俺の婚約者は地味で陰気臭い女なはずだが、どうも違うらしい。

ミミリン

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両家の話し合い

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俺とアリスの両家では正式に婚約を継続し今までは親による意志だったが、これからは当人同士による意志も含まれる。今までアリスは婚約者として正式な場には出席しなかったが今後は徐々に社交の場に二人で出席することも決まった。


学園ではそのまま眼鏡でぶかぶかの制服姿で過ごすのは俺と本人の希望で継続。

でも、格式の高い場に出る時はアリスも正装する。眼鏡を外すのは世間のアメジスト色への批判が弱まる時期をみて外す事となった。


それと、この日は俺の母からアンジェリカの一件を謝罪する場にもなった。

俺の母はアンジェリカの母と縁を切った。まだアンジェリカの処遇は決まっていないが、アンジェリカの母と俺の母の関係を迂闊に子供同士にも刷り込んでしまったこと。
アンジェリカの振る舞いを親友の子供であったため注意を怠ったことが今回の事件につながったと母が泣きながらアリスに謝罪していた。


アリスとアリスの両親は強く抗議はしなかった。

むしろ、被害にあった俺への同情と婚約までの経過を喜んでくれていたのが幸いだった。

また、マリーナ嬢のパーティーで俺の本心を確かめるためにだまし討ちで芝居を仕込んだことを逆に謝罪された。
そうだ、あの話はしっかりお互いの両親にも伝わっていた。うーんちょっと恥ずかしい。が、あの場のおかげでアリスの俺への信頼を強めることが出来たので過剰に謝られると辛い。


「大丈夫です。試されたことの背景をセリスさんから聞いていますしこれ以上謝らないでください。」
と説明した。
婚約継続の話は今回の話し合いで更に強いものとしてもらえた。

そして、この話し合い後に俺は自分の父親から書斎に呼び出されアンジェリカとの経緯について再度厳重に注意を受け、アリスを必ず幸せにすることを何度も何度も確認された。
俺はただひたすらに「はい。承知しております。精進いたします。」と心から返事を繰り返した。


アンジェリカの両親については、父親は娘の愚かな行いにより、もともと危うかった立場が更に崩れ爵位を取り上げられた。今は平民として生活を送っている。
アンジェリカの母親は憔悴し夫とは離婚して実家に戻っているそうだ。捕らえられているアンジェリカは両親から縁を切られ誰も面会には来ていない。

アンジェリカの話をするとアリスの顔が曇るのでアンジェリカの情報は言わないようにしている。


そうそう、話し合いでは他にも話題があったんだ。
アリスから今後、俺や俺の両親と顔を合わせる時は野暮ったい恰好は控えるって言ってたな。

容姿を隠すために眼鏡や体の線を拾わない恰好をしていたが、相手にも失礼とは思っていたそうだ。なので、ここ最近俺と一緒にいる時アリスは眼鏡を外している。

何度見てもアリスの素顔は美しい。

マリーナ嬢は知っていたようだが、確かにこの姿を若い未熟な学生たちが目にしたら羨望、憧れ、嫉妬など色々と必要ない感情を沸き立たせるだろう。絶対あいつらには見せちゃだめだ。俺の婚約者であっても関係なく言い寄る輩もいるだろう。

悶々と嫌な想像を膨らませていると、アリスが心配そうな顔で覗いてきた。

「わわ!あ、アリス。」ち、近い。美しすぎて自分の婚約者なのに頭に血が集まり鼻血が出そうだ。
アリスの顔が近づくと毎回頭の血管が1本ずつ切れているんじゃないかと思うほどくらくらしてしまう。

「アレク、大丈夫?怖い顔しているわ。」

「だ、だ、だいじょうぶ!」アリスの顔を見て血管が切れそうなんて言えない。

「そう?ならいいんだけど。この前言っていたジョンの赤ちゃんのお祝いを一緒に考えたいんだけどどうかな?」

美人は三日で飽きるというがこれは嘘だ。飽きる訳がない。俺にはもったいない。
この言葉を作った奴は本当の美人を見たことがない馬鹿野郎だ。

「アレク、聞いている?」

「き、聞いているよ。赤ちゃんね。男の子だったかな?」

「そうそう。この前カタログを見ていたら剣のおもちゃがあったの。フワフワしているから赤ちゃんが持っても危なくないし、すごく可愛かったの。アレクと実際にお店で確認してから一緒に買いたくて。」

「いいね。行こう。ジョンさんカッコいい人だから赤ちゃんもかっこよくなるんだろうな。」
なんせ、俺がちょっと嫉妬するくらい、いい男だったからな。

「赤ちゃん、早く見たいな。アレクと私の赤ちゃんが居たらどんな感じになるのかな?」

「え?あ、赤ちゃん?」

俺とアリスの子供?
子供って見つめ合うだけで出来るものじゃないぞ!男と女のあれやこれやの順序があるんだぞ!

くらくらしながらアリスを見ると、純真な笑顔で微笑まれた。その顔はまさに天使様のようだ。
アリスはセクシャルな意味で発言したわけではない。俺が変なモードに変換しただけだと反省した。

けどな、アリス…。自分の言葉が凶器だということを自覚していないな。
そこがアリスの可愛いところだが、こんな無自覚に男を刺激するのは俺としては非常に困る。

「あ、アリス。あのな。」

「ん?なあに?」キラキラしたアメジスト色の曇りない瞳の輝きが俺の薄汚さを更に浮きだたせる。
今日は色々言うのはやめておこう。うん。それが良い。

無言でうなずく俺。

「もう、アレク。最近時々変よ。」と可愛く笑いかける。

俺の頭の血管いつまで無事でいられるだろうか。



しばらくこんな幸せな日々が続いたが、ある日突然事件が起こった。

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