53 / 73
第53話 計画は大切ですよ
しおりを挟む
当たり前だけどずっと走っていたら真っ暗になった。それも出て三時間程で、ちょうど山の中。明かりなどなく真っ暗。ランプで明かりを灯して走っていたけど、マトルドも怖いらしく走ってくれなくなった。
ここで夜を越す気?
「ねえ、マトルド。僕が引っ張ってあげるから走ってよう……」
ブルルルっと、嫌だと答えた様に頭を振って動いてくれない!
「チェト、どうしよう。怖いよう」
『だから計画性を持てと言ってあっただろう。ロマドなら朝早く発てば、その日のこの時間にはついていただろう』
「え? それ発つ前に言ってよう~」
『……まあ、あれだ。動かないんだったらここで野宿だな』
「え~!! こんな山の中で?」
『仕方がないであろう。われがいる。心配するな』
「チェト~」
チェトをギュッと抱きしめる。
『私もいるわ。ここで休みましょう』
『そうだな。ここで休もう』
「うん」
僕は、マトルドを引っ張って脇へ入った。大きな木を背に座り込む。ランプの明かりがあるとはいえ、自分の周り以外は真っ暗だ。
『ところでロマド。寝るのに必要な物はないのか?』
「え? あ、チェト達用のお布団持って来るの忘れたね!」
『違うわ! ロマドが寝る用にだ。毛布とか外套とか羽織るモノもないのか?』
あ、僕の事か。チェトは優しいなぁ。
「うーん。野営するつもりなかったから。外套も事もすっかり忘れてた」
『少しは学べ! 使う気がなくても用意しないといざという時に困るだろう。というか、困った事になっているではないか』
「うん。ごめんね。寒い?」
僕は、チェトを抱きしめた。
『だから……そうではないと言っている』
「うん。ごめんね。僕、ダメダメだね。やっぱり、冒険者に向いていないかな?」
『そ、そんな事はないと思うぞ。何事も経験だ。ロマドも経験を積めばきっと普通の冒険者になれるだろう』
「ありがとう、チェト」
『あまあまねぇ。寒くない? くっついていいわよ』
『おぬしもだろう』
「ありがとう。二人共。村に行ったら買うよ」
『う、売っているといいな』
「うん」
気づけば、マトルドも近くで座り込んでいた。マトルドも疲れたよね。
「あ、いけない! 馬って何食べるの? 草だけでいいの?」
『食べたくなれば食べるだろう。ただ水は必要だから水辺に寄ってほしい』
「うん。わかった。朝、水辺に行こう」
チェトがいてよかった。
□
ちゅんちゅんと可愛い鳥のさえずり、木々の優しいささやきが聞こえる。なんで?
『おーい。いつまで寝ているのだ。あまり遅くまで寝ていると、村に着くのが夜中になるぞ』
村? 村!!
そうだった。冒険の途中だった。
「あ、おはよう……」
『おはよう』
『おはよう、ロマド。起きたようね。さあ水辺に行きましょう』
「うん? あれ? マトルドは?」
『先に水辺に行った』
「そう……うん? 二人共何故か凄く汚れているね……ぎゃ~~!!」
チェトは赤く染まっていた! これは血じゃない? よく見るとサザナミもそうだ。黒いからわかりづらいけど。
『だ、大丈夫だ。一角兎を食しただけだ』
「え~~!!」
『角は、ちゃんと持って来たわよ』
「ぎゃ~~!! 血だらけ! もう二人共何やってるのさ!!」
僕が寝ている間に、お腹が空いて一角兎を食べちゃったみたいだ。うん。二人を責めてはいけない。僕が寝坊したからお腹を空かせたんだ。
「とりあえず、水辺に行って体を洗おう!」
『わかった。こっちだ』
走って水辺に行くとマトルドが全身濡れた状態で、草を食べている。
『我らも水浴びをしよう』
『そうね』
「うん。そうして。その間にマトルドを洗うから」
石鹸を出し草を食べているマトルドをシャンプーする。
「いい子だね。うん? あれ、ちょっと血がついている?」
チェト達と触れたんだ。食べなくても汚れちゃてるよ。
「あ、どうやってジャバーしようか?」
桶なんて持ってきてない。
「あ……」
泡が付いたまま水の中へ入って行った。
いいのかな、あれ?
『さあ、われも頼む』
『私もお願いするわ』
「うん。ふんふんふふん♪」
二人もアワアワになり、水の中に飛びこんだ。
乾かす方法がないので、三人共ブラッシングのみ。でもつやつやとフワフワになった。
角も洗うとピカピカになった。
「じゃ、誰もいないし、僕も走るよ」
マトルドの手綱を持って走り出した。
道に戻って道なりに走ると凄い光景に出くわした。何故か道の脇が赤黒く汚れていた。もしかしてここまで来て、一角兎を倒したのかもね。
次からは、肉の確保が問題かも。せめて焼いて食べさせないと!
ここで夜を越す気?
「ねえ、マトルド。僕が引っ張ってあげるから走ってよう……」
ブルルルっと、嫌だと答えた様に頭を振って動いてくれない!
「チェト、どうしよう。怖いよう」
『だから計画性を持てと言ってあっただろう。ロマドなら朝早く発てば、その日のこの時間にはついていただろう』
「え? それ発つ前に言ってよう~」
『……まあ、あれだ。動かないんだったらここで野宿だな』
「え~!! こんな山の中で?」
『仕方がないであろう。われがいる。心配するな』
「チェト~」
チェトをギュッと抱きしめる。
『私もいるわ。ここで休みましょう』
『そうだな。ここで休もう』
「うん」
僕は、マトルドを引っ張って脇へ入った。大きな木を背に座り込む。ランプの明かりがあるとはいえ、自分の周り以外は真っ暗だ。
『ところでロマド。寝るのに必要な物はないのか?』
「え? あ、チェト達用のお布団持って来るの忘れたね!」
『違うわ! ロマドが寝る用にだ。毛布とか外套とか羽織るモノもないのか?』
あ、僕の事か。チェトは優しいなぁ。
「うーん。野営するつもりなかったから。外套も事もすっかり忘れてた」
『少しは学べ! 使う気がなくても用意しないといざという時に困るだろう。というか、困った事になっているではないか』
「うん。ごめんね。寒い?」
僕は、チェトを抱きしめた。
『だから……そうではないと言っている』
「うん。ごめんね。僕、ダメダメだね。やっぱり、冒険者に向いていないかな?」
『そ、そんな事はないと思うぞ。何事も経験だ。ロマドも経験を積めばきっと普通の冒険者になれるだろう』
「ありがとう、チェト」
『あまあまねぇ。寒くない? くっついていいわよ』
『おぬしもだろう』
「ありがとう。二人共。村に行ったら買うよ」
『う、売っているといいな』
「うん」
気づけば、マトルドも近くで座り込んでいた。マトルドも疲れたよね。
「あ、いけない! 馬って何食べるの? 草だけでいいの?」
『食べたくなれば食べるだろう。ただ水は必要だから水辺に寄ってほしい』
「うん。わかった。朝、水辺に行こう」
チェトがいてよかった。
□
ちゅんちゅんと可愛い鳥のさえずり、木々の優しいささやきが聞こえる。なんで?
『おーい。いつまで寝ているのだ。あまり遅くまで寝ていると、村に着くのが夜中になるぞ』
村? 村!!
そうだった。冒険の途中だった。
「あ、おはよう……」
『おはよう』
『おはよう、ロマド。起きたようね。さあ水辺に行きましょう』
「うん? あれ? マトルドは?」
『先に水辺に行った』
「そう……うん? 二人共何故か凄く汚れているね……ぎゃ~~!!」
チェトは赤く染まっていた! これは血じゃない? よく見るとサザナミもそうだ。黒いからわかりづらいけど。
『だ、大丈夫だ。一角兎を食しただけだ』
「え~~!!」
『角は、ちゃんと持って来たわよ』
「ぎゃ~~!! 血だらけ! もう二人共何やってるのさ!!」
僕が寝ている間に、お腹が空いて一角兎を食べちゃったみたいだ。うん。二人を責めてはいけない。僕が寝坊したからお腹を空かせたんだ。
「とりあえず、水辺に行って体を洗おう!」
『わかった。こっちだ』
走って水辺に行くとマトルドが全身濡れた状態で、草を食べている。
『我らも水浴びをしよう』
『そうね』
「うん。そうして。その間にマトルドを洗うから」
石鹸を出し草を食べているマトルドをシャンプーする。
「いい子だね。うん? あれ、ちょっと血がついている?」
チェト達と触れたんだ。食べなくても汚れちゃてるよ。
「あ、どうやってジャバーしようか?」
桶なんて持ってきてない。
「あ……」
泡が付いたまま水の中へ入って行った。
いいのかな、あれ?
『さあ、われも頼む』
『私もお願いするわ』
「うん。ふんふんふふん♪」
二人もアワアワになり、水の中に飛びこんだ。
乾かす方法がないので、三人共ブラッシングのみ。でもつやつやとフワフワになった。
角も洗うとピカピカになった。
「じゃ、誰もいないし、僕も走るよ」
マトルドの手綱を持って走り出した。
道に戻って道なりに走ると凄い光景に出くわした。何故か道の脇が赤黒く汚れていた。もしかしてここまで来て、一角兎を倒したのかもね。
次からは、肉の確保が問題かも。せめて焼いて食べさせないと!
35
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ
O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。
それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。
ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。
彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。
剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。
そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
解雇されたけど実は優秀だったという、よくあるお話。
シグマ
ファンタジー
突如、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]を解雇されたサポーターのマルコ。しかし普通のサポート職以上の働きをしていたマルコが離脱した後のパーティーは凋落の一途を辿る。そしてその影響はギルドにまでおよび……
いわゆる追放物の短編作品です。
起承転結にまとめることを意識しましたが、上手く『ざまぁ』出来たか分かりません。どちらかと言えば、『覆水盆に返らず』の方がしっくりくるかも……
サクッと読んで頂ければ幸いです。
※思っていた以上の方に読んで頂けたので、感謝を込めて当初の予定を越える文量で後日談を追記しました。ただ大団円で終わってますので、『ざまぁ』を求めている人は見ない方が良いかもしれません。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる