疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

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修道院につき、3人はシスターやラジオ達におじいさまから教えてもらったことを伝えた。

リリアの周辺の人間など気になることはあるが、まずはマーガレットのために薬草を栽培することが第一優先だった。

薬草農園に行き、成長が止まってしまった薬草を見る。

ロイも一緒にいたかったが、精霊が余計なことを考えないために席を自ら外してくれた。

「あまり一人で抱え込むなよ。俺もいるからな。」

「ありがとう。ロイ。いつも支えてくれることに感謝しているわ。また相談させてね。」

いつもロイが隣で見守ってくれていることを再認識して安心し、心が落ち着いた。

その様子を精霊がじっと見ていた。

ロイがそばを離れた後、リリアは精霊に話しかける。

「精霊さん、この薬草はあなたが協力してくれないとこれ以上育たないの。お願いします。あなたの力を貸して下さい。」リリアは精霊に誠心誠意依頼した。

が、精霊はじろっとリリアを見ただけですぐそっぽを向いてしまう。
どう見ても協力してくれるような態度ではない。

(どうすればいいの…。全然こちらの思いが伝わらない…。何でかしら…。アルバ家にいた時の振る舞いが酷すぎて嫌われちゃったのかしら…。)
精霊の前で打ちひしがれるリリア。

周囲の人間は精霊が見えない者がほとんどだった。時折子供中に「不思議な光がある。」といった感覚がわかる子もいたがはっきりとは見えていない。
なので、リリアが落ち込んでいるのをみんな首を傾げて見ている。

そこに、ダンが登場した。
「お嬢ちゃん、何やってんだよ。相手は子供みたいなもんだろ。そんなかしこまって頼んだら、何かややこしいことされるんじゃねえかってチビの精霊も心配になるだろ。」

「え?そうなのかしら?私そんなに怖い顔していたかしら?」リリアは自分の顔を両手で触る。

「お嬢ちゃんはそこでちょっと待ってろ。チビ!来い。」ダンは農園の奥にまで移動する。
精霊もダンについて行った。


人気がいないダン個人の花壇畑で止まり、振り返る。

「お前、喋んないから名前はチビでいいか?」

精霊は頷く。

「チビ、ここに俺が育てた花がある。お前花は好きか?」

精霊がダンの花壇を覗くと驚いた表情になり飛びながら花をひとつひとつあいさつするように触れ合っている。

「なあ、チビ。この花から好きなもんやるよ。何ならお前が欲しい花育てることもできる。だからよ、あの薬草にちょっと力出してくれねえか?」

精霊は少し考えている。ダンが育てた花を頬に当てて目をつぶり目を開けた時にうなずいた。

「やってくれるのか?」

うなずきながら精霊が飛んでリリアのいる薬草農園に戻る。
ダンもついて行く。



心配しているリリアの元に精霊が戻り、薬草の前に精霊が膝をついてかがんだ。
薬草を両手で優しく包み込むように念じると、優しく光り薬草がゆっくりと成長し始めた。

「う、うそ。精霊が薬草を…。なんて綺麗な光景なの…。薬草が育っている…。」

リリアはその状況を見てあまりに神秘的な情景で自然に涙が出ていた。

「精霊さん、ありがとう。本当にありがとう。これでマーガレットさんが助かる。」

薬草と精霊の前でリリアは膝から崩れ泣きながら礼を言っていた。

精霊はリリアを見て少し困惑した表情で頭をポリポリかいている。


ダンは少し距離をあけて見ており、安心したように立っていた。


ラジオに薬草が育ったと報告した。
大急ぎでカズと調合の準備をしてもらう。

リリアは顔を引き締めてシスタージャスミンにマーガレットさんと面会するよう依頼した。
もっと抵抗されると思っていたが、ロイが事前に普段から私の思いを何度もシスタージャスミンに伝えてくれていたようで、スムーズに聞き入れてくれた。

「あなたの提案を素直に聞き入れるとは思わないけど、やれるだけやって見て下さい。お願いしますね。リリア・アルバ。」

シスタージャスミンも心労が祟っているのだろう。痩せていた体が更に痩せ細っている。

マーガレットの寝ている部屋に通してもらう。
相変わらずあざだらけの容姿だ。

先日は魔力を使っていたが、今は体力もあざに削られうつろな表情天井を見ている。

「めんどくさいのが来たね。」力のない小さな声で悪態をつく。

「マーガレットさん。お話ししていた薬草がやっと出来ました。手短に言います。その薬草を飲んで体からあざを抜きましょう。体力が回復したらあなたの器に私の魔力を注がせて下さい。」

「バカ言ってんじゃないよ。あたしのこの真っ黒な体は勲章なんだよ。このまま魔力に飲み込まれず静かに死ねるよう気持ちを整えてるんだ。あんた邪魔だよ。」

やはり、マーガレットはこのまま静かな死を望んでいた。



「バカはあなたです。一人でカッコつけないで下さい。あなたのプライドのせいで死んだら残されたこの町の人たちが苦労するのですよ。」リリアは低い声でマーガレットを咎める。

「うるさいね。誰が他人の魔力なんか入れるか。あのラジオって子も一緒だろ。気持ち悪いんだよ。それに一生の貸しじゃないか。」
虚な目をしているが何とか搾り出して話す。

「昨晩、深緑の谷へ行ってきました。私の祖父一人で精霊達と生活していました。
大きな精霊の力は存在しない方がいい、私たちの血筋も力も不必要だと。
私も同感です。大きな力は大きな欲に変わります。
でも、あなたの場合は違う。
あなたの情報収集、操作技術は長年、命を削って発達させてきたものでしょう?
その力にどれだけの人が助けられたのでしょう。ここで何とか暮らしてこれた人たちを今見捨てるのですか?あなたのそのプライドの為に犠牲が出るのですよ?」

「滅茶苦茶だね。自分の無能さを棚に上げちゃってさ。やな女。そういうのを他力本願って言うんだよ。馬鹿。」

「そうです。滅茶苦茶です。他力本願です。無能です。馬鹿です。だからあなたがいないとダメなんです。どうか、どうかマーガレットさん私たちを見捨てないでください。」

リリアは声を震わせマーガレットにすがり付き泣いて頼んだ。

「あんたが触れると黒い魔力が変になるんだよ。どきな。ここまで育てた魔力だ。勿体無い。この体で上手く死ぬんだよ。あたしは。」

「マーガレット。リリア・アルバの言っていることは間違っていないわ。お願い。私たちを見捨てないで。ここにはあなたが絶対必要なの。生きる道があるのならそれを無視しないで。お願い、マーガレット。私の大切な姉さん。」
気丈なシスタージャスミンがボロボロと涙をこぼし泣いている。

その時、様子を見にきた精霊がマーガレットの視野に入った。

ちょうどマーガレットが見つめていた天井の真ん中で飛んでいる。

精霊はマーガレットを見て驚いた表情をしているが、その後マーガレットを見ながら泣き出してしまった。

「また邪魔なのが来た。なんであたしみたいな真っ黒に精霊が見えるんだろうね。怖いならどっかに行きな。」

精霊がマーガレットの側から離れない。どんどん近づき、マーガレットの手を泣きながら握り始めた。

「マーガレットさん、精霊があなたを認めています。あなたのあざを消したがっているのでしょう。あざの下にある、あなたの美しい中身を見抜いているんだわ。賢い子。」

「姉さん。もう観念しなさい。精霊にここまでしてもらうなんて、生きるしかないわ。」
シスタージャスミンが涙を拭いながら少し笑った。

「…。あー、もういいよ。分かった。これ以上ややこしいのが来たらたまんないからね。部屋の外にいるんだろ野暮な男どもが。」

ダンとロイとラジオとラジオの執事が部屋の外で待機していた。

息を潜めていたが、バレバレだったようだ。
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