疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

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精霊の祝福の花の騒ぎを後にして二人は修道院に向かった。




「何か、色々ありすぎて、今日のことが夢なんじゃないかって思うんだけど、リリア、夢じゃないよな?」

「私も、同じこと考えていたの。夢じゃないわ。でも頭が混乱しているわ。あの花はどうなるのかしら…。執事の方も今思い出せばなかなか無茶なことされた気がするわ。」

「そうじゃなくて、俺とリリアが今日から恋人同士になったってことが夢じゃないよなって聞いてるんだ。」

「そ、それね。夢じゃない…けど、私こういったこと免疫がなくて、その、嬉しいけど恥ずかしいから、その…。」ともじもじしている。

「いいよ。そうやってドキマギしているリリア貴重だから気にするなよ。でも、手くらいは握っても良い?」

「え!?手!?え!?」リリアがあたふたしている間にロイはリリアの手を握る。

「嫌だったら言ってくれたら良いから。」と歩き出す。

「い、嫌じゃないわよ。でも、緊張して汗が…。」

「ははは。前広場で踊った時の俺と同じこと考えてる。」

「え?そうだったの?全然分からなかった。」

「その後、ラジオとの踊り見せられて結構焦ったんだぜ。」

「え?そうだったの?」

「リリアって鈍感だよな。まあ、これからは堂々とリリアを独り占めできるから嬉しすぎる。」

「え?そうなの?」

「そうなんだよ。」ロイが照れ臭そうに眩しい笑顔を見せていた。





修道院に着くと、近くに住んでいるダンさんが慌てた様子で走っていた。

ダンさんに見られると恥ずかしいのでリリアが手を離す。

「ダンのジジイに見られても良いのに。」とロイは残念がっていた。

「お嬢ちゃん、このチビが俺んち来て呼んでるんだ。何かあったんだな。なんでこのチビ俺の家知ってるんだ?」
と言いながら精霊に背中をグイグイ押されてそれ以上話が出来なかった。



ダンさんがあの花を見てくれたら心強い。

「あの精霊、リリアの精霊だよな?ダンのジジイめちゃくちゃ気に入られている気がする。」

「まあ、私の母親の精霊だったみたいね。私は主人でもないし、精霊は気まぐれらしいから。」

「そんなものか。ああ、修道院に着いた。もっとリリアといたかったけど仕方がないか。」

「ロイ、考えたんだけど、仕事中はその、恋人同士っているのは良くないと思うの。仕事とプライベートは分けないといけないわ。あなたに冷たい態度をとってしまうかもしれないけど、大丈夫?」

「もちろんだ。でも、たまには今日みたいにゆっくりデートさせてくれるよな?やっぱりリリアと二人でいたいからな。」

「も、もちろん。私でよければ。」

「何だよそれ。まあ、いいや。名残惜しくなるからもう終わりだ。じゃあな、リリアおやすみ。」

「おやすみなさい。ロイ。また明日。」二人は手を振って別れた。





リリアは部屋に帰ると、ロイとのことがまだ現実でないようなふわふわした感覚だった。

恥ずかしいような、でもすごく満たされたような、怖いようでワクワクしてしまう不思議な感覚だ。でも、嫌じゃない。むしろリリアになってこんなに幸せで良いんだろうかと申し訳なく思うほど幸せだ。

「もう、過去の皐月のことを思い出して色々比較するのはやめよう。今を、この幸せな今を生きよう。リリアとして。」
今まで何か引っかかっていたものがストンと落ちたように自分の心が穏やかになった。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日の朝、修道院に薬草事業の主要メンバーが集まった。シスタージャスミンの事務室は狭いので、会議室を修道院に増設したので利用している。

「みんな、おはよう。昨日はマイズボールや音楽の披露など色々と収穫がのある日だったよ。今日はその一つ素晴らしい花がこの地区に咲いてくれた。でも、この花の処遇は慎重にならなければならない。」ラジオが神妙な顔つきで話す。



ダンの横に居た精霊は自分が悪いことをしてしまったと思い、しょぼくれている。

「おい、チビ。お前は何も悪くない。あのお嬢ちゃんの為に出した花だろ?あの花見ることは最強の運勢と言われてるんだ。お前は良いことをしたんだ、そんな顔すんな。」

ダンが精霊に慰めるようダンなりに優しく説明している。



リリアとロイの心が通じ合った夜に精霊が祝福してくれた光る花は、ラジオやダンさんのおかげで一晩で修道院に移植した。

幻の花と言われる代物で、その花を見るものは必ず幸せになれると言われている。非常に希少な花なので、手に入れることが難しい。
この花をめぐって様々な問題が起こるのは容易に想像できる。


「薬草事業は僕の実家は無関心だが、この花のことを知れば強引にこの地区ごと支配しに来るはずだ。
まあ、ビッツ家の領地だからそれを拒否することは叶わない。恥ずかしいけれど、あの家で僕の権限は皆無だから僕たちは部外者扱いにされるのは確実だ。今すぐ手を打てないし、この花のことは極秘にしなくてはならないね。」
ラジオはため息をつきながら提案する。

「あの晩何人かの市民があの花を見ていた。口止めは難しいな。噂程度にすぐ話は広がりそうだ。俺、何とかならないか王都に行って掛け合ってくる。」ロイも最悪の事態に備えて出来ることをしようと必死になる。



皆が色々と思案しているところに、コツンコツンと何かの音が近づいて行きた。

音の鳴る方を見ると、会議室の扉が開き、二人のシルエットが見えた。

「あんた達みたいな坊ちゃん達じゃ無理だ。時間がかかり過ぎるよ。この辺のゴロツキを操作できれば時間稼ぎができるんだろ?」声の主のマーガレットが杖をついて扉の前に立っていた。

横でシスタージャスミンも付き添っている。

マーガレットの身体中のあざは消えており、顔も白くなっている。やはり、どことなくシスタージャスミンに似ていた。

「マーガレットさん、もう起き上がれるの?」

「おい、化け物ババア、無理して伸びた寿命勝手に短くするんじゃねえぞ。」

「レディダークじゃなくなった。真っ白なおばさんじゃん。」リリアの後にダンやロイが言いたいことを言っている。

「うるさい奴らだ。くっくっくっく。あの薬草そのへんの治療魔法より効いたよ。おかげであたしの黒い勲章が全部消えちまったよ。
さあ、もう一人で歩けるんだ。アルバ家のお嬢ちゃん、あんたの魔力が注げる状態だよ。一気にやりな。ちまちま注ぐんじゃないよ。あたしの気が変わったらまた黒いものを入れるからね。」


突然の提案に、
「そ、そんな。危険過ぎます。少しずつ様子を見て魔力を渡そうとしていたんですよ。」

「そんなやり方嫌だね。あたしはせっかちなんだ。あのゴロツキどもはね、あたしと契約する時にちょこっと呪いをかけてんだ。なんかあった時操作できるようにね。あたしに魔力がないと操作できないんだよ。さあ、早く魔力を注ぎな!」

「呪いって、俺にもかかってんのか…?」ダンがぼそっとつぶやく。精霊も心配そうにダンを見上げる。

「小さい男だね。そんな呪いで死にはしないよ。あんたにはかけてない。あたしが狂った時用のあんただからね。」

「なら良いけどよ…。何でもありの極悪人だな。」ダンはやっぱりマーガレットは只者ではないと思った。

「アルバ家のお嬢ちゃん、優先順位はあたしの体じゃない。この地区の安全だろ!なまっちょろいこと考えてんじゃないよ!」マーガレットに喝にリリアも腹を括る。


しばらくリリアは考え込んだが、ぐっと顔を上げてマーガレットを見据えた。

「…。分かりました。私も覚悟を決めました。やりましょう。ラジオ様、準備をお願いしてもよろしいですか?」

「あ、ああ。分かった。この日のために部屋を整えていたんだ。そこに移動しよう。」

「人の魔力を移すってのは気が散るとダメだ。あたしとこのお嬢ちゃんだけでいい。」
マーガレットは当人同士だけの行為を望んだ

「私は同席します。マーガレットが嫌がってもいます。姉にもしものことがあれば私が止めに入ります。」
シスタージャスミンが有無を言わせない態度で割って入る。

「なら、俺も同席する。リリアに何かあれば俺が守る。俺も魔力持ちだ。いないよりマシだろ。」
「部外者は面倒だから来るんじゃないよ。」マーガレットは心底嫌そうな顔で苦言する。

「シスターもロイも居ておけ。ババア、それ位は許してやれ。何か不都合が起こったら俺が入ってこいつらつまみ出してやるからよ。」ダンが珍しく穏やかで真剣な口調でマーガレットを諭す。

「…。けっ。あんたも変わったね。変なことすればすぐ中止だからね。どうとでもしな!」
マーガレットが折れてくれたので魔力を注ぐ場面にシスタージャスミンとロイが立ち会えることになった。


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