【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
20 / 192
第二章 仕事が始まったばかりなのに……

第二十話

しおりを挟む
 「アリックじゃなくて、君の方が来るなんてな。今日はべっぴんさんも一緒とはついてるなぁ」

 ベネットは青ざめる。
 彼らはここで待ち伏せしていたのだ。つまり本気で復讐をするつもりに違いない。

 「どうしてここに配達があると……」

 ベネットが驚いて聞くと、男はニヤッとする。

 「別に王宮の薬師に聞かなくなって、届け先の奴らに聞けばいいだけだろう?」

 男たちは、相手を脅し聞きだしたのだろう。もしかしたら、ここにアリックが来るかもしれないと待ち伏せしていた。まさかそこまでするとは思わなかったベネットは焦る。

 「ティモシー、研究所まで走るわよ!」

 ティモシーは頷く。
 道を戻って交差する道に出る方が研究所に行くより近い。だが、必ず人に出会えるかわからない。それにそちら側の道には、声を掛けて来た緑色の髪の男が道を塞いでいる。

 「おっと、逃がさないぜ」

 走り出した二人の前に、紺色の髪の男が出て来て道を塞ぐ。

 (やっぱり昨日、のしっておくんだった!)

 ティモシーは、目の前を塞ぐ男を睨み付けた。

 「可愛い顔で睨んでも怖くないさ。それより昨日はよくも人前で恥をかかせてくれたな!」
 「今日は俺達の番だ!」

 男たちは恐怖を煽るように、一歩ずつ近づいてくる。

 「ティモシー、荷物を私に。いい? 全速力で走って研究所に逃げ込んで、助けを呼んできて」

 ベネットは、ティモシーの耳元で囁いた。それに頷くと、ティモシーはベネットに荷物を預ける。
 そして走り出した。だが、ベネットの言う通りにする気はなかった。
 どうせ捕まえようとしてくるのだから、暴れるフリをして倒そうと思ったのである。
 予想通り男はティモシーを捕まえようと追いかけて来た。ティモシーは、それにワザと捕まる。

 「離せ!」
 「おとなしくし……」

 ワザと暴れて見せ、ガツンと急所を蹴り上げる!
 ウッと言って、男はうずくまった。

 「ベネットさん、早くこっちに……」

 そう言って振り向くと、ベネットは男に捕まっていた。

 「ティモシー早く行って!」
 「おっと、大人しくしなって。おい、ティモシーこっちに来な。まあ、この女置いて行くっていうならそれでもいいけどな」

 よく見れば、男はナイフを持って首元に当てていた。

 (っち。二人共女だと思っている相手に刃物かよ! まあ、いいや。こいつものしってやる!)

 ティモシーは、怯えたフリをして二人に近づく。あまり上手ではないが、効果はあった。

 「ティモシーだめよ!」
 「よーしいい子だ。おっとそこで止まれ」

 あと少しで手が届く、いや蹴りが届く場所で止められる。何をするのかと見ているとポケットから縄を取り出した。

 「縄まで用意していたのかよ!」

 つい驚いてティモシーは叫んだ。男はニヤリとする。

 「両手を出せや、ティモシー」

 (手を縛る気かよ)

 ティモシーは仕方なく両手を突き出す。

 「ほら早く縛れ!」
 「で、出来ないわ……」
 「殺されたいのか!」

 拒否するベネットに男は叫び、胸元をナイフで切り裂く!

 「やめろ! ベネットさん、縛って!」

 ティモシーがそう言うと、震える手でベネットはティモシーの腕を縛る。

 「もっとちゃんと縛れ!」

 男に催促され仕方なく、しっかりと手首を縛った。

 「ったく、いてえぇな」

 後ろから声が聞こえてきた。
 男は痛みに耐えながらも起き上がり、三人に元へ進む。

 (っち。もう復活したのかよ。気を失わせておくんだった)

 当初の計画では、男が倒れた隙に二人で研究所に逃げ込むつもりだったティモシーは、男に二打目は入れていない。
 バシッ!
 紺色の髪の男に腕を掴まれ振り向かされたティモシーに、男は容赦なく平手打ちをした!

 「っつ……」
 「ティモシー!」

 ベネットが悲鳴を上げるような声で名を叫んだ。ティモシーは俯いたままだ。
 ティモシーは、ベネットが捕まっていて男が復活した以上、隙見て反撃するしかないと大人しくする事にした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。 ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

処理中です...