とか…。でもそれを作る技術とか知識がないと困るんだ。
もしかしたらその教科書とか職人を王都から寄越して欲しいっていうかもしれない。
子供たちが生きていくための仕事が欲しいんだ。それを教えてあげたいから。」
「知識、技術の伝達目的だな。考えておこう。人のために動くのは良いことだ。
それが王族関係者の立ち位置が必要な理由か?」
「そうだ。それが十分済んだら、王族の位置はもういらない。それまでだ。」
「分かった。くれぐれも健康でな。人を守るための魔法を身につけるのだぞ。ではもう行く。達者でな。」
「ああ、わざわざありがとうございました。」ロイは再度深々と礼をした。
119
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の生産ライフ
星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。
女神『はい、あなた、転生ね』
雪『へっ?』
これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。
雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』
無事に完結しました!
続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。
よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる