【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第一章 薬師になろうとしただけなのに……

第三話

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 「なんだよ? これでも母さんからは太鼓判を貰ってるんだ」
 「いや、そうじゃなくて。明日は王宮専属薬師の試験だ。合格すれば、そのまま王宮専属薬師の地位につく。年に四回行われている中で、滅茶苦茶難易度が高い試験だ……」
 「え!」

 それを聞いたティモシーも驚いた顔をする。

 「筆記試験はいつも通りだけど。明日の試験は、筆記試験の順位がいい者から陛下の前で技術試験を行うんだ。で、受かるのは数名。……だから、あの時一晩って言ったのか」

 ティモシーはオズマンドに嵌められたのだ。普通の試験の時ならば受かっただろう。だが、明日の試験は数えるほどしか受からない。毎年多くても五名ほどだった。

 「それって受かったら、ずっと王宮務め?」
 「まあ、そうなるな。だから明日は百名ほどしか受けにこないはずだ……。まあ、オズマンドさんの方が上手……」

 ダン! っとティモシーは、ぐうでテーブルを叩いた。

 「嵌められた! それじゃ受かっても母さんと一緒に仕事出来ないじゃないか!」
 「はぁ? そっち? おい、受かれば歓喜するほどの役職だぞ?」

 ランフレッドも驚いて大きな声を上げる。

 「一年ほど務めれば、村に戻れる思ったのに! どうしたら……」

 本気で悩んでいる姿を見てランフレッドは頭が痛かった。もし受かったとして、ずっとこの調子だと問題を起こしそうだと。

 「次の試験にしたいって言ったらOKしてくれると思う?」
 「知るか! でもオズマンドさんは、薬師にしたくないんだからチャンスはもうくれないだろうな。そんなに母親と離れるのが嫌なら、試験を受けずに帰ればいいだろう……」

 めんどくさいとばかりにランフレッドがそう言うと、仕方なさそうにティモシーは呟く。

 「一年務めて、何とか理由付けて戻るしかないか……」
 「お前、受かる気でいるのか? 言っておくが試験を受けに来る大半の者が薬師の資格を持った者だ! つまり経験を積んだ者が受けに来るんだぞ? その中の数名しか受からない。わかってるか?」

 ランフレッドの言葉に、ティモシーは真面目な顔つきで頷く。

 「勿論わかってるさ。父さんは受からないだろうと明日にした訳じゃなくて、受けないだろうと思ってしたんだと思う。ふん。父さんの思い通りになんてならない!」
 「お前、マジで受ける気かよ……」

 うんざりしてランフレッドが問う。

 「なんだよ……。その為に来たんだけど!」
 「一つ良い事を教えてやる。試験会場でそんな粗暴な態度とっていたら、なんぼ成績がよくたって受からない。なんせ王宮に務める者を選抜するんだからな。大体お前みたいな奴、薬師の試験を受けに来る者にいないから! そのままだと目立つ事この上なし! 受けても受かんねぇよ!」
 「何それ! 酷い!」

 ティモシーは、ランフレッドを睨み付けた。

 「酷くない! そんなに自信があるなら試験の日ぐらい大人しくしてろよ!」
 「大人しくって……。別に暴れる気はないけど?」

 ランフレッドは、ガシガシと頭をかく。

 「そうじゃなくて、その容姿自体目立つ。だからちょっとした態度でもギャップがありすぎるって言っているんだ。どうしても受けるって言うのなら、明日一日女のフリでもしていろ! 普段私って使っているんだろう?」

 ティモシーは、嫌そうな顔をする。

 「わかった。ご忠告通り、明日は気を付けるよ」

 ティモシーは、そう言って頷く。

 「まあ、頑張れ……」

 ランフレッドが一応そう声を掛けると、ティモシーはもう一度頷いた。

 (この人、見かけによらずお人好しだな。面倒ならほっとけばいいのに……)

 ティモシーは、お人好しで助かったと、冷めた紅茶を飲んだ。
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