二世帯住宅から冒険の旅へ

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第5話 訓練

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それから一か月くらい城に通って魔法使いのおじいさんや騎士のおじさんの訓練を受けた。辰巳が。


「タツ様、かなり上達しましたな。これなら油断しなければその辺の冒険者や盗賊には負けることはありますまいぞ」

「トリさん、訓練に付き合ってくれてありがとうございました。向こうでは戦闘の経験なんて積めないので助かりました」

「なあに。この近衛騎士団長トリュベィラ・ピゥンコンタの指導をここまで物にする弟子に出会えて私も満足ですぞ。それに引き替え近頃の騎士ときたら軟弱で」

「はは……。トリさんの全力についていくのはさすがに並大抵では」

「なにを言ってるのです。いつかは私と交代してもらわないと……タツ様、将来は近衛騎士になる気はありませんかな?」

「えっと、考えておきます」

「辰巳はオレと冒険するんだから騎士なんてやる時間ないよ」

「これはトラ様、トラ様も一生冒険者をやるわけではないでしょう? 引退して戻ってらしたときでいいのですよ。トラ様をお守りするためにも有能な近衛は必要ですからな」

「辰巳がオレ専属の近衛騎士ってこと?」

「俺がずっと虎彦のお守り役なのは変わらないんだな」

「辰巳、オモリとオマモリじゃだいぶ違うぞ」



辰巳は魔法もすげー使えるようになった。


「タツ様、全属性の中級魔法までは完璧に身に付けられたようですな。おめでとうございます」

「ありがとうございます、サルさん。魔法の使いかたなんてさっぱり見当もつかなかったのでできるようになってよかったです」

「そうですな。トラ様はその、残念ながらあまりお向きではなかったのですが、タツ様は非常に呑み込みが早く感覚が鋭い。近年まれにみる才能の持ちぬしでございました」

「いや、はは。サルさんのようなすごい魔法が使えるようになるまで精進します」

「タツ様にお教えしたのは基礎ですからな。これからもっと多彩で強力な魔法も習得することができるでしょう。次期魔法師団長の座も夢ではありませんよ」

「えっと、考えときます」

「辰巳はオレと冒険するんだから」

「これはトラ様、冒険中にかっこいい魔法でトラ様をお守りするタツ様を見たくはありませんか?」

「かっこいい魔法……辰巳は似合うからいいよな。オレも魔法使いたい」

「おまえも魔法使えるじゃん。あのよくわからないやつ」

「あー。まあな。でもなんかかっこよくない」

「俺はあれできないからな。頼りにしてるぜ」

「おう! 任しときな!」

「タツ様、トラ様の扱いも心得ておいでですね。ひと安心でございます」



そして装備や旅の準備も整いつつある。


「タツ様のお打ちになった長剣、もはや街なかの鍛冶屋では敵わない水準じゃな。お見事」

「いえいえ。ウマさんのご指導のおかげです。素材もたくさんムダにしてしまいましたし」

「なにを言う。この程度でそこまで上達するものなどおりませんのじゃ。みんなこの百倍も千倍も使いつぶして練習するもんですじゃ」

「手入れのしかたとかいろいろ教えてもらいましたし、今後すごく役に立つと思います」

「タツ様ならばわしの弟子を名乗ることを許そう。どこでもわしの名を出せば鍛冶師の協力が得られるじゃろう」

「王宮専属鍛冶師長の名を使う場面はなかなかないと思いますけど、ありがたく」

「旅から帰って来たらまたここに来るといい。鍛冶三昧の暮らしができるぞ」

「えっと、ちょっと考えさせてください」

「辰巳はオレと冒険するの!」

「お、トラ様、タツ様の鍛冶姿見たくないのかの?」

「ぅえ? んー、見たい」

「なら問題ないの」

「二人で決めないで」



「旅の間に必要な薬もひととおり作れるようになりましたね。薬草の見分けも完璧です」

「ヒツジ先生ありがとうございます。薬だけじゃなく毒物の知識が多かったですけど」

「王族を守るためには毒物の知識が不可欠ですからね。どうかトラ様をお助けして差し上げてくださいませ。王宮医薬錬金術師長としてお願い申し上げます」

「わかりました。お任せください」

「あと旅先で珍しい薬草や毒物が見つかったらこちらまで送ってくださいね」

「あ、はい」

「旅先で役立つよう医薬師連合会の紋章を持って行ってください。これに従わないものは切り捨てて構いませんから」

「いや構いましょうよ」

「従わないのはヤブ医者ですので、放置したほうが民衆に被害が出ますので」

「なるほど」

「辰巳はオレと冒険するからそんな時間ないと思うよ」

「トラ様、あの『ひかえおろう』ってやつやりたくないんですか?」

「やりたい!」

「ではお願いしますね」

「俺はなに役なの? てかそのネタなんで知ってるの?」



「タツ様、旅の無事を祈っております」

「ウサギ様、いろいろと教えていただきありがとうございました」

「ミゥテルゼン教主教として当然のことでございます。ああわたくしがお守りできればどんなにいいか……」

「ウサギ様落ち着いてください。主教のお仕事がんばってくださいね」

「ええ、そうですね。各地の教会を訪ねてみてください。きっと旅の助けになるでしょう」

「そうします」

「もしならなかったらご連絡くださいね。ふふ」

「あ、はい」

「これも『ひかえおろう』のやつ?」

「いや違うと思うぞ。本社にクレーム入れたら裏で担当者が吊るされるやつだ」

「なにそれ怖い」



「タツ坊、忘れ物はないか?」

「ネズミさん、鍋も包丁も調味料もバッチリだよ」

「おまえにはこの王宮料理長直伝の技とレシピを教え込んだんだ。どこに行っても料理人として恥ずかしくないぞ」

「忙しい料理長が直々に料理初心者の自分に一から手ほどきしてくれるなんて最初はびっくりしたけど、本当にネズミさんに教えてもらってよかった。旅に出たらネズミさんの料理が食べられないなんてつらすぎるよ」

「タツ坊、おまえに教えてもらった異世界料理の知識もかなり役に立ったぞ。なんせあの勇者坊主ときたら料理はさっぱりだしなんでも食うし味音痴だし」

「確かになんで勇者と虎彦がいるのに向こうの料理がひとつもないのか疑問だったんだよね。また今度向こうの料理本持って来るよ」

「おう、頼むぜ。王宮の取引先の商会や農場には俺の名を出せば割り引いてくれるように言っとくからな。食料品のことで困ったら訪ねるといい」

「ありがとう、ネズミさん。旅先でおいしいもの見つけたら報告するね」

「ああ、気を付けて行って来いよ」

「料理長めっちゃ怖いのに辰巳と普通に仲良くなってる」

「虎彦はつまみ食いするからだろ」

「坊主、また来たな。つまみ出すぞ」

「飲み物もお願い」

「そっちのつまみじゃないだろ」
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