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22話
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「随分と上の空ですわね」
メルティは、リンアールペ侯爵夫人の授業に身が入らない。
あの衝撃的な出来事で頭がいっぱいだった。
(事実を知りたい。リンアールペ侯爵夫人は叔母様の事をきっとご存じよね)
「あのリンアールペ侯爵夫人。お聞きしたい事がございます」
「何でしょう」
「私の叔母様をご存じでしょうか」
「叔母?」
「本を下さった叔母様が居るのです。ご存じなのですよね。大事な事を確認したいのです」
「それは授業を中断までして、今聞かなくてはいけない事なのでしょうか?」
「それは……」
メルティは俯く。
授業とは全く関係がない話だ。
だが気になって授業どころではない。
「確認しないと、授業にも身がはいらなくて……」
「そうですか。では今日は中止にしましょう」
「え!?」
「なぜ驚くのです。身がはいらないのでしょう? それとも今すぐにでもその叔母に来て頂きますか? そして問いただすのですか?」
「それは……」
叔母に連絡できたとして、次の授業までに話ができるかどうかわからない。手紙のやり取りなら返事が来るまで授業を待つ事になる。
「いいですか。気持ちを切り替えなさい」
「もし、私がレドゼンツ伯爵家の娘でなくとも授業を続けて下さいますか」
「メルティ嬢」
名を呼ばれ、俯いていた顔を上げると、厳しい顔つきのリンアールペ侯爵夫人がジッとメルティを見つめていた。
「私が教えて差し上げているのは、メルティ・レドゼンツ嬢以外何者でもありません。どうしても叔母と対面したのであれば、素敵なレディーになった後になさい」
リンアールペ侯爵夫人の言葉に目をぱちくりとする。
そう今は、メルティ・レドゼンツ伯爵令嬢なのだ。姉であるクラリサより可愛がってもらえなかったとしても、娘として育ててくれていた。
だったらメルティ・レドゼンツなのだ。
そして、遠回しにだけどパーティーにて、叔母に合わせると言ってくれている。
「はい。リンアールペ侯爵夫人」
「吹っ切れたようね」
それからの今日の授業は、気持ちを切り替えて受けたのだった。
◇
「クラリサ、何とかルイス殿下と会える日を整えた。また二人で会って来るといいだろう」
「え? もしかしてまた、訓練場ではないでしょうね」
「あぁ……まあ、そう言っていたかな」
クラリサが、ムッとした顔つきになる。
「お父様。行っても放っておかれるだけなのです。しかも三時間も! その間、こちらを気に掛けて頂けないのですよ」
「そう言ってもな。メルティがルイス殿下と接点を持たないと、役に立つ予言を見ないのだから仕方がない」
「本当に予言を見ているのかしら」
イヒニオの言葉に、不機嫌にクラリサは返す。
「少なくともそれで私は生きているからな。その後、使用人達も些細な事だが予言で当てている。しかも、知っていれば防げるとわかっているのだ。わかるかこの意味が。王族に恩を売る事ができるという事だ」
「でも、メルティが予言を見ても言わなければそれも叶わないわ」
「いいや。メルティの性格からして、黙ってはいられないだろう。お前が聖女としてお披露目されたと思っているのだから、そうなればお前に言うだろう」
「そうよ、クラリサ。予言が一度だけだから向こうは疑っているのよ。あと一度でも予言を見せればいいの」
「一度だけでも?」
イヒニオとファニタが頷く。
「予言ですもの。そんな頻繁に見ない。そうわかれば、ルイス殿下との婚約だって考え直すでしょう」
「そうだ。今度こそ、婚約発表と共に聖女としてお披露目だ」
「そうね。あの子だけいい思いはさせないわ」
リンアールペ侯爵夫人に教えてもらうという栄光を受けていると思うだけで、腹立たしい。
もし聖女となれば、クラリサにもリンアールペ侯爵夫人が授業をしてくれるだろう。
「ところで、クラリサ。メルティに本当に何も言っていないだろうな」
「え……言っていないわよ」
このところ、様子が変なので不安になったのだ。
「いいか、メルティと私達が本当の家族ではないという事は、絶対に言うな。へそでも曲げられたら困るからな」
「大丈夫よ。どちらにしてもメルティに味方なんていないのだから」
「もう予言の能力が、クラリサだったらこんな苦労はしないのにね」
ファニタの言葉に、そうだと二人は頷く。
相変わらず、使用人にはクラリサから聞いたと予言を伝えているのだから、自分が聖女だと名乗る事などないだろう。
後は、イヒニオが言う通り、ルイスの予言できるほど近い関係になればいいだけだ。
だが茶を飲みながらの見学でもない。ただ稽古を見ているだけなので、退屈で仕方がないのだ。しかも屋外なので、風で砂埃が舞う。日差しは日傘で防げても、砂埃は防げない。
かと言って、メルティの様に汚れてもいいようなドレスを着て行くのも嫌なのだ。
王子の権力を使ってどこにでも行けるのに、どうして練習場なのよ! と憤るクラリサだった。
メルティは、リンアールペ侯爵夫人の授業に身が入らない。
あの衝撃的な出来事で頭がいっぱいだった。
(事実を知りたい。リンアールペ侯爵夫人は叔母様の事をきっとご存じよね)
「あのリンアールペ侯爵夫人。お聞きしたい事がございます」
「何でしょう」
「私の叔母様をご存じでしょうか」
「叔母?」
「本を下さった叔母様が居るのです。ご存じなのですよね。大事な事を確認したいのです」
「それは授業を中断までして、今聞かなくてはいけない事なのでしょうか?」
「それは……」
メルティは俯く。
授業とは全く関係がない話だ。
だが気になって授業どころではない。
「確認しないと、授業にも身がはいらなくて……」
「そうですか。では今日は中止にしましょう」
「え!?」
「なぜ驚くのです。身がはいらないのでしょう? それとも今すぐにでもその叔母に来て頂きますか? そして問いただすのですか?」
「それは……」
叔母に連絡できたとして、次の授業までに話ができるかどうかわからない。手紙のやり取りなら返事が来るまで授業を待つ事になる。
「いいですか。気持ちを切り替えなさい」
「もし、私がレドゼンツ伯爵家の娘でなくとも授業を続けて下さいますか」
「メルティ嬢」
名を呼ばれ、俯いていた顔を上げると、厳しい顔つきのリンアールペ侯爵夫人がジッとメルティを見つめていた。
「私が教えて差し上げているのは、メルティ・レドゼンツ嬢以外何者でもありません。どうしても叔母と対面したのであれば、素敵なレディーになった後になさい」
リンアールペ侯爵夫人の言葉に目をぱちくりとする。
そう今は、メルティ・レドゼンツ伯爵令嬢なのだ。姉であるクラリサより可愛がってもらえなかったとしても、娘として育ててくれていた。
だったらメルティ・レドゼンツなのだ。
そして、遠回しにだけどパーティーにて、叔母に合わせると言ってくれている。
「はい。リンアールペ侯爵夫人」
「吹っ切れたようね」
それからの今日の授業は、気持ちを切り替えて受けたのだった。
◇
「クラリサ、何とかルイス殿下と会える日を整えた。また二人で会って来るといいだろう」
「え? もしかしてまた、訓練場ではないでしょうね」
「あぁ……まあ、そう言っていたかな」
クラリサが、ムッとした顔つきになる。
「お父様。行っても放っておかれるだけなのです。しかも三時間も! その間、こちらを気に掛けて頂けないのですよ」
「そう言ってもな。メルティがルイス殿下と接点を持たないと、役に立つ予言を見ないのだから仕方がない」
「本当に予言を見ているのかしら」
イヒニオの言葉に、不機嫌にクラリサは返す。
「少なくともそれで私は生きているからな。その後、使用人達も些細な事だが予言で当てている。しかも、知っていれば防げるとわかっているのだ。わかるかこの意味が。王族に恩を売る事ができるという事だ」
「でも、メルティが予言を見ても言わなければそれも叶わないわ」
「いいや。メルティの性格からして、黙ってはいられないだろう。お前が聖女としてお披露目されたと思っているのだから、そうなればお前に言うだろう」
「そうよ、クラリサ。予言が一度だけだから向こうは疑っているのよ。あと一度でも予言を見せればいいの」
「一度だけでも?」
イヒニオとファニタが頷く。
「予言ですもの。そんな頻繁に見ない。そうわかれば、ルイス殿下との婚約だって考え直すでしょう」
「そうだ。今度こそ、婚約発表と共に聖女としてお披露目だ」
「そうね。あの子だけいい思いはさせないわ」
リンアールペ侯爵夫人に教えてもらうという栄光を受けていると思うだけで、腹立たしい。
もし聖女となれば、クラリサにもリンアールペ侯爵夫人が授業をしてくれるだろう。
「ところで、クラリサ。メルティに本当に何も言っていないだろうな」
「え……言っていないわよ」
このところ、様子が変なので不安になったのだ。
「いいか、メルティと私達が本当の家族ではないという事は、絶対に言うな。へそでも曲げられたら困るからな」
「大丈夫よ。どちらにしてもメルティに味方なんていないのだから」
「もう予言の能力が、クラリサだったらこんな苦労はしないのにね」
ファニタの言葉に、そうだと二人は頷く。
相変わらず、使用人にはクラリサから聞いたと予言を伝えているのだから、自分が聖女だと名乗る事などないだろう。
後は、イヒニオが言う通り、ルイスの予言できるほど近い関係になればいいだけだ。
だが茶を飲みながらの見学でもない。ただ稽古を見ているだけなので、退屈で仕方がないのだ。しかも屋外なので、風で砂埃が舞う。日差しは日傘で防げても、砂埃は防げない。
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