私の存在

戒月冷音

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第81話

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その日、王妃様の部屋からずっと、金切り声が聞こえていた。
やはりあの二人は、話を聞かないようだ。
昼食にもでてこず、あの二人を部屋から出さない予定だと聞いたが、2人が黙って従うわけもない。

「あらぁ、マルクス様ぁ、私と一緒にランチでも」
「俺達は、もう終わりました。後は勝手に、貴女1人でお食べください」
「そんな、冷たい…」
「ミシェル、行きましょうか」
そう言って私の肩を抱え、歩き出す。
「何で私は放置で、その子は大事にするのよ」
「大切で、大好きな婚約者です。メリア殿下と、比べないでください」
「私は王女よ。そんな女より、価値があるのよ。だから大切に…」
メリア殿下の言葉に、マルクス様からゴゴゴゴッと、聞こえそうなほどの、怒りの感情が湧き始めた。

「今、なんと言われました?」
とってもゆっくりで、低ーい声が、この場所に響いた。
「な、何よ」
「なんて言ったか、聞いてるんだ」
私を前に向けたまま、マルクス様は後ろを振り向いて話す。
「私は…」
「その次」
「そんな、おん、な…」
「あぁ、そうだね。君にとっては、そうなんだ。
 だったら、もう帰っていいよ」
マルクス様の機嫌が最悪になった瞬間だった。

「えっ!?」
「もう一生、顔見せるな。どっかの国で勝手にやってろ」
「何で?私は、貴男が良いの」
「俺はあんたに、興味はない。
 勝手に人のことを、代弁して…どうせ国では、勝手に俺が
 どうとかこうとか言ってんだろ。
 後で、国王陛下に直接話すから、あんたは要らない。
 ウソを平気で付くやつの相手なんか、したくねぇ」
「嘘なんて…」
「ついてんだろ。俺は、あんたが大嫌いだ。
 一度も、気になるとも言っていない。
 けれど、お前から話を聞いた奴らは、勝手に俺の婚約者だと思っていたり、
 両思いだと思っていたり、うっざいんだ」
マルクス様の言葉に、メリア殿下は何も言えなくなり、下を向いたと思った瞬間、ポタポタと水滴が床に落ちた。

「な、何で、そこまで、言われなきゃ、いけないのよ」
「そこまで?俺はまだ、言い足りないんだけど」
「どうしてっ」
「それだけあんたが俺達兄弟にとって、迷惑な存在になってるのに、
 気が付かなかったってことだろ」
「め、迷、惑…?」
「王妃様に何って言ったか知らないが、王妃様は何で俺と兄上が
 あんたと仲良しで、いつも良くしていただいてる…だったか?」
私はその言葉に、ビクッとした後、体が震え始めた。

さっきの言葉は、姉が母に、私のクラスメイトと自分について話す時に、使った言葉…
それを聞いた母は、姉とクラスメイトを信頼し、姉にすべてを任せる。
その後そこで、何が起こっていようと関係ないのだ。
ただ、姉が男の友だちを連れてきた。それだけ。
次の日学校で、その男子が童貞を卒業したと、大声で言っていても…
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