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第九章 追われる者
第九十四話
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ミュアンの顔は青ざめていた。
「ハルフォード国ですって……」
「危害を加えるつもりはありません。ただ夢の話をお伺いに来ただけです」
警戒するミュアンに、レオナールはそう語り掛ける。
ミュアンは、ティモシーを見た。
「ごめんなさい。実は、レオナール王子にはバレてしまっていて……」
ティモシーは俯いて言った。
ミュアンは、一つため息をつくと、結界の中に足を踏み入れる。それに、ティモシーも続く。
「信用して頂きありがとうございます」
「別に信用したわけではありません」
ミュアンにそう返され、レオナールも少し困り顔だ。
「そうですか。やはり魔術師は信用して頂けませんか」
その言葉にミュアンは、レオナールを睨み付けた。
「彼に与えたそのペンダントは、魔術師から魔術師だと隠す為のものですよね? レジストの付与を付け誤魔化してはおりますが、逆に見抜かれれば魔術を使わずとも暴かれると思わなかったのですか?」
その問いにミュアンは、目を丸くする。
「まさか……」
「えぇ。そうです。私はそのペンダントで彼が魔術師だと気づきました」
「結構、自信があったのですが……」
ティモシーは、二人の会話に驚いた。
確かに魔術師だと隠す為だとミュアンから貰ったものだが、その対象が魔術師だとは思っていなかったのである。
「え? どういう事? 母さん」
「………」
ミュアンは、ティモシーの問いに答えない。
「ティモシー、あなたの父親は、あなた方が魔術師だとご存知ですか?」
ティモシーは、知らないと首を横に振った。
「この話はもういいでしょう! 夢の話をしましょう」
「そうですね」
ミュアンが強い口調でいうと、レオナールは頷き、今の話は一旦置いておく事にしたようだ。
「エイブという男がティモシーに近づいていました。知っている人ですか?」
ミュアンから切り出した。
「えぇ、王宮に入り込んでいた魔術師です。彼とはどのようなお話をなさったのでしょうか?」
レオナールの問いにミュアンは、そう言えばという表情を一瞬浮かべる。
「彼にもティモシーが魔術師だとバレているようです。ペンダントを造った方と言われました。あなたの言う通りですね……」
「気づかれてしまいましたか。それで接触をしてきたのでしょうか? ところで、あなたも同じ様にティモシーに接触をなさっておりましたがどのような魔術でしょうか? 出来ればお教え願いたいのですが」
ミュアンは首を横ふる。
「あれは魔術ではありません。ですが、あのエイブと言った者は何かしら教わって行っているのでしょう」
「と、申しますと?」
「あれは魔術ではなく、精神を体から切り離し、意識のみで行動するのです。一応ペンダントに見つけづらいように施していたのですが、あまり効果はなかったようですね」
魔術師でなくても行えるものだが、誰にでも出来る事ではない。もっと言えば、魔術師だとしても出来ない者には出来ない。
ジッと俯くミュアンをティモシーは見つめた。
ティモシーでも今の話を聞けばわかる。ミュアンがそれを扱う者達から身を隠していたことが……。でも、知れてしまったかもしれない。
「あなたはどこの出身なのでしょうか?」
「それはお答え出来ません」
「では、チミキナスナという、言葉に聞き覚えはありますか?」
「え?」
ミュアンの表情は知っていると語っていた。
「エイブが所属していると思われる魔術師の組織の名前なのですが……。ご存知のようですね」
レオナールがそう言うと、ミュアンはティモシーに振り返った。
「ティモシー、一緒にここを出ましょう!」
「出てどうするおつもりです? そのペンダントを持ってしても防げなかった。逃げられはしないでしょう」
ミュアンは、キッとレオナールを睨み付ける。
「わかっています! でも、ここにいたら守ってあげられないのです!」
「では、私が守って差し上げます。彼とすでにそういう約束をしております。いかがですか?」
ミュアンは少し考えあぐんでから頷いた。
「そうですね。息子の事をお願いします」
「あなたもご一緒にどうですか?」
「私は……明日一度、村に戻ります。後の事はそれから考えます」
ミュアンは、レオナールに頭を下げた。
「母さん……」
不安げなティモシーに、大丈夫とミュアンは頷く。
「いい? 彼にはもう会ってはダメよ。語り掛けられても」
ティモシーは頷くも、どうやったら拒否できるかわからなかった。
「ハルフォード国ですって……」
「危害を加えるつもりはありません。ただ夢の話をお伺いに来ただけです」
警戒するミュアンに、レオナールはそう語り掛ける。
ミュアンは、ティモシーを見た。
「ごめんなさい。実は、レオナール王子にはバレてしまっていて……」
ティモシーは俯いて言った。
ミュアンは、一つため息をつくと、結界の中に足を踏み入れる。それに、ティモシーも続く。
「信用して頂きありがとうございます」
「別に信用したわけではありません」
ミュアンにそう返され、レオナールも少し困り顔だ。
「そうですか。やはり魔術師は信用して頂けませんか」
その言葉にミュアンは、レオナールを睨み付けた。
「彼に与えたそのペンダントは、魔術師から魔術師だと隠す為のものですよね? レジストの付与を付け誤魔化してはおりますが、逆に見抜かれれば魔術を使わずとも暴かれると思わなかったのですか?」
その問いにミュアンは、目を丸くする。
「まさか……」
「えぇ。そうです。私はそのペンダントで彼が魔術師だと気づきました」
「結構、自信があったのですが……」
ティモシーは、二人の会話に驚いた。
確かに魔術師だと隠す為だとミュアンから貰ったものだが、その対象が魔術師だとは思っていなかったのである。
「え? どういう事? 母さん」
「………」
ミュアンは、ティモシーの問いに答えない。
「ティモシー、あなたの父親は、あなた方が魔術師だとご存知ですか?」
ティモシーは、知らないと首を横に振った。
「この話はもういいでしょう! 夢の話をしましょう」
「そうですね」
ミュアンが強い口調でいうと、レオナールは頷き、今の話は一旦置いておく事にしたようだ。
「エイブという男がティモシーに近づいていました。知っている人ですか?」
ミュアンから切り出した。
「えぇ、王宮に入り込んでいた魔術師です。彼とはどのようなお話をなさったのでしょうか?」
レオナールの問いにミュアンは、そう言えばという表情を一瞬浮かべる。
「彼にもティモシーが魔術師だとバレているようです。ペンダントを造った方と言われました。あなたの言う通りですね……」
「気づかれてしまいましたか。それで接触をしてきたのでしょうか? ところで、あなたも同じ様にティモシーに接触をなさっておりましたがどのような魔術でしょうか? 出来ればお教え願いたいのですが」
ミュアンは首を横ふる。
「あれは魔術ではありません。ですが、あのエイブと言った者は何かしら教わって行っているのでしょう」
「と、申しますと?」
「あれは魔術ではなく、精神を体から切り離し、意識のみで行動するのです。一応ペンダントに見つけづらいように施していたのですが、あまり効果はなかったようですね」
魔術師でなくても行えるものだが、誰にでも出来る事ではない。もっと言えば、魔術師だとしても出来ない者には出来ない。
ジッと俯くミュアンをティモシーは見つめた。
ティモシーでも今の話を聞けばわかる。ミュアンがそれを扱う者達から身を隠していたことが……。でも、知れてしまったかもしれない。
「あなたはどこの出身なのでしょうか?」
「それはお答え出来ません」
「では、チミキナスナという、言葉に聞き覚えはありますか?」
「え?」
ミュアンの表情は知っていると語っていた。
「エイブが所属していると思われる魔術師の組織の名前なのですが……。ご存知のようですね」
レオナールがそう言うと、ミュアンはティモシーに振り返った。
「ティモシー、一緒にここを出ましょう!」
「出てどうするおつもりです? そのペンダントを持ってしても防げなかった。逃げられはしないでしょう」
ミュアンは、キッとレオナールを睨み付ける。
「わかっています! でも、ここにいたら守ってあげられないのです!」
「では、私が守って差し上げます。彼とすでにそういう約束をしております。いかがですか?」
ミュアンは少し考えあぐんでから頷いた。
「そうですね。息子の事をお願いします」
「あなたもご一緒にどうですか?」
「私は……明日一度、村に戻ります。後の事はそれから考えます」
ミュアンは、レオナールに頭を下げた。
「母さん……」
不安げなティモシーに、大丈夫とミュアンは頷く。
「いい? 彼にはもう会ってはダメよ。語り掛けられても」
ティモシーは頷くも、どうやったら拒否できるかわからなかった。
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