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34話
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屋敷に戻ったメルティをリンアールペ侯爵夫人が呼び止めた。約束を履行するという。
部屋に行くと叔母はもう座っていて、メルティを笑顔で出迎えた。目の前の席に座る様に促され着席する。
「ルイス殿下とは話し合えたかしら? 次は私の番ね。すでに気づいていたと思うけど、私があなたの叔母よ」
ラボランジュ公爵夫人が、向かい合わせに座った席からジッとメルティを見つめ言う。色々と世話を焼いてくれた事からそうかもと思ってはいた。アクアマリンの首飾りの事も知っていたので、確信にかわっていた。
「今回は、凄く助かりました。本当にありがとうございます」
「いいえ。私には、あなたを守る義務があるから」
「そうなのですね……それでその、私は一体誰なのでしょうか」
ドキドキしながら問う。
この回答によっては、自身の未来が変わる。
「何を言っているの。メルティ・レドゼンツよ」
ラボランジュ公爵夫人の言葉に、メルティは驚く。返って来た言葉はリンアールペ侯爵夫人と同じだ。大丈夫だという様に、ラボランジュ公爵夫人が頷く。
「不安なのよね」
「はい……」
ここに来て嘘など言わないだろうから、メルティはレドゼンツ伯爵家の娘。養女だろうと関係ないという事だろう。だがどうして養女になったのか。それが聞きたい。
「あなた自身は、どこまで覚えているのかしら?」
フルフルと頭を振った後、メルティは俯いた。
「いいえ。覚えている事はほとんどありません。ただ養女だと聞き、納得しただけです」
「養女ですって? 誰がそんな事を言ったのかしら?」
「え? 違うのですか」
「違うわね」
迷いもなくラボランジュ公爵夫人が返す。
「でも、お姉様がそう言って」
「あぁ、なるほどね。良く聞いて。あなたは、メルティ・レドゼンツなの。伯爵家の娘。きっとクラリサ嬢が勘違いしているか、両親にそう言われたかね。あなた達は親子関係にはなっていないわ」
「そうなのですか……」
ピンと来ていないと言う顔つきでメルティは呟く。
養女でも親子でもない。ならば一体どういう関係なのか。
メルティは、クラリサに養女だと言われなければ、本当の意味で決心がつかなかっただろう。叔母が居たとしても、両親とも親戚だという事になるのだから。
初めは、王城で会ったラボランジュ公爵が夫人を通してリンアールペ侯爵夫人を寄越したのだと思っていたので、なぜそこまでしてくれるのか不思議だったが、ラボランジュ公爵夫人が叔母ならば説明がつく。
夫であるラボランジュ公爵にメルティの事を聞き、彼女の現状を知った叔母がメルティを助ける為に動き出したのだ。
「もうきっと、真実を受け止められると思うから16歳を待たずに話そうと思う」
16歳。それは、子供と大人の分かれ目の年齢。しかしそれは、法律上の話だ。
今のメルティは、三か月前に比べれば精神的にずっと大人になった。
「はい。受け止めます。真実を教えてください」
「わかったわ。まず、あなたが両親だと思っていた二人は、叔父と叔母よ。あなたの本当の父親の弟とその妻。それにその子供」
全くの他人ではなかった事にメルティは、目を瞬く。
「そして私は、あなたの本当の母親の従兄弟なの」
「従兄弟……」
「えぇ。これから12年前にあった事をお話するわ」
「12年前?」
そうだとラボランジュ公爵夫人は、頷く。
「その時にもしかして、両親と兄が亡くなったのですか」
「思い出したの!?」
「え? いえ……」
「あ、そうなの……」
「あの……12年前なら私は2歳で、普通は覚えていないものではないでしょうか」
覚えているのが普通で、メルティがさも忘れていて思い出したのかという問いかけだったのが不思議でメルティは言った。
「そうね。ただ兄と言ったものだから」
「それは、毎回見る夢があるんです。泣き叫ぶ私に優しく話しかけるご夫妻と4、5歳の男の子の夢。養女だと聞いた時に、夢の中の人が両親かなと思って。それならその男の子は、兄かもしれないなって」
「まあ。きっとあの日の事を覚えていたのね。あの日あなたは、行かないでと泣きじゃくっていたとアールは言っていたわ」
目を潤ませラボランジュ公爵夫人は、言う。
「え? アール? 執事長の?」
「えぇ。彼もまたあなたを見守っていた一人よ。彼は、今のレドゼンツ伯爵では解雇できない契約になっているの」
「そうだったのですね。色々と助けて頂きました」
うんうんとラボランジュ公爵夫人は、頷く。
「それで12年前の出来事だけど、あなたはレドゼンツ伯爵家で唯一生き残った人物なのよ」
ラボランジュ公爵夫人は、12年前の出来事を詳しく語り出した。
何とも悲運としか言いようがない、悲しい出来事を――。
部屋に行くと叔母はもう座っていて、メルティを笑顔で出迎えた。目の前の席に座る様に促され着席する。
「ルイス殿下とは話し合えたかしら? 次は私の番ね。すでに気づいていたと思うけど、私があなたの叔母よ」
ラボランジュ公爵夫人が、向かい合わせに座った席からジッとメルティを見つめ言う。色々と世話を焼いてくれた事からそうかもと思ってはいた。アクアマリンの首飾りの事も知っていたので、確信にかわっていた。
「今回は、凄く助かりました。本当にありがとうございます」
「いいえ。私には、あなたを守る義務があるから」
「そうなのですね……それでその、私は一体誰なのでしょうか」
ドキドキしながら問う。
この回答によっては、自身の未来が変わる。
「何を言っているの。メルティ・レドゼンツよ」
ラボランジュ公爵夫人の言葉に、メルティは驚く。返って来た言葉はリンアールペ侯爵夫人と同じだ。大丈夫だという様に、ラボランジュ公爵夫人が頷く。
「不安なのよね」
「はい……」
ここに来て嘘など言わないだろうから、メルティはレドゼンツ伯爵家の娘。養女だろうと関係ないという事だろう。だがどうして養女になったのか。それが聞きたい。
「あなた自身は、どこまで覚えているのかしら?」
フルフルと頭を振った後、メルティは俯いた。
「いいえ。覚えている事はほとんどありません。ただ養女だと聞き、納得しただけです」
「養女ですって? 誰がそんな事を言ったのかしら?」
「え? 違うのですか」
「違うわね」
迷いもなくラボランジュ公爵夫人が返す。
「でも、お姉様がそう言って」
「あぁ、なるほどね。良く聞いて。あなたは、メルティ・レドゼンツなの。伯爵家の娘。きっとクラリサ嬢が勘違いしているか、両親にそう言われたかね。あなた達は親子関係にはなっていないわ」
「そうなのですか……」
ピンと来ていないと言う顔つきでメルティは呟く。
養女でも親子でもない。ならば一体どういう関係なのか。
メルティは、クラリサに養女だと言われなければ、本当の意味で決心がつかなかっただろう。叔母が居たとしても、両親とも親戚だという事になるのだから。
初めは、王城で会ったラボランジュ公爵が夫人を通してリンアールペ侯爵夫人を寄越したのだと思っていたので、なぜそこまでしてくれるのか不思議だったが、ラボランジュ公爵夫人が叔母ならば説明がつく。
夫であるラボランジュ公爵にメルティの事を聞き、彼女の現状を知った叔母がメルティを助ける為に動き出したのだ。
「もうきっと、真実を受け止められると思うから16歳を待たずに話そうと思う」
16歳。それは、子供と大人の分かれ目の年齢。しかしそれは、法律上の話だ。
今のメルティは、三か月前に比べれば精神的にずっと大人になった。
「はい。受け止めます。真実を教えてください」
「わかったわ。まず、あなたが両親だと思っていた二人は、叔父と叔母よ。あなたの本当の父親の弟とその妻。それにその子供」
全くの他人ではなかった事にメルティは、目を瞬く。
「そして私は、あなたの本当の母親の従兄弟なの」
「従兄弟……」
「えぇ。これから12年前にあった事をお話するわ」
「12年前?」
そうだとラボランジュ公爵夫人は、頷く。
「その時にもしかして、両親と兄が亡くなったのですか」
「思い出したの!?」
「え? いえ……」
「あ、そうなの……」
「あの……12年前なら私は2歳で、普通は覚えていないものではないでしょうか」
覚えているのが普通で、メルティがさも忘れていて思い出したのかという問いかけだったのが不思議でメルティは言った。
「そうね。ただ兄と言ったものだから」
「それは、毎回見る夢があるんです。泣き叫ぶ私に優しく話しかけるご夫妻と4、5歳の男の子の夢。養女だと聞いた時に、夢の中の人が両親かなと思って。それならその男の子は、兄かもしれないなって」
「まあ。きっとあの日の事を覚えていたのね。あの日あなたは、行かないでと泣きじゃくっていたとアールは言っていたわ」
目を潤ませラボランジュ公爵夫人は、言う。
「え? アール? 執事長の?」
「えぇ。彼もまたあなたを見守っていた一人よ。彼は、今のレドゼンツ伯爵では解雇できない契約になっているの」
「そうだったのですね。色々と助けて頂きました」
うんうんとラボランジュ公爵夫人は、頷く。
「それで12年前の出来事だけど、あなたはレドゼンツ伯爵家で唯一生き残った人物なのよ」
ラボランジュ公爵夫人は、12年前の出来事を詳しく語り出した。
何とも悲運としか言いようがない、悲しい出来事を――。
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