疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

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見逃せない

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ロイは悶々と考え込みながら歩く。リリアもついていくが少しヒールの高い靴なので小走りになる。
(ロイ、怒っているのかしら。今日はダンさんやロイを不機嫌にすることが多い日ね。)

「ロイ?何か怒っているの?」

「俺が?別に怒ってない。」むすっとした顔で答える。

「ふーん。なら良いけど…。」リリアとロイの流れる空気が少し重くなっている。

(別にリリアは何も悪くない。ラジオも悪くない。
俺がリリアにカッコつけたくて、でも出来なくて勝手に不機嫌になっているだけだ。
これじゃ母さんがいた時、周りの大人に腹を立ててただけで、自分で何もしてこなかったガキの頃と変わんねえじゃんか。)

ロイは一人反省していた。


「ごめん、リリア。何でもない。今日はせっかく付き合ってもらっているし楽しまないとな!
あそこで何か催ししているぞ!行ってみよう!」

ロイの気分が切り替わったようでリリアも安心した。






二人で出店を見て回ったが、一つ気になる店があった。

子供むけのシンプルな的いれゲームの店だったが、参加費が高い。

出店のほとんどはラジオが誘致していたので参加費や商品の料金などはほとんどがラジオが負担していたはずだ。
子供たちや普段生活が苦しい平民のために楽しんでほしい気持ちが強いからだ。

しかし、今回の店は参加費を取るだけでなく、的入れの的が明らかに子供では入れられないくらい的が小さく複雑化している。
商品は豪華なものを並べているが、今の時間までに多分誰も商品を手に入れていないだろう。
子供たちに店の店員が言葉巧みに参加を促す。

『この的一つでも入れたら、豪華なおもちゃが手に入るよ!参加費なんて安いもんだ!さあ坊ちゃん挑戦していきなよ。お母さんも喜ぶぞ!』など子供の良心に付け入るような誘い方だ。


流石にリリアもロイも、店の怪しい雰囲気と汚いやり方が気になり偵察に入った。


「やあ。素敵な商品が多いなこの店は。でもちょっと参加費が高いんじゃないか?」ロイが話す。

「やあ、イケメンのお兄さん。可愛い彼女連れてるね。
まあ他の店はただ同然で挑戦できるけどね、この店は商品がピカイチだからね。仕方がないんだよ!お兄さん、彼女の前でいいとこ見せたいんじゃないかい!大人はこの的に6球中、3つ球を入れたら商品ゲットだ!商品は可愛い彼女にプレゼントできるぜ!」

「まあ、ロイ!素敵ね!じゃあ、私あのぬいぐるみが欲しいわ!」

リリアはラジオの関係者と怪しまれないようにその場の流れに乗る。
店員とロイが話している間に顔見知りの子供にラジオを呼ぶよう伝えておいた。

「さあ、彼氏のお兄さん!あんたが魔力持ちで操作されたら困るから、この特殊なボールを使ってもらうよ!」
男が差し出したのは特殊な玉だった。魔力に影響されない加工がしているらしい。

(リタさんがデリスを縛り上げた縄に魔力をねじ込んだって言ってたけど、それに近いものかしら?)

「この球をあの的に入れたら良いんだな?」

「そうそう!さあ!やってみてくれ!良いところ見せてくださいよ!」調子良く店員がロイを煽る。

ロイが振りかぶって球を投げる。

しかし、あまりにも的が小さすぎて入らない。

「これ、的が小さすぎるぞ。子供なんかもっと難しいぞ。」ロイが不満を言うが

「お兄さん、弱音はいけねえ。彼女が見守ってるぜ。さあ、残り5つ早く投げた投げた!」

やっつけ仕事のようにロイにけしかける。
ロイやリリアのような目立つ男女に文句を言われるのを大勢に見られたくないのだろう。

ロイは結局、一つも玉を入れることが出来なかった。

「なんであんな業者が入り込んでるんだ?
子供が修道院で薬草の手伝いでもらえている手間賃がこんなことに消費されるのはおかしい。」とロイは納得できずにいる。



「ねえ、おじさん。私もそれやってみたいんだけど。」

隣で見ていたリリアが声を上げた。わざと大きい声で話すので周囲も注目する。

「なんだ、お嬢さんか。彼氏にできなかったんだからあんたじゃ無理だろ。女が男よりでしゃばって良いことないぜ!」

年頃の娘のリリアが挑戦しようとしたので、明らかに店員がリリアに横柄な態度をとる。

(修道院の中だとあまり気にならなかったけど、この世界の男尊女卑は想像以上ね。)

「えー!良いじゃない!お金は払うから。彼氏がやってるの見たら私もやって見たくなったの。ちょっとだけ。ねえ、ロイ、良いわよね?」リリアはロイを見る。

「え、あ、ああ。やりたいようにすればいい。俺のことは気にするな。」
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