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第一章 薬師になろうとしただけなのに……
第七話
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すべての実技が終わり、壇上のテーブルが撤去されると、グスターファスは立ち上がり前へ出た。
「今日は朝からご苦労である。皆、素晴らしかった!」
っと、グスターファスの話が始まると、皆固唾を飲んで聞き入る。これからこのまま、合格者が発表されるからだ。
もう既に落ちた者さえ、じっとグスターファスの言葉に耳を傾けていた。
「さて、素晴らしい者の中で、特に目を引いた者を紹介しよう……」
とうとう発表である。
「二十二番、ダグ・プリザンス!」
「はい!」
呼ばれたダグは、大きな声で返事をし立ち上がり、監査官に誘導され壇上に向かう。そして、当然だという顔つきで、堂々と壇上に上がった。
(っち。受かったか……)
ティモシーは、受かるだろうとは思っていたが、面白くなかった。彼が首位なのは実力ではなく、魔力を使った不正だからである。
「十七番、アリック・ガイトル!」
「はい!」
次に呼ばれたアリックも静かに立ち上がり、壇上に向かう。ダグとは違いその背中には安堵した様子が伺えた。
(うそ……彼?)
次に呼ばれるのは自分だとティモシーは思っていた。それほど自信があったのである。しかしその自信は実力からと言うよりは、母親から『あなたなら一番通過確実ね!』という、太鼓判があったからである。
村には、村で唯一の医者の母親しか薬師はおらず、他の者と比べた事などなかった。だが先ほど実技をやってみて、二人に劣っているとは思っていなかったので、母親の言う通りだと思っていたのである。
(もしかして落ちた……?)
急に不安になる。ティモシー自身が、二人に勝っていると思ったところで、判断するのは試験を開催する側だ。
手の平が、じっとりと濡れてくる。今まで自信満々だったが、今は不安の方が勝っていた。
既にカードの色で悩んでいた事など、頭の片隅にもない。
「九十八番、ティモシー・カータレット!」
(呼ばれた!)
ガタンとティモシーは、反射的に立ち上がった。
「返事をお願いします」
近づいた監査官が、いつまでも返事をしないのでそう耳打ちしてきた。
「え? あ、はい……」
安堵感からかティモシーは、頭が真っ白になっていた。言われるままに返事をするも声は小さい。
監査官はこちらですと、ティモシーの前を歩き先導する。それにフラフラとついていくティモシーに皆釘付けだ。最年少だと思われる美少女だったからだ。実際は少年なのだが……。
いつもならムッとするところだが、今のティモシーにはそんな事はどうでもよかった。無事に合格出来てよかったという思いでいっぱいだったのである。
上には上がいるという事を知った瞬間でもあった。
壇上の前にくると、アリックの横に並ぶように監察官に言われ、ティモシーは一人で壇上に上がる。
ティモシーが、アリックの横に並ぶのを確認したグスターファスは、うむっと頷いて口を開く。
「以上の者を我が王宮専属薬師とする!」
(え? 三人だけ……)
三人に皆の拍手が贈られた。
ランフレッドの言う通り、狭き門だったのである。
ティモシーがランフレッドをチラッと見ると、彼はニッコリと微笑んで返してきた。
「ではこれから、認定式に移ります」
オーギュストがそう進行すると、彼はグスターファスに小さな木箱を手渡す。それを持って、グスターファスはダグの前に立つ。
「ダグ・プリザンス。あなたを王宮専属薬師に任命します。今までで一番素晴らしいモノだった!」
一言添えてグスターファスは、ダグに木箱を手渡した。
「ありがとうございます。精一杯務めさせて頂きます」
ダグはそう言って、礼をしながら木箱を受け取った。
グスターファスは、次にアリックの前に立った。
「アリック・ガイトル。あなたを王宮専属薬師に任命します。基本に忠実でよく出来ていた!」
先ほどと同じく一言添えると木箱を手渡す。
「ありがとうございます。誇りを持って務めます」
アリックも礼をしながら木箱を受け取る。
そして、グスターファスは、ティモシーの前に立った。
目の前の彼を見たティモシーは、今回初めて緊張し、ごくりと生唾を飲み込む。
「ティモシー・カータレット。あなたを王宮専属薬師に任命します。この私も驚きである。その年齢でその技術! 将来が楽しみである」
ティモシーは、グスターファスから木箱を受け取る。
「ありがとうございます。今の気持ちを忘れず、仕事に務めます!」
ティモシーの返答に、グスターファスはうむと頷いた。
三人が試験を受けにきた者達を振り向くと、また拍手が贈られた。
「皆には、王宮専属薬師を目指すだけではなく、薬師として人々を助けてほしい。今の時代、魔術による治療は見込めない。皆の力が必要なのである」
グスターファスの発言が終わると、オーギュストが皆に宣言する。
「これにて、試験及び認定式を終了します。皆さまお疲れ様でした」
グスターファス達はその宣言で、壇上から退場していく。ティモシー達三人も壇上から降り、部屋に案内された。
「今日は朝からご苦労である。皆、素晴らしかった!」
っと、グスターファスの話が始まると、皆固唾を飲んで聞き入る。これからこのまま、合格者が発表されるからだ。
もう既に落ちた者さえ、じっとグスターファスの言葉に耳を傾けていた。
「さて、素晴らしい者の中で、特に目を引いた者を紹介しよう……」
とうとう発表である。
「二十二番、ダグ・プリザンス!」
「はい!」
呼ばれたダグは、大きな声で返事をし立ち上がり、監査官に誘導され壇上に向かう。そして、当然だという顔つきで、堂々と壇上に上がった。
(っち。受かったか……)
ティモシーは、受かるだろうとは思っていたが、面白くなかった。彼が首位なのは実力ではなく、魔力を使った不正だからである。
「十七番、アリック・ガイトル!」
「はい!」
次に呼ばれたアリックも静かに立ち上がり、壇上に向かう。ダグとは違いその背中には安堵した様子が伺えた。
(うそ……彼?)
次に呼ばれるのは自分だとティモシーは思っていた。それほど自信があったのである。しかしその自信は実力からと言うよりは、母親から『あなたなら一番通過確実ね!』という、太鼓判があったからである。
村には、村で唯一の医者の母親しか薬師はおらず、他の者と比べた事などなかった。だが先ほど実技をやってみて、二人に劣っているとは思っていなかったので、母親の言う通りだと思っていたのである。
(もしかして落ちた……?)
急に不安になる。ティモシー自身が、二人に勝っていると思ったところで、判断するのは試験を開催する側だ。
手の平が、じっとりと濡れてくる。今まで自信満々だったが、今は不安の方が勝っていた。
既にカードの色で悩んでいた事など、頭の片隅にもない。
「九十八番、ティモシー・カータレット!」
(呼ばれた!)
ガタンとティモシーは、反射的に立ち上がった。
「返事をお願いします」
近づいた監査官が、いつまでも返事をしないのでそう耳打ちしてきた。
「え? あ、はい……」
安堵感からかティモシーは、頭が真っ白になっていた。言われるままに返事をするも声は小さい。
監査官はこちらですと、ティモシーの前を歩き先導する。それにフラフラとついていくティモシーに皆釘付けだ。最年少だと思われる美少女だったからだ。実際は少年なのだが……。
いつもならムッとするところだが、今のティモシーにはそんな事はどうでもよかった。無事に合格出来てよかったという思いでいっぱいだったのである。
上には上がいるという事を知った瞬間でもあった。
壇上の前にくると、アリックの横に並ぶように監察官に言われ、ティモシーは一人で壇上に上がる。
ティモシーが、アリックの横に並ぶのを確認したグスターファスは、うむっと頷いて口を開く。
「以上の者を我が王宮専属薬師とする!」
(え? 三人だけ……)
三人に皆の拍手が贈られた。
ランフレッドの言う通り、狭き門だったのである。
ティモシーがランフレッドをチラッと見ると、彼はニッコリと微笑んで返してきた。
「ではこれから、認定式に移ります」
オーギュストがそう進行すると、彼はグスターファスに小さな木箱を手渡す。それを持って、グスターファスはダグの前に立つ。
「ダグ・プリザンス。あなたを王宮専属薬師に任命します。今までで一番素晴らしいモノだった!」
一言添えてグスターファスは、ダグに木箱を手渡した。
「ありがとうございます。精一杯務めさせて頂きます」
ダグはそう言って、礼をしながら木箱を受け取った。
グスターファスは、次にアリックの前に立った。
「アリック・ガイトル。あなたを王宮専属薬師に任命します。基本に忠実でよく出来ていた!」
先ほどと同じく一言添えると木箱を手渡す。
「ありがとうございます。誇りを持って務めます」
アリックも礼をしながら木箱を受け取る。
そして、グスターファスは、ティモシーの前に立った。
目の前の彼を見たティモシーは、今回初めて緊張し、ごくりと生唾を飲み込む。
「ティモシー・カータレット。あなたを王宮専属薬師に任命します。この私も驚きである。その年齢でその技術! 将来が楽しみである」
ティモシーは、グスターファスから木箱を受け取る。
「ありがとうございます。今の気持ちを忘れず、仕事に務めます!」
ティモシーの返答に、グスターファスはうむと頷いた。
三人が試験を受けにきた者達を振り向くと、また拍手が贈られた。
「皆には、王宮専属薬師を目指すだけではなく、薬師として人々を助けてほしい。今の時代、魔術による治療は見込めない。皆の力が必要なのである」
グスターファスの発言が終わると、オーギュストが皆に宣言する。
「これにて、試験及び認定式を終了します。皆さまお疲れ様でした」
グスターファス達はその宣言で、壇上から退場していく。ティモシー達三人も壇上から降り、部屋に案内された。
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