疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン

文字の大きさ
120 / 134

裁判 8

しおりを挟む

ケントはすぐ返事をしなかった。

青白い顔でブルブルと体を震わせている。

「何でなんだ…。何だよ…私に力って。
自分に力があるからって…。
自慢か?それに、精霊の主があの老人だって?
じゃあ僕に付くはずだった精霊はどうなるんだよ!

お前が母上の魔力を奪ったんだろ?お前の魔力を僕に移せば精霊は僕のものだったんだ!
しかも、別の奴に魔力を渡しただと?何を考えているんだよ…。
みんな僕の邪魔ばかりしやがって!いつもお前は忌々しい憎い妹だ!お前さえいなければ…。リリア…。」


ケントはリリアを睨みつけるが目の焦点があっていない。

怒りで奥歯がガタガタ言っているのがリリアが見ても分かる。どう見ても正常な精神状態じゃない。

傍聴席にいたケントの父親も驚いている。あんな感情剥き出しな息子は初めて見た。

リリアも驚いている。

リリアの記憶ではいつもわざとリリアを怒らせて泣かせる意地悪な兄の顔しか知らない。

(でも、この感情…私は知っている。
皐月の時何度かこんな子供の状態に立ち会ったことがある。

そう、後ろめたいことが明るみに出るとパニックになる。
何か知られてはいけない事実を隠すため、自分より立場の弱いものに罪を擦りつける行動。

罪が明るみにならないように仕立て上げた犯人を孤立させ執拗に排除しようとする振る舞い…。

子供なら罪の意識に悩みそれに気づいた善良な大人が導けば間違いを修正できる。

でも、ケントお兄様についている大人はあの執事…。

そうか、そう言うことなのね。)


リリアはケントに全てを知っているかのように話す。





「お兄様、お母様が亡くなった時、お兄様何をなさっていたのかしら?」


「な、何?」明らかに動揺するケント。


「お母様は領地にある危険な腐敗沼に体をつけて亡くなったと聞いていました。

大人の、ましてや女性が危険な場所で行動する時。

それは無我夢中で誰かを助ける時。

そうね、母親が危険を犯してまで子供を救う時でしょうね。

幼い私は沼地まで一人でたどり着きません。

お兄様が故意にお母様の気を引くために沼地に近づいたのでしょう?分かっているのよ。」


「ど、どうしてそれを!?リリア、お前知っていて今まで過ごしてきたのか!?

僕を陥れる時期を待っていたのだな!どこまでも外道な妹だ…。」



「どう思っていただいても構いません。

隣の執事、ゲイブだけはその秘密を打ち明けているのでしょう?

ああ、唯一の心の支えということですわね。

ゲイブのアドバイスは役に立ちましたか?
精霊も見えず、お母様のイアン家の魔力も覚醒していないお兄様。
良かったら私の白い魔力、お兄様にも分けて差し上げましょうか?」

リリアはわざと笑顔を見せてケントの感情を逆撫でさせようとする。


感情をむき出しにする息子とそれを更に逆上させようとする娘のやり取りを見て二人の父親は自身の情けなさを反省していた。

「まさか…。マリアの死がこのような話だったなんて…。
ケントはずっと黙っていたのか…。

私が仕事にかまけているからだ…。私は何ということを…。」

本当は逃げ出したい。しかし最後まで見届けるのが父親の仕事だ。


「くっそう。リリア…。リリアのくせに…。」

「え?私のくせにって言いました?

自分はデリスを兵器にして見殺しにしたゲイブの言いなりのくせに?
呆れちゃう。
自分が弱いからそうやって利用されるんでしょう?
何でそんなに未熟で弱いのかしら?え?それも私のせいなのですか?
私を憎んでおられるけれど、何がそんなに気に入らないのでしょうか?」

ゆったりとした口調で相手を試すようにリリアは続ける。


「ケント様、リリア様の口車に乗ってはいけません。冷静に、冷静になってくださいませ。」

ケントの隣でゲイブがリリアのペースにならないようにと声をかけるが、
ケントは興奮しすぎてゲイブの忠告を聞いていない。

「弱くて可哀想なお兄様、いつから私が嫌いになったのかしら。
私がいなかったらお兄様はもっと強かったのかしら。」


ケントは更にブルブルと体を震わす。

「うううんんっ…。そうだ!教えてやるよ!いつお前が嫌いになったかだって!?
母上が亡くなる前、もう長くないと僕とお前だけが呼ばれたあの日だ!

母上の魔力は僕とお前に注がれたんだよ!なのに!
お前の器の方が大きかったからお前ばっかりに注がれたんだ!!
それに、精霊もお前にずっとついていた!
いっつもお前ばっかり優遇されて!
お前なんか大っ嫌いだ!うわああああああああああ!」
ケントは子供のように泣き狂った。



(やっぱり、そういう理由だったのね。
話の根本は、幼い妹に母親を取られたと思ってかまって欲しかった兄弟の悪戯からの事故だったということね。

でも、種類は違えどお兄様の魔力も父譲りで膨大なはず…。

お母様のイアン家魔力も絶対受け継がれているはずよね…。

精霊も見えていたようだし。ここまで私が憎まれるのは納得がいかないわ。

ここまでお兄様と私をこじれさせたのは…。)



「黒幕はあなたね、ゲイブ。」リリアは冷静に指摘した。

「な、何のことでしょうかリリア様。
ああ、ケント様はお可哀想なお方だ。

しかし、だからと言ってリリア様を虐げてよい理由にはなりません。リリア様、私はあなたの味方です。

この裁判でケント様がデリスを唆した罪で訴えてもよろしいのではないですか?
お助けしますよ?
あなたはケント様にそれはそれは酷い扱いを長年受けておられました。
今その恨みを晴らすのもよろしいかと。」ゲイブはリリアの自尊心をくすぐるような方法で保身に走った。


「げ、ゲイブ?僕の味方じゃなかったのか?」

「私はいつでも正義であり続けたいのです。ケント様、リリア様への罪、デリスへの罪を償われた方がよろしいですよ。」


「すごい変わり身の速さだね。」
「ええ…。僕の執事は彼で良かった…。」マーガレットとラジオがゲンナリしている。

「そ、そんな…。誰も僕の味方はいないのか…。みんなリリアが取っていくのか…。僕には何もない。」

ケントは膝から崩れていった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌
恋愛
コツコツとレベルを上げて、生産していくゲームが好きなしがない女子大生、田中雪は、その日、妹に頼まれて手に入れたゲームを片手に通り魔に刺される。 女神『はい、あなた、転生ね』 雪『へっ?』 これは、生産ゲームの世界に転生したかった雪が、別のゲーム世界に転生して、コツコツと生産するお話である。 雪『世界観が壊れる? 知ったこっちゃないわっ!』 無事に完結しました! 続編は『悪役令嬢の神様ライフ』です。 よければ、そちらもよろしくお願いしますm(_ _)m

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

処理中です...