【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
34 / 51

34話

しおりを挟む
 屋敷に戻ったメルティをリンアールペ侯爵夫人が呼び止めた。約束を履行するという。
 部屋に行くと叔母はもう座っていて、メルティを笑顔で出迎えた。目の前の席に座る様に促され着席する。

 「ルイス殿下とは話し合えたかしら? 次は私の番ね。すでに気づいていたと思うけど、私があなたの叔母よ」

 ラボランジュ公爵夫人が、向かい合わせに座った席からジッとメルティを見つめ言う。色々と世話を焼いてくれた事からそうかもと思ってはいた。アクアマリンの首飾りの事も知っていたので、確信にかわっていた。

 「今回は、凄く助かりました。本当にありがとうございます」
 「いいえ。私には、あなたを守る義務があるから」
 「そうなのですね……それでその、私は一体誰なのでしょうか」

 ドキドキしながら問う。
 この回答によっては、自身の未来が変わる。

 「何を言っているの。メルティ・レドゼンツよ」

 ラボランジュ公爵夫人の言葉に、メルティは驚く。返って来た言葉はリンアールペ侯爵夫人と同じだ。大丈夫だという様に、ラボランジュ公爵夫人が頷く。

 「不安なのよね」
 「はい……」

 ここに来て嘘など言わないだろうから、メルティはレドゼンツ伯爵家の娘。養女だろうと関係ないという事だろう。だがどうして養女になったのか。それが聞きたい。

 「あなた自身は、どこまで覚えているのかしら?」

 フルフルと頭を振った後、メルティは俯いた。

 「いいえ。覚えている事はほとんどありません。ただ養女だと聞き、納得しただけです」
 「養女ですって? 誰がそんな事を言ったのかしら?」
 「え? 違うのですか」
 「違うわね」

 迷いもなくラボランジュ公爵夫人が返す。

 「でも、お姉様がそう言って」
 「あぁ、なるほどね。良く聞いて。あなたは、メルティ・レドゼンツなの。伯爵家の娘。きっとクラリサ嬢が勘違いしているか、両親にそう言われたかね。あなた達は親子関係にはなっていないわ」
 「そうなのですか……」

 ピンと来ていないと言う顔つきでメルティは呟く。
 養女でも親子でもない。ならば一体どういう関係なのか。

 メルティは、クラリサに養女だと言われなければ、本当の意味で決心がつかなかっただろう。叔母が居たとしても、両親とも親戚だという事になるのだから。

 初めは、王城で会ったラボランジュ公爵が夫人を通してリンアールペ侯爵夫人を寄越したのだと思っていたので、なぜそこまでしてくれるのか不思議だったが、ラボランジュ公爵夫人が叔母ならば説明がつく。
 夫であるラボランジュ公爵にメルティの事を聞き、彼女の現状を知った叔母ラボランジュ公爵夫人がメルティを助ける為に動き出したのだ。

 「もうきっと、真実を受け止められると思うから16歳を待たずに話そうと思う」

 16歳。それは、子供と大人の分かれ目の年齢。しかしそれは、法律上の話だ。
 今のメルティは、三か月前に比べれば精神的にずっと大人になった。

 「はい。受け止めます。真実を教えてください」
 「わかったわ。まず、あなたが両親だと思っていた二人は、叔父と叔母よ。あなたの本当の父親の弟とその妻。それにその子供」

 全くの他人ではなかった事にメルティは、目を瞬く。

 「そして私は、あなたの本当の母親の従兄弟なの」
 「従兄弟……」
 「えぇ。これから12年前にあった事をお話するわ」
 「12年前?」

 そうだとラボランジュ公爵夫人は、頷く。

 「その時にもしかして、両親と兄が亡くなったのですか」
 「思い出したの!?」
 「え? いえ……」
 「あ、そうなの……」
 「あの……12年前なら私は2歳で、普通は覚えていないものではないでしょうか」

 覚えているのが普通で、メルティがさも忘れていて思い出したのかという問いかけだったのが不思議でメルティは言った。

 「そうね。ただ兄と言ったものだから」
 「それは、毎回見る夢があるんです。泣き叫ぶ私に優しく話しかけるご夫妻と4、5歳の男の子の夢。養女だと聞いた時に、夢の中の人が両親かなと思って。それならその男の子は、兄かもしれないなって」
 「まあ。きっとあの日の事を覚えていたのね。あの日あなたは、行かないでと泣きじゃくっていたとアールは言っていたわ」

 目を潤ませラボランジュ公爵夫人は、言う。

 「え? アール? 執事長の?」
 「えぇ。彼もまたあなたを見守っていた一人よ。彼は、今のレドゼンツ伯爵では解雇できない契約になっているの」
 「そうだったのですね。色々と助けて頂きました」

 うんうんとラボランジュ公爵夫人は、頷く。

 「それで12年前の出来事だけど、あなたはレドゼンツ伯爵家で唯一生き残った人物なのよ」

 ラボランジュ公爵夫人は、12年前の出来事を詳しく語り出した。
 何とも悲運としか言いようがない、悲しい出来事を――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...