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第98話
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「あーーっ、そうだった。冷たくしても、つけ汁がいるんだーー」
よっぽど食べたかったのか、マルクス様がうめきだし、マルガ様がふふふっと笑う。
「母上?」
「あぁ、ごめんなさい。あなたがもっと子供の時、欲しいものが
手に入らなかった時と、同じだったから」
「え・・・子供の時?」
「そう、子供の時」
「はっず・・・」
そうして、国王陛下は一度、執務室でお仕事をしてもらい。出来上がる寸前で呼ぶことを約束した。
マルクス様はそこから必死にこねて、やっと生地がまとまったので、踏みにはいろうとした時、ヘンドリック様に
「兄上、兄上も一緒にやりませんか?」
と、声をかけた。
「えっ、俺も?」
「はい。ここから踏みの作業にはいるのですが」
「踏む?踏むって、足で?」
「はい。この今、俺が捏ねた生地を、袋にいれて足で踏むのです」
「食べるものだろ?」
「はい。ですがこうしないと、しっかりした歯応えが・・・」
マルクス様が、説明に困り出したので、私が引き継ぐ。
「ヘンドリック様」
「ん」
「麺類は、細い紐状になります。しっかり捏ねなければ、茹でた時に
溶けてしまいます」
「そうなの?」
「そうなのです。
ですが、手だけでは力が弱いのです。
なので、体重をかけられる足で踏みます。
そうすることで、もっと水分が粉に浸透して、美味しいうどんになるのです」
「じゃあ、足で踏んだ方が、茹でた時に溶けないの?」
「踏みすぎてもいけませんが、手で捏ねるより、短時間で溶けない生地になります」
「そうなんだね」
「それで・・・
さすがに、国王陛下とマルガ様に出すうどんを、私や料理長が踏んだものを
出すわけには・・・」
そういって料理長を見ると、ブンブンと頭を横に降っている。
「ですので、できれば、マルクス様とヘンドリック様にお願いしたいのです」
と私が言うと
「もっと言えば、手で捏ねるだけで、疲れてしまった俺の代わりに、
兄上に踏んでいただきたいのですが・・・」
吐息の上がったマルクス様が、お願いした。
「確かに。さっき父上に約束したしね。
うどんを完成するために、必要なら喜んでやるよ」
ヘンドリック様が、そういってくださった。
すると
「あの・・・私も踏んでみたいのだけど・・・」
と、マルガ様も名乗りを上げた。
「では、国王陛下にお出しするうどんは、マルクス様とヘンドリック様、
そしてマルガ様にお願いいたしましょう」
と私が言うと、料理長はほっとして、自分の生地を半透明の袋にいれ始めた。
「あの、オーギュスト様。これで大丈夫ですか?」
袋にいれた生地を見せながら、確認してくる料理長に
「これでは、破れる危険がありますから、袋の空気は抜いて、二重にしましよう」
と伝えた。
料理長が生地をいれた袋は。空気がこれでもかというほど入ったまま口を結んであり、料理長が踏んだ瞬間、パーン・・・と弾けそうな状態だった。
料理長・・・これから自分が踏むということを、考えて準備してください・・・
よっぽど食べたかったのか、マルクス様がうめきだし、マルガ様がふふふっと笑う。
「母上?」
「あぁ、ごめんなさい。あなたがもっと子供の時、欲しいものが
手に入らなかった時と、同じだったから」
「え・・・子供の時?」
「そう、子供の時」
「はっず・・・」
そうして、国王陛下は一度、執務室でお仕事をしてもらい。出来上がる寸前で呼ぶことを約束した。
マルクス様はそこから必死にこねて、やっと生地がまとまったので、踏みにはいろうとした時、ヘンドリック様に
「兄上、兄上も一緒にやりませんか?」
と、声をかけた。
「えっ、俺も?」
「はい。ここから踏みの作業にはいるのですが」
「踏む?踏むって、足で?」
「はい。この今、俺が捏ねた生地を、袋にいれて足で踏むのです」
「食べるものだろ?」
「はい。ですがこうしないと、しっかりした歯応えが・・・」
マルクス様が、説明に困り出したので、私が引き継ぐ。
「ヘンドリック様」
「ん」
「麺類は、細い紐状になります。しっかり捏ねなければ、茹でた時に
溶けてしまいます」
「そうなの?」
「そうなのです。
ですが、手だけでは力が弱いのです。
なので、体重をかけられる足で踏みます。
そうすることで、もっと水分が粉に浸透して、美味しいうどんになるのです」
「じゃあ、足で踏んだ方が、茹でた時に溶けないの?」
「踏みすぎてもいけませんが、手で捏ねるより、短時間で溶けない生地になります」
「そうなんだね」
「それで・・・
さすがに、国王陛下とマルガ様に出すうどんを、私や料理長が踏んだものを
出すわけには・・・」
そういって料理長を見ると、ブンブンと頭を横に降っている。
「ですので、できれば、マルクス様とヘンドリック様にお願いしたいのです」
と私が言うと
「もっと言えば、手で捏ねるだけで、疲れてしまった俺の代わりに、
兄上に踏んでいただきたいのですが・・・」
吐息の上がったマルクス様が、お願いした。
「確かに。さっき父上に約束したしね。
うどんを完成するために、必要なら喜んでやるよ」
ヘンドリック様が、そういってくださった。
すると
「あの・・・私も踏んでみたいのだけど・・・」
と、マルガ様も名乗りを上げた。
「では、国王陛下にお出しするうどんは、マルクス様とヘンドリック様、
そしてマルガ様にお願いいたしましょう」
と私が言うと、料理長はほっとして、自分の生地を半透明の袋にいれ始めた。
「あの、オーギュスト様。これで大丈夫ですか?」
袋にいれた生地を見せながら、確認してくる料理長に
「これでは、破れる危険がありますから、袋の空気は抜いて、二重にしましよう」
と伝えた。
料理長が生地をいれた袋は。空気がこれでもかというほど入ったまま口を結んであり、料理長が踏んだ瞬間、パーン・・・と弾けそうな状態だった。
料理長・・・これから自分が踏むということを、考えて準備してください・・・
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