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第十章 駆け引き
第百十話
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「ティモシーさん」
ティモシーは呼ばれ振り向く。勿論、相手はエイブだ。
「あ、エイブさん。……ごめんなさい」
「なんでいきりなり謝るの? もしかして何も情報手に入らなかった?」
ティモシーは頷く。
「だろうね」
「え?」
ティモシーが驚くと、エイブはニッコリ微笑む。
「大丈夫。想定内だよ。怪しい人物に情報を教える訳ないだろう?」
「俺……怪しい人物なのか?」
エイブは頷く。
「凄くね。夢で俺と接触しているとわかったら教えないでしょう。普通は」
それもそうかとティモシーは頷いた。話す気がなくとも、上手く引き出される可能性があるのだから。
「あ、そうだ。外に出たらトンマーゾさんがいて、相手を封印する石だと黒い石渡されたんだけど……」
「あぁ、あれ。最初から不思議な魔力がこもった鉱石みたい。それに魔法陣を刻んで刻印を掘ってあるんだ。後は魔力を練ると魔法陣が起動して、壊れると発動する仕組み。魔術師じゃない人は練れないから呪文で起動させるんだ」
そうだったのかとティモシーは頷いた。
「あ!」
「どうしたの?」
「いやえーと。呪文のメモを貰っていたけど見るの忘れていたなと思って。でも、ずっと周りに人がいたから見る機会なかったけど……」
「君らしいね」
エイブはクスッと笑う。
「それ使わない方がいいかもね。本当にトンマーゾさんが言ったような効果なのかはわからないからね」
ティモシーは頷く。どうせ逃げてもトンマーゾに殺されるだけだ。それならレオナールに捕まるほうがいいかもしれない。
「そうそう聞きたい事あるんだよね。イリスが俺と君がこうやって会っていた事をあの王子に話したんだよね? どこまで話していたかな?」
「えっと、俺の前では何も。夢で会っていたってバレて……」
「じゃ、君が王宮を逃げ出した理由は? それで王子に君が問い詰められたからなの?」
ティモシーは軽く頷くが俯いた。本当はあの場にいた全員にエイブと夢で会っていた事がバレている。どちらかというと、ランフレッドに問い詰められて逃げ出したのだ。
「まあ、いいや。じゃトンマーゾさんに言った話は作り話? 本当の話? イリスの案内……」
「え? あの場しのぎの嘘だけど……」
エイブは右手を顎に持っていき考え込む。
「あのさ、イリスと一緒に出掛けたのはどうして? 夢で彼女に会う前の話だよね。そこで俺は、君にその事実を聞いたんだし……」
ティモシーはまた俯いた。
「そこは教えてほしんだけど。組織の人間をおびき寄せるワナじゃなかった訳だよね? だとしたら何? 全然思いつかないんだけど?」
エイブは、ミュアンと会った時の夢からバレている事を知らない。話せばミュアンが組織に追われている人物だと教える事になる。彼を信じていない訳ではないが、もしもの事を考えると言えなかった。
「俺も知らない……。ダグさんの代わりに一緒に届けに行っただけで、俺は皇女だと知らずに行動していたから……」
「ふーん。そうなんだ。わかった」
ティモシーでもエイブが今の説明で納得していないのがわかった。
「さて、今日の所は帰るかな、イリスに見つかるかもしれないし」
ティモシーは、不安げな顔でエイブを見た。
「そんな顔しないの。大丈夫だから。トンマーゾさんだってわかっていて、命令してるんだから」
「え……」
ティモシーが驚くと、エイブはほほ笑んだ。
「俺達を試しているんだよ。ガセネタを掴ませるかどうかね。君は今まで通りにしていればいいから。ただ、周りでいつもと違う事があったら教えて! じゃ、また」
「うん……」
ティモシーが頷くと、エイブの姿はスッと消えた――。
ティモシーは呼ばれ振り向く。勿論、相手はエイブだ。
「あ、エイブさん。……ごめんなさい」
「なんでいきりなり謝るの? もしかして何も情報手に入らなかった?」
ティモシーは頷く。
「だろうね」
「え?」
ティモシーが驚くと、エイブはニッコリ微笑む。
「大丈夫。想定内だよ。怪しい人物に情報を教える訳ないだろう?」
「俺……怪しい人物なのか?」
エイブは頷く。
「凄くね。夢で俺と接触しているとわかったら教えないでしょう。普通は」
それもそうかとティモシーは頷いた。話す気がなくとも、上手く引き出される可能性があるのだから。
「あ、そうだ。外に出たらトンマーゾさんがいて、相手を封印する石だと黒い石渡されたんだけど……」
「あぁ、あれ。最初から不思議な魔力がこもった鉱石みたい。それに魔法陣を刻んで刻印を掘ってあるんだ。後は魔力を練ると魔法陣が起動して、壊れると発動する仕組み。魔術師じゃない人は練れないから呪文で起動させるんだ」
そうだったのかとティモシーは頷いた。
「あ!」
「どうしたの?」
「いやえーと。呪文のメモを貰っていたけど見るの忘れていたなと思って。でも、ずっと周りに人がいたから見る機会なかったけど……」
「君らしいね」
エイブはクスッと笑う。
「それ使わない方がいいかもね。本当にトンマーゾさんが言ったような効果なのかはわからないからね」
ティモシーは頷く。どうせ逃げてもトンマーゾに殺されるだけだ。それならレオナールに捕まるほうがいいかもしれない。
「そうそう聞きたい事あるんだよね。イリスが俺と君がこうやって会っていた事をあの王子に話したんだよね? どこまで話していたかな?」
「えっと、俺の前では何も。夢で会っていたってバレて……」
「じゃ、君が王宮を逃げ出した理由は? それで王子に君が問い詰められたからなの?」
ティモシーは軽く頷くが俯いた。本当はあの場にいた全員にエイブと夢で会っていた事がバレている。どちらかというと、ランフレッドに問い詰められて逃げ出したのだ。
「まあ、いいや。じゃトンマーゾさんに言った話は作り話? 本当の話? イリスの案内……」
「え? あの場しのぎの嘘だけど……」
エイブは右手を顎に持っていき考え込む。
「あのさ、イリスと一緒に出掛けたのはどうして? 夢で彼女に会う前の話だよね。そこで俺は、君にその事実を聞いたんだし……」
ティモシーはまた俯いた。
「そこは教えてほしんだけど。組織の人間をおびき寄せるワナじゃなかった訳だよね? だとしたら何? 全然思いつかないんだけど?」
エイブは、ミュアンと会った時の夢からバレている事を知らない。話せばミュアンが組織に追われている人物だと教える事になる。彼を信じていない訳ではないが、もしもの事を考えると言えなかった。
「俺も知らない……。ダグさんの代わりに一緒に届けに行っただけで、俺は皇女だと知らずに行動していたから……」
「ふーん。そうなんだ。わかった」
ティモシーでもエイブが今の説明で納得していないのがわかった。
「さて、今日の所は帰るかな、イリスに見つかるかもしれないし」
ティモシーは、不安げな顔でエイブを見た。
「そんな顔しないの。大丈夫だから。トンマーゾさんだってわかっていて、命令してるんだから」
「え……」
ティモシーが驚くと、エイブはほほ笑んだ。
「俺達を試しているんだよ。ガセネタを掴ませるかどうかね。君は今まで通りにしていればいいから。ただ、周りでいつもと違う事があったら教えて! じゃ、また」
「うん……」
ティモシーが頷くと、エイブの姿はスッと消えた――。
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