【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
21 / 51

21話

しおりを挟む
 次の日、王城から迎えに来た馬車にクラリサとメルティの二人は乗り込んだ。
 メルティは、憂鬱でしかない。
 聖女であるクラリサは、白を基調としたデザインのドレスを着ている。
 メルティは、クラリサからの一番古いお下がりの青いドレスを着せられた。
 ファニタの話では、リンアールペ侯爵夫人の授業は聖女であるクラリサの為にメルティが授業を受けるのだと言っていたのに、見栄えはどうでもいいのだろうか。などと、メルティは落ち込む。

 「どう? 少しは自覚した?」
 「え?」
 「私とあなたの差よ」

 このドレスの様に、差があるのよと言わんばかりだ。

 「いい? 予言を見たらちゃんと私に言うのよ」
 「………」
 「ちゃんと返事をしなさいよ!」
 「はい……」
 「まったく。本当なら連れてなど行きたくないのですからね」

 そりゃそうだろうとメルティは思う。
 両親に言われたからと、デートに妹を連れていかなくてはいかないのだから。
 ついて行くように言われたメルティも嫌だった。

 メルティは、予言を見たとしても言うつもりなどない。まあ手を水に浸さな限り見る事はないので、途中で予言する事もないが。
 王城に着くと、ルイス王子が出迎えてくれた。
 クラリサだけでなく、メルティにも降りる時に手を差し伸べてくれたが、それを見たクラリサは、メルティを睨みつける。

 「よく来たね」
 「誘っていただきありがとうございます」
 「レドゼンツ伯爵が、是非にと言うものだからね」

 そう言ってルイスは歩き出す。

 「私も忙しい身なので、近場で悪いけど」

 どこへ行くのかと思えば、訓練所だった。初デートにしては、色気などない。
 初めて目にする騎士達の稽古。

 「ルイス殿下。その令嬢達は」
 「この二人は、レドゼンツ伯爵家の娘、クラリサ嬢とメルティ嬢だ」
 「はじめまして、皆さま」
 「こんにちは」

 クラリサとメルティは、カーテシーで挨拶をする。

 「あぁ、あのレドゼンツ伯爵家……」

 そういう呟きが聞こえると、クラリサは笑顔はそのままにピクリと眉を動かす。
 聖女の祝賀会をドタキャンしたレドゼンツ伯爵家。噂を聞いている者達が、そう言ったのだ。
 メルティだけが知らないので、あのとはどういうと疑問を抱く。
 聖女様がいるという感じの意味ではなさそうだと言うのだけは、わかった。だから不思議でならない。
 まだ伏せられているので婚約者だと紹介できないとして、クラリサを聖女として紹介しなかった事にも違和感を覚えた。
 しかも、クラリサ自らもが聖女だと名乗らない。

 その後、ルイスも加わり稽古を始めたので、二人はただそれを見学するだけ。もしメルティがいなければ、クラリサが独りポツンと見学する事になっただろう。

 「何これ……」

 一時間ほど経って、クラリサが呟く。
 皆真剣に稽古に励む為、声を掛けられる事もない。
 面白くも何ともない練習を見せられ不機嫌なクラリサに対し、初めての練習風景を楽しく見つめるメルティ。
 さらに二時間ほど放置され、やっとルイスが二人に近づいた。

 「もう時間だから送るよ」
 「え……もう終わり?」
 「レドゼンツ伯爵には、鍛錬の見学になると思うけどと言ってあったのだけど、聞いていないかな」
 「いえ……」

 確かにそう言っていた。だが、ルイスまで加わり放って置かれるなど思わなかったのだ。デートコースの一部だと思っていた。
 送ると言われたが、ルイスは馬車までで後は行きと同じで二人で馬車に乗り帰る。

 「どういう事? 承諾してくれたのではないの?」

 イラついてクラリサが言う。
 着飾った意味が全くなかった。

 「……そうよ。あなたがついてきたからだわ」
 「え……」

 そう言われてもついていけと言ったのは、クラリサ達だ。

 「予言もしないし」
 「それは……」
 「口答えしない! お父様達には止められているけど、言わないとあなたは立場を理解しないみたいね!」
 「え?」

 一体何を口止めされているのだろうと思っていると、驚く内容を口にする。

 「あなたは、養女なのよ。私達、本当の姉妹じゃないの」
 「え……」
 「あなたは、覚えていないでしょうけど、私は覚えているわ。突然あなたが増えた事を」

 メルティは、驚愕に目を見開く。
 でも心当たりがあった。あの夢だ。知らない夫妻と男の子。たまに見る夢。もしあれが現実の事ならば、あの人達が自分の本当の家族。

 「気が付いていたでしょう。あなたに対する態度と私に対する態度が違う事を。養ってもらっているのだから感謝なさい」

 クラリサが言う通り、両親がクラリサを贔屓しているのはわかっていた。その理由が、本当の子ではなかったからだったのだと言われ、ショックを隠し切れない。
 言ってスッキリしたのか、少し機嫌がよくなったクラリサは勝ち誇った様に続ける。

 「だから聖女は私なの。あなたは、恩を返す為に私達の言う事を聞いていればいいのよ。いいわね!」

 (そんな……。もしかして、私の家族は――)

 ――亡くなっている。
 ただ預けられたとは考えづらい。

 メルティは、泣き出した。
 その姿を見て、満足した様子のクラリサは、ふんと馬車から見える風景を眺めるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...