【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

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最終話

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 「大丈夫かい?」

 真に受けたメルティは、こくんと右隣に座るルイスの問いに頷いて答えた。

 (どうしよう。世間から見たら犯罪者の親族なのね)

「私は、このままルイス殿下と婚約して宜しいのでしょうか。言われるまで私、気づけなくて……」
 「何を言っているんだい? 良いに決まっている。そもそもダメなら婚約など成立していないよ」
 「そうよ。言ったでしょう。それなら私も同じと」

 案じる様にメルティの左隣に座りつつ、ラボランジュ公爵夫人が言う。

 「でも、ラボランジュ公爵夫人は、血が繋がっていないわけですし……」

 イヒニオとメルティと血縁者なのだ。ラボランジュ公爵夫人とは違う。

 「あのね、彼らは爵位も剥奪され刑に服す事になったけど、貴族ならこんな揉め事はしばしばある事よ」
 「え? しばしば?」

 驚いて顔を上げたメルティに、そうだとラボランジュ公爵夫人は優しい笑顔を作る。

 「今回の事は、契約不履行によるもので、殺人とかではないわ。しかもレドゼンツ家内の揉め事よ。彼が男爵位を剥奪されたのは、今回の契約不履行の賠償金を支払えないからよ。爵位を国で買い取り、借金の肩代わりをしたの」
 「そう言う事。刑罰で取り上げられたわけではない。とても残念な事だけど、あれぐらいでは普通爵位は取り上げる事は出来ない。その家系の揉め事だからね」

 メルティは、目を瞬く。凄い事だと思っていたが、そうでもないらしい。

 「たぶん、あれで犯罪者の親族だという事になるのなら、私はどの令嬢とも結婚できないよ」
 「まあ、大げさね。でも、それぐらい足の引っ張り合いは起こっているって事よ。これからは、あなたが伯爵の当主よ。それは、ルイス殿下と結婚した後もね」
 「はい。ありがとうございます」
 「任せなさい。小娘だと舐められないように、きっちりと教え込んでさしあげますわ」

 リンアールペ侯爵夫人が、自信満々に言い、みんながうんうんと頷いた。

 「では、落ち着いた所でこれを受け取ってくれるかな?」
 「え、これって……」

 カパッと開けた豪勢な箱の中には、エメラルドがちりばめられたブレスレットだ。

 「本来は、婚約時にはネックレスを送るのが恒例だけど、君の場合すでに立派なモノが胸元にあるからね。だからブレスレットにしたのだけど、受け取ってくれるだろうか」
 「はい。ありがとうございます」

 ルイスは、メルティの左手にブレスレットを嵌めた。

 「綺麗……」
 「よかったわね。メルティ。今回の事でもう、あなたに変な事を言う者はいないとは思うけど、用心はするのよ」
 「私の婚約者になったのですから、護衛は王家から派遣される。心配ないさ。来年には兄上も挙式を上げる。だから再来年にすぐに私達も……」
 「……はい」

 ポッとメルティは顔を赤らめる。

 「はぁ。僕達がいるのわかってる?」
 「わかってるさ。君も早く伴侶を見つけるといい」
 「あー、はいはい」

 ちょっとムッとして、マクシムは返す。
 こうして、少しいざこざはあったが無事に婚約式は終了した。
 その後メルティは、良き妻、良き当主になるべく、自分磨きに精を出す。

 ――そして、二年後。

 「おめでとう!!」

 あっという間の二年間だった。
 メルティとルイスは皆に祝われ、結婚式を執り行う。
 もう犯罪者などという視線を向ける者などいない。

 「あっという間でしたね、ルイス様」
 「私には、少し長かったけどね」
 「え?」
 「いや何でもない。私もレドゼンツ家の一員として、君を補佐し一緒に歩む事を誓うよ」
 「ありがとうございます。生涯宜しくお願いしますね」
 「あぁ」

 メルティを見て艶めいた赤い瞳が、アクアマリンの瞳をとらえた。見つめ合う二人の唇は重なり合う。
 ルイスがギュッと、メルティを抱きしめた。

 「私が居る限り、君に降りかかる火の粉は払うから安心してね」

 ふとメルティは、ラボランジュ公爵夫人の言葉を思い出す。

 『あの子は、少し重いかもしれないわねぇ。まあ愛されてるって思って受け止めてあげてちょうだい』

 何となく意味が分かった気がするメルティだった。

 「うふふ……」
 「何?」
 「ううん。何でもないわ」

 またふと思い出したのだ。
 今日見た予言の事を――。
 それは、彼の寝顔だ。
 メルティは、これからの事をドキドキしながらそして、ワクワクしながら彼に身を預ける。
 彼の寝顔を見れるのは、自分だけの特権だ。
 同じ事を彼も思っていた。

 「ラボランジュ公爵夫人の様な家庭を築きたいわ」
 「え!? 彼女をお手本にする気? 私はちょっと……」
 「ほんわかして良いと思うけど?」
 「ほんわかね。君にはそう見えるのか。私は、ずっとこのままの君でいてほしいのだけどね」

 そう言って、ルイスは額にキスを落とすのだった。
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