【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第七章 彼と彼女の復讐劇

第七十話

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 ティモシーは、ドアがノックされる音で目を覚ました。
 トントントン。
 まだ夜中で薄暗い部屋の中、ティモシーは上半身を起こし、ベットから立ち上がった。

 (こんな時間に誰だよ。ランフレッドか?)

 そう思ってふと、歩みを止めた。そして、周りを見渡す。
 薄暗いが自分の部屋だとわかった。

 (え? どうして?)

 王宮の部屋に泊まっていたはず。ランフレッドも一緒だ。どういう事だろうと考え込んでいると、ドアがまたノックされた。

 「誰だ!」

 ティモシーがドアに向かって叫ぶも返事はない。その代わりまた、ドアがノックされた。
 心臓がドキドキと静かな部屋に大きく響いているように感じる。

 (これ、夢なんだよな?)

 そうでなければ、自分がここにいるはずがないと思いティモシーは自問した。
 トントントン。
 開けるまで辞める気がないのか、またノックの音が聞こえ、開けてはダメだと思いながらもティモシーはドアを開けた。
 ティモシーは息を飲み固まる。目の前にはエイブがいた。それを確認した途端、周りが闇に包まれる。

 「こんばんは」

 エイブはニッコリとあいさつを交わして来た。

 (これ、夢なんだよな……)

 二度目の問い。夢でなければあり得ない。真っ暗な中に二人は向き合いポツンといた。

 「やってみるもんだね。リンクできたよ。ほんと君は警戒心がないね?」

 ティモシーは、エイブの言葉に、これは本当に夢なのだろうかと疑問に思う。

 「驚いたよ。君、魔術師だよね? もっと思慮深くペンダントを見ておけば、あの時気づけたんだろうね? まあ、どちらにしても俺は逃げきれなかったと思うけど……」

 レオナールに色々聞かされたからこんな夢を見ているのだろうかと、ただただエイブの声を聞いていた。

 「ブラッドリーさんって何者? あの後何か聞いた? それより君、どこにいたの? 今日、ずっと結界の中にいたよね? この体だから気づけたよ。そのペンダントのお蔭でコンタクトしづらいし、それで結界に入ると君の気配が消えちゃったからね」
 「な、何を言っているかわからない……」

 夢のはずなのに、リアリティーがあった。それでつい返してしまった。

 「少しは興味を持ったみたいだね? 知りたい? 教えてあげるよ。俺は今、精神で話しているんだよ。そこに俺の魔力が刻まれているからね。刻めてよかったよ。お蔭で君と繋がりを持てた」

 ニッコリ微笑み、エイブはティモシーの左胸を指さした。ティモシーは、驚きで目を見開き、一歩下がろうとした。だが体が動かない。

 「な、なんで? なんで魔術が使えるんだ……」
 「魔術? 動けないのは俺のせいじゃないと思うよ? でもまあ、こうやって話せるのには訳があるけどね。ここでは種明かしは出来ないから、知りたいのなら俺についてくればいい。一緒に行く?」
 「行かない!」

 ティモシーは、行きたくないと首すら横に振れなかった。

 「どうして? 怖い? そう言えば君、怖がりだったね」
 「これ、どういう事? 夢じゃないのか?」

 エイブは、はぁっとため息をつく。

 「さっき言ったよね? 精神で話しているって。俺はずっと寝た状態だから、一日中こうやって自由に動けるんだよね。っと言っても何も出来ないけどね。まあ、こうやって話をするぐらいさ。君優しいから、相手してくれるよね?」
 「は、話す事なんてない!」
 「そう。じゃ聞いてくれるだけでいいや」

 ティモシーは逃げ出したいのに動けない。聞きたくないのに聞こえてしまう。もう、どうしたらいいかわからなかった。

 「ところで……」
 『……モシー』

 (今、エイブさん以外の声が聞こえた?)

 ティモシーはキョロキョロを辺りを見渡した。自分で気づいてはいないが、動けていた。

 『ティモシー……』
 「っち。仕方ない。また会いに来るよ」
 「え?!」

 エイブの姿が目の前から消えた――。
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