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第十一章 彼らの選択
第百十六話
しおりを挟む「え……」
ランフレッドは、立ったままティモシーをしばし見つめる。
「トンマーゾに胸に刻まれたのか!」
ランフレッドは、片膝を付きティモシーの前にかかんだ。
「違う。首の後ろに……。殺す事は出来ないけど、激痛を与える事は出来るって。本当は、胸に魔法陣の刻印を刻まれそうになったけど、エイブさんが止めてくれたんだ!」
「そうか。わかった……」
ランフレッドは、ギュッとティモシーを抱きしめる。ティモシーは彼の胸で泣いた。その彼の首の後ろを髪をかき上げ、首を見るもランフレッドには見えるはずもない。
「俺のせいだな。あそこでお前を追い詰めなければ……」
ランフレッドがこぼした言葉に、ティモシーは彼の胸の中で首を横に振った。
(全て俺のせいだ。逃げてばっかりだったから……)
「俺、レオナール王子を裏切ってばかりだな。もう、母さんを助けてもらえないかも……」
「お前の母親を? どういう事だ?」
「母さんは、魔術師の組織に追われてるみたいなんだ……」
「え……」
ランフレッドは、一番それに驚いた!
「なんで? いや、それ変だろう? 先日会った時は薬師になった事を二人共喜んでくれていただろう?」
「父さんは知らないんだ」
「じゃレオナール王子と一緒に出掛けた先って……」
ランフレッドもきっちり聞いていた。ティモシーをジッと見つめ問う。それにこくんと頷いて答えた。
「そうか。レオナール王子は全て知っていたのか。本当に秘密主義だよな、あの王子……」
ランフレッドは立ち上がった。
「兎に角、トンマーゾが戻る前にここを脱出しよう!」
そう言うと、ランフレッドは辺りをキョロキョロと見渡す。勿論何もない。
ティモシーも立ち上がった。
「ドアを壊すなら、俺、やってみるよ」
そう言ってティモシーは、ペンダントを外す。
「それ……」
ランフレッドはペンダントを見て呟く。
「これは、母さんが作ってくれたモノだったんだ。この前、これをくれた意図を知ったんだ。魔術師の組織から俺が魔術師だとバレない為の物だった。これね、付けていると魔術使えないんだ」
そう語りながらティモシーは背伸びをしつつ、ランフレッドの首にペンダントを掛けた。
「それと、これには眠りなどをレジストする付加ついているんだ。多分、それがなくても俺はレジストしちゃうんだと思う。だからわざわざペンダントにその効果を付けてそれを誤魔化した……」
「そうだったのか……」
ティモシーは、ランフレッドを見て頷くと、ドアに向かっていく。
(もう逃げない! 魔術師だとバラした事を母さんには謝ろう。そして、魔術師の組織から母さんを守る! いや、ランフレッドもエイブさんも守る!)
ティモシーは、そう決断した。もし、ミュアンが前に魔術師の組織の一員だったとしても絶対に守り切る。そう誓う。
「俺が魔術でドアを壊す! やった事がないから加減がわからないけど」
「おいおい。建物自体壊すなよ……」
ランフレッドは、そう言いつつティモシーに近づいた。
「いくよ!」
ドキドキと高まる胸の音と二人の息遣いだけが聞こえる。
ティモシーは右手を振った。
あの黒い石が抉った魔術をイメージして!
大きな音とともにドアは粉々だ! 勿論辺りに破片が飛び散る。ランフレッドも身構えるが破片は飛んでこなかった。二人の周りには、ティモシーが張った結界で守られていた。
「凄いな、お前……」
魔術を目の当たりにしてランフレッドは、正直な感想を述べた。
「よかった。壊れた……」
「ありがとう。ティモシー。じゃ、戻ろう!」
二人は、建物の外に出た。辺りは明るくなっていた。
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