96 / 192
第九章 追われる者
第九十六話
しおりを挟む
次の日ティモシーは、どんよりとしていた。周りもよくわかるほど元気がない。
ダグは、昨日レオナールに何か言われたのは確かだろうと思っていた。
午後、ティモシーとダグは一緒に配達に行くことになり、二人は正門で護衛の兵士を待っていた。
「なあ、レオナール王子に何か言われたのか?」
「え? なんで?」
「なんでってお前、いかにも何かありましたって感じだけど」
やっぱりバレていたかと、ティモシーは溜息をつく。聞かれた所で話せない。
「いや、無理に話せとは言わないけど、ため込むなよ」
「ありがとう」
ティモシーは頷いて言った。
「ダグ! よかったまだ居たか。話し合いをする事になった。あなたもレオナール様が参加するようにとの事だ」
「え? 俺? でもティモシーが一人になるけど……」
「大丈夫。護衛いるし、場所わかるから」
「わかった。絶対一人で行くなよ。護衛来るの待てよ!」
「わかってるって」
ダグは、ブラッドリーと一緒に王宮内に入って行った。
ティモシーは、ダグを見送ると街に視線を戻す。
少し高い所に王宮は建っている。綺麗な街並みが一望できた。
「ティモシー……さんですか?」
呼ばれティモシーは振り向いた。兵士かと思ったが、声が女性だったので誰だろうと振り返るが、見知らぬ薬師だった。
「私は、イリス。彼の代わりに来ました」
こげ茶色の長い髪を後ろで結っている二十代の女性がニッコリと微笑んだ。だが、目は笑ってはいない。
またエイブがらみだろうかとティモシーは警戒する。
「ダグさんの代わりですか?」
「えぇ。そうよ」
「待たせたな」
彼女の声に被るように、男の声が聞こえ見ると、イリスの後ろにホルファンスが立っていた。
「え! もしかして護衛?」
「そうだ。もう行けるのか?」
「えぇ。準備は整っております」
ティモシーの代わりにイリスが答えた。
「じゃ、行くぞ」
「……うん」
三人は歩き出す。届け先は森の泉研究所だ。黙々と歩き雑談などない。
しかも、ティモシーの少し後ろを歩くイリスの視線が振り向かずともわかるほどだ。
(本当にこの人、交代の人だったんだろうか?)
護衛がいる前で下手な事はしないだろうと思うも、ここは王宮の外である。不意をついて何か仕掛けてくるかもしれない。ティモシーでも女性には、反撃しづらい。出来れば、何も起こらずにと願っていた。
そして無事に荷物を送り届ける事はできた。後は帰るだけだ。
「ティモシーちょっと、二人だけでお話がしたいのですが……」
森の泉研究所から出て少し経った頃、イリスは声を掛けて来た。
その場所は以前、男たちに襲われた場所で人気がない通りだ。
「戻ってからで……」
「いいえ。ここで」
ティモシーが振り向いて言うも強い意思で拒否された。
「二人で話をします。あなたは下がっていて下さい」
「え? いやでも……」
イリスがホルフォンスに離れるように言うも彼は戸惑う。
「私が誰かわかりませんか? 本当の名はイリステーナ。これでおわかりになりますでしょう」
名に聞き覚えがあったのか、ホルファンスは一瞬驚いた顔をした。そして、バッと頭を下げた。
ティモシーがその行動に驚いていると彼は、イリステーナに言われた通り二人から離れる。
「え? 一体あなたは……」
「あら? レオナール様から聞いてない? では、こう言えばわかるかしら。ヴィルターヌ帝国皇女と」
(皇女! って、王女の事だろう? え? ヴィルターヌ帝国からの使者ってこの人!?)
ティモシーは驚いて固まった。
何故そんな人物が自分に近づいたのかわからなかった。
ダグは、昨日レオナールに何か言われたのは確かだろうと思っていた。
午後、ティモシーとダグは一緒に配達に行くことになり、二人は正門で護衛の兵士を待っていた。
「なあ、レオナール王子に何か言われたのか?」
「え? なんで?」
「なんでってお前、いかにも何かありましたって感じだけど」
やっぱりバレていたかと、ティモシーは溜息をつく。聞かれた所で話せない。
「いや、無理に話せとは言わないけど、ため込むなよ」
「ありがとう」
ティモシーは頷いて言った。
「ダグ! よかったまだ居たか。話し合いをする事になった。あなたもレオナール様が参加するようにとの事だ」
「え? 俺? でもティモシーが一人になるけど……」
「大丈夫。護衛いるし、場所わかるから」
「わかった。絶対一人で行くなよ。護衛来るの待てよ!」
「わかってるって」
ダグは、ブラッドリーと一緒に王宮内に入って行った。
ティモシーは、ダグを見送ると街に視線を戻す。
少し高い所に王宮は建っている。綺麗な街並みが一望できた。
「ティモシー……さんですか?」
呼ばれティモシーは振り向いた。兵士かと思ったが、声が女性だったので誰だろうと振り返るが、見知らぬ薬師だった。
「私は、イリス。彼の代わりに来ました」
こげ茶色の長い髪を後ろで結っている二十代の女性がニッコリと微笑んだ。だが、目は笑ってはいない。
またエイブがらみだろうかとティモシーは警戒する。
「ダグさんの代わりですか?」
「えぇ。そうよ」
「待たせたな」
彼女の声に被るように、男の声が聞こえ見ると、イリスの後ろにホルファンスが立っていた。
「え! もしかして護衛?」
「そうだ。もう行けるのか?」
「えぇ。準備は整っております」
ティモシーの代わりにイリスが答えた。
「じゃ、行くぞ」
「……うん」
三人は歩き出す。届け先は森の泉研究所だ。黙々と歩き雑談などない。
しかも、ティモシーの少し後ろを歩くイリスの視線が振り向かずともわかるほどだ。
(本当にこの人、交代の人だったんだろうか?)
護衛がいる前で下手な事はしないだろうと思うも、ここは王宮の外である。不意をついて何か仕掛けてくるかもしれない。ティモシーでも女性には、反撃しづらい。出来れば、何も起こらずにと願っていた。
そして無事に荷物を送り届ける事はできた。後は帰るだけだ。
「ティモシーちょっと、二人だけでお話がしたいのですが……」
森の泉研究所から出て少し経った頃、イリスは声を掛けて来た。
その場所は以前、男たちに襲われた場所で人気がない通りだ。
「戻ってからで……」
「いいえ。ここで」
ティモシーが振り向いて言うも強い意思で拒否された。
「二人で話をします。あなたは下がっていて下さい」
「え? いやでも……」
イリスがホルフォンスに離れるように言うも彼は戸惑う。
「私が誰かわかりませんか? 本当の名はイリステーナ。これでおわかりになりますでしょう」
名に聞き覚えがあったのか、ホルファンスは一瞬驚いた顔をした。そして、バッと頭を下げた。
ティモシーがその行動に驚いていると彼は、イリステーナに言われた通り二人から離れる。
「え? 一体あなたは……」
「あら? レオナール様から聞いてない? では、こう言えばわかるかしら。ヴィルターヌ帝国皇女と」
(皇女! って、王女の事だろう? え? ヴィルターヌ帝国からの使者ってこの人!?)
ティモシーは驚いて固まった。
何故そんな人物が自分に近づいたのかわからなかった。
3
あなたにおすすめの小説
荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!
まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。
ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。
異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました
まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。
ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。
変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。
その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。
恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。
1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる
まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。
そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。
追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件
言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」
──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。
だが彼は思った。
「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」
そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら……
気づけば村が巨大都市になっていた。
農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。
「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」
一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前!
慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが……
「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」
もはや世界最強の領主となったレオンは、
「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、
今日ものんびり温泉につかるのだった。
ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~
TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ!
東京五輪応援します!
色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる