私の存在

戒月冷音

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第101話

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「あのように、畳まれたものを切るのか?私が?」
「はい。生地を、マルクス様とヘンドリック様とマルガ様が作られ、
 最後に国王陛下が、その生地を切る・・・
 ご家族で作られる、最初の料理になります」
「家族で?」
「はい。共同作業ですね」
そういうと国王陛下は目をキラキラさせて
「分かった。ほれマルクス、早く伸ばさんか」
と嬉しそうに言う。

「お待ちください、父上。手荒に扱うと生地が割れてしまいます」
「割れると、どうなるのだ?」
「長い麺になりません。
 何とかして、料理長のうどんより、長くしたいのです」
マルクス様の言葉を聞き、料理長はご自身で切ったうどんを1本、持ち上げる。
それはするすると延びて、割りと長いものだった。

「うむ、あれより長くするのだな。マルクス、頑張れ」
「そうですわ。マルクス」
ご両親の声援を受け、一生懸命生地を伸ばしていくマルクス様。
ある程度、薄くなったところで
「ミシェル。これぐらいでどうかな?」
と聞いてくる。
生地はまだ、水分を保っていて、もう少し延びそう・・・

「国王陛下がお切りになるのですから、もう少し
 薄い方がいいかもしれませんが、どうですか?」
「やっぱり、そう思うか」
「はい」
恐らく今の状態でも、料理長が伸ばした生地より薄いとは思うが、きしめんのような幅で切られた時、食べるときに大変なことになる。
「よし、もう少し頑張る」
そういって長い棒に生地を巻き、向きを変えて生地を広げると、もう一度棒に巻き付けながら、ゆっくりと伸ばしていく。

もうそろそろ、いい感じに伸ばすことができたと思う頃、ヘンドリック様が、カサンドラ様と一緒に顔を出した。
「どうですか?出来ましたか?」
そう尋ねるヘンドリック様を、不思議そうに見るカサンドラ様。
「ヘンドリック様、カサンドラ様にはどの様にご説明を?」
と私が聞くと
「えっ、マルクスが作ったうどんを、食べに来てと」
「ヘンドリック様、省略しすぎです」
「兄上。それでは、兄上が作っていないことになりますよ」
マルクス様の言葉に、ビックリされたカサンドラ様は
「えっ!?どういう事ですか?ヘンドリック様が?えっ!?」
と慌ててしまわれた。

すると、マルガ様が近づき
「落ち着いて、説明しますから」
と言って、2人で隅に移動した。

ヘンドリック様は、マルガ様が説明を始めたのを見ると、すぐにマルクス様に駆け寄り
「どうだ?父上に、切ってもらえるのだろ?」
と話しかけた。
「兄上。あれではカサンドラ様に、振られてしまいますよ」
「えっ、なんで?俺は彼女を連れてきただけだ」
「それでは、ここに連れてくることはないでしょう。
 食事の時に、出来上がったものをお出しすればいいだけです」
「それは、面白くないじゃないか」
今のこの状況で、その気持ちは分かる。すると
「俺は、カサンドラ様も参加するのかと思ったのですが、違うのですか?」
とマルクス様が言った。

「参加、できるの?」
この時何故か、ヘンドリック様は、私に聞いてきた。
「参加はできます。切っていただいた後、ゆでると言う作業が御座います」
「ゆでるの?」
「はい」
そうしている間に、カサンドラ様も参加することになり、うきうきしながらマルガ様とお話しした後、私の横に来られた。
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