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試合終了後
しおりを挟むロイがしどろもどろになり、リリアが顔を赤くしていると、後ろから声がした。
「さあさあー!皆さんー!今日は飛び入りでご苦労様でしたー!ラジオ様の計らいで酒場を貸切にしますので今日は楽しんでくださいー!案内しますー!」
ラジオの執事が助け舟を出してくれた。皆ただ酒が飲めると知りそれどころじゃなくなった。
早々に店の場所を教えてもらうため場を離れる。
「やったぜー!ラジオ様ー!流石だ!気前がいいぜ!」
「おい!早く行こうぜ!酒が無くなっちまったら困るからな!」
「おう!早い者勝ちだ!行くぞ!」
「おい!待てよ!」
と男たちはあっという間にいなくなった。
どさくさに紛れて執事もいなくなろうとしていたが、ラジオが引き止める。
「ねえ、何であんな危険な球を投げたんだい?君はいつも冷静な執事だ。ゲームと言えど、貴族令嬢に何を考えている?」
「あの方、リリア様の素質を見極めたかったのです。魔法の能力もですが、心構えの方が重要ですから。何かあった時逃げ出すお方なのか、瞬時に最善の策を練り対応する方なのかを。
策に関しては、やや強引でしたね。
私ならもっと手前で結界を張って、球の勢いを最小限に抑えます。あの方は全身で受け止めるという荒技でした。かなり危険な方法でした。
しかし、それは実践を積むのみです。
あの方の人間性は十分にわかりました。ラジオ様を絶対裏切らないお方と分かったので合格ですー。」
とニコニコ笑っている。
「真剣な時は話し方が変わるんだな。主人の交友関係のためにあんなことをしたのか?」
「その通りですー。私にとってはあなたの身の安全が第一優先なのですー。」
「…。もう分かった。ただ、これ以上の無茶はしないでくれ。リリアのためにも君のためにも。」
「承知しましたーー。」と深々お辞儀をする。
ラジオはため息をつき、苦笑いをした。
「ロイ、リリア、お疲れ様。君たちもこの後お店においで。見せたいものもあるんだ。」
「あ、ああ。後で行くよ。」
「は、はい。ぜひ。」ロイとリリアは赤い顔で返答した。
ロイとリリアが遅れて店に向かう時、精霊も飛んできたので一緒に行動を共にする。
リリアは恥ずかしいのでロイから離れようとするが、精霊がぐいぐいとリリアをロイに近づけようと押してくる。
ロイもその様子はぼんやり見えていた。
「何か、この精霊あった時よりリリアと距離が近くなったんじゃないか?」
「そうかしら?普段はダンさんと一緒にいるんだけど、たまにこうやってロイの方に行くよう誘導するの。何でかしら?」
「へー。精霊が応援してくるならありがたいな。」ぼそっとロイが呟く。
「え?何か言った?」
「いや、何でもない。そうだ!リリア、マイズボールすごかったな。すごくカッコ良かったぞ。足も速いし、あのバッティングはトップを狙えるんじゃないか?」
「あ、ありがとう。私ったらまた出しゃばっちゃった。ダメね。」
「出しゃばるって何だ?俺はみんながリリアに認められたみたいですごく嬉しかった。もっと格好良いリリアを見たかったけどな。何て言うか、どんな時もリリアの動きは堂々としててすごく綺麗なんだ。ずっと見ていたくなる。」
「あ、ありがとう。私、男の子からこんなに褒められたことないから、どう反応して良いか分からなけど…。そう言ってもらえると、すごく嬉しい!今日、実はすっっごく楽しかった!やっぱり見るだけじゃなくて実際やるってすっごく面白いわね!」
今度はロイだけに全開の笑顔を見せるリリア。
ロイが健康的なリリアの笑顔を見て満たされた気持ちになっていた。
精霊も隣でニコニコしている。
店に着くと、男衆中心に盛り上がっていた。
「お前、あの魔力仕事でもっと出せねえのかよ!」
「いやー何で試合ってあんな真剣になっちまうんだろうな?」など酒を片手に皆笑顔だ。
リリアが初めてきた時はもっと不健康な飲み方の男が多かったが、今は別の様子を見せていた。
「みなさんー!今日はお疲れ様でしたー。お酒も入り、楽しそうですねー。今からこのお店の主人たちに音楽を演奏してもらいますー。知っている方はどうぞ踊ってくださいー。」
ラジオの執事がそう言うと、店の奥からギターのような形の楽器を持った店のマスターが出てきた。
後ろにも何人か他の楽器を持った者たちが続く。
少し雰囲気が似ている人が多いのでマスターの親族のようだ。合図をお互い送ると演奏が始まる。
演奏が始まった。以前広場でダンスのイベントで聞いたクラシックではなく、もっとテンポの早い楽しげな民族音楽のようだった。
(何だか、ケルト音楽に近いわね。素敵な音色…。」リリアは耳を澄ます。
すると、何人かの男や店の女の子が一緒に踊り始めた。
「この音楽知っているぞ!こうやって踊るんだ!昔一緒に住んでた、ばーさんが教えてくれたんだぜ!」
「俺も知ってる!こうだろ!?懐かしいな!ずっとこの地区に住んでたやつが言ってた。昔はまだこのへんも楽しみがあったって!こうやってみんなで踊るんだ!」
踊りを知らない者たちも踊り始めた。音色を聞いて店に入ってきた者もいた。
「ここは貸切か?懐かしい音楽が聞こえてきたから覗いたんだが…。俺たちも踊っていいか?」
「どうぞー。皆さんに教えてあげてくださいねー。」
「ああ、ありがとう!どれ、踊るか!」と踊りを披露していった。
ラジオが二人に近づく。
「リリア、ロイ来てくれたんだね。この音楽、シスターやマーガレットさん姉妹のご両親がここを治めて言うときまで伝統だった音楽なんだ。資料や楽器を取り寄せてこの店のマスターにお願いしたんだ。この店は親族で長年経営していると聞いたから知っているんじゃないかと思ってね。」
「ラジオ様…。素晴らしです。伝統をお守りになったのですね。」
「そこまで大きな話じゃないよ。あの姉妹にもここに来てもらいたいなあ。」
「もうすぐです。もう少しでマーガレットさんが復活出来るはずです。きっと悪態つきながら内面で感謝されると思いますよ。お二人とも。」リリアは笑う。
「そうだといいな。フフフフ。あ、ロイ、リリアと一緒に踊りなよ。このダンスは厳しい決まりはないんだ。楽しめたらそれでいいから。」ラジオが二人にウィンクした。
「いいじゃん。踊ろうぜリリア!」ロイがリリアに手を差し出す。
「え、どうしよう。」リリアが少し躊躇していると、精霊がリリアの背中を押し出す。
その弾みでリリアはロイの方へ倒れかけ、助けるためにロイが抱き締める形になった。
「はははは。また精霊に押されたのか?強引な奴だな。さっ!踊ろう!一緒に!」
リズミカルな音楽に合わせて踊る。
手をつなぎ、軽やかなステップでお互いの息を合わせる。クラシックにはない楽しさがある。
「こんな感じかしら?変じゃない?ロイ。」
「はははは。俺も変じゃないか?合ってるか分からないけど、楽しいな。」
「そうね。あら?あそこにも可愛い踊り子がいるわ。」
店の隅で演奏している者たちの子どもらしき小さな二人も楽しそうに踊っている。
「子供も大人も気軽に楽しく踊るのって素敵ね。あの子たちすごくいい顔しているわ。」
リリアが踊りながら嬉しそうに見ている。
「リリアもすごくいい顔だ。今日やっとリリアが自然な女の子に見える。いつも何かに遠慮してるような、ためらっている感じだったから。リリアがこうなってくれたのは精霊のおかげかな?」
「え?私そう見えてた?」
リリアが驚いていると、男たちがお酒でいい具合に出来上がり、踊りながらロイやリリアに絡んでくる。
「二人見せつけてくれるねー。いいよな美男美女は絵になるねー!」
「おう!ロイ飲んでるか!?お前も魔法使えたんだな!ん?なんか変な色だったな?あれ何色だ?」
「そういえばお嬢ちゃんもジーナじゃなくて、何か違う名前で呼ばれていたような…。」
と話の的がリリアとロイになり酔っ払い相手に説明できないことばかりで面倒になってきた。
精霊がリリアの手を持ち、店の外へぐいぐいとひっぱり出ていかせようとする。
「あら、あなた気が聞くわね。もう外に出た方がいいわね。ロイ!もう行こう!みんなはもう少し楽しんでね。今日はありがとう!」とロイの手をリリアが引っ張り男たちに挨拶した。
「ああ、そうだな。ラジオ!今日はありがとう!俺たちはもう帰るな!」
「うん。二人ともありがとう。ここはどうにか誤魔化しておくよ。気をつけてレディを送り届けてくれよ。」
「当たり前だよ。」と言い店を出た。
外に出て歩きながら二人で今日を振り返る。
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