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41話
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「予言がどのように見えるのか僕はわからないが、不思議だと思う事があの時に起きたのです。まず、一番驚いたのは、メルティ嬢がクラリサ嬢を止めた事です。あの時の状況をお話しますと、メルティ嬢は上半身は起こしていたものの、立ってはいなかったのです。そして、クラリサ嬢は予測していなかった行動を起こし、恥ずかしながら私は彼女を止めるという行動を起こせませんでした。だが、メルティ嬢は、彼女が池に向かう前に立ち上がった」
その言葉に、クラリサだけではなくメルティもごくりと唾をのむ。
(もう隠しても無駄ね。それに私が予言していないとなると、お姉様、いえクラリサ嬢が予言した事になる。もう彼女を聖女にする意味はないものね)
「勘がいいだけでしょう」
マクシムの言葉に、クラリサがそう言い放つ。
「勘ね。凄く勘がいいのですか、メルティ嬢は。あの時、ルイス殿下が声を掛ける前に振り向いたのです。僕もつられて振り向いた時に、ルイス殿下が声を掛けてきました」
「……ほんと、勘がいいわね」
負け惜しみの様にクラリサが言うが、それを無視してマクシムがメルティを見て問う。
「あの時、呟いたよね。緑の髪と。それから振り向いた。そこに緑の髪のルイス殿下が現れた」
それを聞いたルイス以外の者達が、目を見開く。勘が鋭いわけでも偶然でもなく、見えたのだと。あの時、ルイスがあの場所へ訪れるのをマクシムも知らなかったのだ。
「わ、私が言ってあったのよ。ルイス殿下は緑の髪だと!」
「そうですか。でも、それが何です? ルイス殿下を見て緑の髪と言ったわけではないのですが」
「そ、それは……」
クラリサは、悔しそうに俯いた。上手い言葉が見つからないのだ。
「この話を聞いたは私は、確信したのです。メルティ嬢が予言を見た聖女だと」
「なるほど。それでは聞こう。メルティ嬢、あの池でどのような予言を見たのだ」
陛下の言葉に、皆メルティに注目する。
「いつもは切り取ったような静止画が見えるのですが、あの時だけそうではありませんでした。緑の髪の者が現れると、クラリサ嬢が何かを叫び池に身を投げる映像が見えました」
「後出しだな。何とでも言える。その時だけ、特別な予言だっただと? 取ってつけたような事を言うな」
イヒニオが、メルティに向かって言う。それは、メルティをいつも叱る時の様な言い方だ。メルティは、反射的に縮こまる。
「こう聞いても、レドゼンツ伯爵は予言はクラリサ嬢が言っていたと、証言を変えないと言う事だな。今正直に言えば、偽証の件は目を瞑ろう。予言自体はしていたのだからな」
「……それは」
今ここで認めてしまえば、もう後がない。
メルティが予言したと確信はしているようだが、証拠はない。ルイスは、聖女であるメルティと婚約すると言った。聖女だと確定すると、彼女と婚約してしまう。
「申し訳ありませんでした! あれは偶然の事で予言ではないのです。言い出せずすみませんでした!」
「ど、どういう事だ」
とつぜん、深々と頭を下げたレドゼンツ伯爵に陛下が問う。
「確かにメルティに仕事に行かないでとせがまれました。その後、虫の知らせと言いますか、不安になって見てもらっただけなのです。メルティが具体的に言ったという事ではなかったのです。大袈裟になって言い出せなくなりました。お許し下さい」
「今更、何を言い出すんだ!」
イヒニオが証言を変えた事にルイスが抗議するも、イヒニオは頭を下げたままだ。
(あの時の事をなかった事にするなんて。そこまでして、私を聖女にしたくないの?)
「そうか。あくまでもメルティは聖女ではないと言い張るのだな」
「はい。クラリサも王城に行ってみたいが為に、自分が言った事にして王城に向かい、聖女にと言われ有頂天になってしまったのです。ほれ、クラリサ、お前も謝りなさい」
「……申し訳ありませんでした」
クラリサは、イヒニオに言われ仕方なさそうにして謝った。聖女に未練がある。そんな感じだ。
「そうか。一番最初の出来事も否定するか」
「も、申し訳ありません」
「私は、正直に言えば偽証は罪に問わないと言ったのだがな」
そういう陛下は、悲し気な表情だ。
イヒニオが言った事をメルティが否定したところで証拠がないのだ。これが認められれば、罪にも問われない。
後は、何とかメルティがルイスと婚約するのを止めるだけ。
「父上! あの証言を認めるおつもりですか?」
「そうだな。ルイスが言う事は、心証に過ぎないからな」
「父上!」
「落ち着きなさい。私は、一方の言葉だけを聞くわけにはいかない」
イヒニオは、心の中でニヤリとする。何とかなりそうだと。
その言葉に、クラリサだけではなくメルティもごくりと唾をのむ。
(もう隠しても無駄ね。それに私が予言していないとなると、お姉様、いえクラリサ嬢が予言した事になる。もう彼女を聖女にする意味はないものね)
「勘がいいだけでしょう」
マクシムの言葉に、クラリサがそう言い放つ。
「勘ね。凄く勘がいいのですか、メルティ嬢は。あの時、ルイス殿下が声を掛ける前に振り向いたのです。僕もつられて振り向いた時に、ルイス殿下が声を掛けてきました」
「……ほんと、勘がいいわね」
負け惜しみの様にクラリサが言うが、それを無視してマクシムがメルティを見て問う。
「あの時、呟いたよね。緑の髪と。それから振り向いた。そこに緑の髪のルイス殿下が現れた」
それを聞いたルイス以外の者達が、目を見開く。勘が鋭いわけでも偶然でもなく、見えたのだと。あの時、ルイスがあの場所へ訪れるのをマクシムも知らなかったのだ。
「わ、私が言ってあったのよ。ルイス殿下は緑の髪だと!」
「そうですか。でも、それが何です? ルイス殿下を見て緑の髪と言ったわけではないのですが」
「そ、それは……」
クラリサは、悔しそうに俯いた。上手い言葉が見つからないのだ。
「この話を聞いたは私は、確信したのです。メルティ嬢が予言を見た聖女だと」
「なるほど。それでは聞こう。メルティ嬢、あの池でどのような予言を見たのだ」
陛下の言葉に、皆メルティに注目する。
「いつもは切り取ったような静止画が見えるのですが、あの時だけそうではありませんでした。緑の髪の者が現れると、クラリサ嬢が何かを叫び池に身を投げる映像が見えました」
「後出しだな。何とでも言える。その時だけ、特別な予言だっただと? 取ってつけたような事を言うな」
イヒニオが、メルティに向かって言う。それは、メルティをいつも叱る時の様な言い方だ。メルティは、反射的に縮こまる。
「こう聞いても、レドゼンツ伯爵は予言はクラリサ嬢が言っていたと、証言を変えないと言う事だな。今正直に言えば、偽証の件は目を瞑ろう。予言自体はしていたのだからな」
「……それは」
今ここで認めてしまえば、もう後がない。
メルティが予言したと確信はしているようだが、証拠はない。ルイスは、聖女であるメルティと婚約すると言った。聖女だと確定すると、彼女と婚約してしまう。
「申し訳ありませんでした! あれは偶然の事で予言ではないのです。言い出せずすみませんでした!」
「ど、どういう事だ」
とつぜん、深々と頭を下げたレドゼンツ伯爵に陛下が問う。
「確かにメルティに仕事に行かないでとせがまれました。その後、虫の知らせと言いますか、不安になって見てもらっただけなのです。メルティが具体的に言ったという事ではなかったのです。大袈裟になって言い出せなくなりました。お許し下さい」
「今更、何を言い出すんだ!」
イヒニオが証言を変えた事にルイスが抗議するも、イヒニオは頭を下げたままだ。
(あの時の事をなかった事にするなんて。そこまでして、私を聖女にしたくないの?)
「そうか。あくまでもメルティは聖女ではないと言い張るのだな」
「はい。クラリサも王城に行ってみたいが為に、自分が言った事にして王城に向かい、聖女にと言われ有頂天になってしまったのです。ほれ、クラリサ、お前も謝りなさい」
「……申し訳ありませんでした」
クラリサは、イヒニオに言われ仕方なさそうにして謝った。聖女に未練がある。そんな感じだ。
「そうか。一番最初の出来事も否定するか」
「も、申し訳ありません」
「私は、正直に言えば偽証は罪に問わないと言ったのだがな」
そういう陛下は、悲し気な表情だ。
イヒニオが言った事をメルティが否定したところで証拠がないのだ。これが認められれば、罪にも問われない。
後は、何とかメルティがルイスと婚約するのを止めるだけ。
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