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第十二章 たがう二人の王子
第百四十七話
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しかし相手の気が変わらないうちに聞いた方がいいだろうとレオナールは素直に質問をしようと口を開いた時だった。
「オレ……私が先に質問しても宜しいか?」
ピルッガそう聞いた。
「はい。何でしょうか?」
「魔術師だと名乗ったのは何故だ?」
「え?」
まさかそんな質問を今されると思っていなかったレオナールは驚いた。
「何をしようとしている?」
「いえ……。私はただ、魔術師達の逃げ場を作ろうとしただけです」
「では、魔術師をかき集めている訳ではないと?」
ピルッガは鋭い目つきでレオナールを見つめた。
レオナールは彼が言いたい事がわかった。魔術師を集め世界を牛耳ろうとしているのではないかと疑っていると。
しかし実際に逃げて来る者は、力ない者達がほとんどだった。脅威になるような魔術が使えなくとも、魔術が使えるだけで見つかればそこに居られなくなる者達だ。能力でいえば、レオナールよりずっと下の者達。
確かに魔術師ではない者達から見れば脅威だろう。だがレオナールは、文献で魔術師の国が他にもあるのを知っていた。世界を手中に収めるつもりなら、こっそり裏でやるだろう。それにヴィルターヌ帝国や魔術師の組織には、その者達がいくらいようが戦力にはならない。
「国は関係なく、私の独断でやっている事です……」
「はぁ?」
今度は、ピルッガが驚いて見せた。
「どのような経緯でそこに至ったのだ?」
モゼレスも驚いて質問をする。
「どのようなと言われましても……」
「突然思いついた訳でもあるまい。きっかけを聞いている」
そう問われレオナールは何がきっかけだったか考える。
「いやその前に個人で集めるのは無理だろう。居場所を提供しなくてはならい。それにお金だってかかるだろう?」
「それは協力者がおりまして……」
「協力者? どなたですか?」
レオナールの側でぼそっと呟いた。振り向けばブラッドリーも驚いた顔をしていた。
「そんな事に加担する者がいたのですか?」
レオナールはブラッドリーと目が合うもそらし俯いた。
「その協力者があなたにそれを提案したのではないか?」
モゼレスは訪ねる。
直接言われてはいない。するなら協力しようと言われた。だがきっかけが何だったか思い出せなかった。突然決意した訳ではなく、気が付くとそう言う話になっていた。
「何故そうなったんだろう……」
レオナールはぼぞっと呟いた。
あの時はここまでの事態になるとは思っていなかった。逆にその内認められると思っていたのである。でもそうはならなかった。
「あなたもその協力者も頭が悪すぎるな。善意でやったとしても悪意を持って来る者がいるかもしれないと言うのに……」
「ピルッガ!」
ふんとピルッガは鼻を鳴らす。
「それは……わかっております……」
「で、その話が本当なら魔術師の組織とは繋がりはないんだな?」
「え?」
「裏で手を組んでいるんじゃないかと言っている!」
「何を言って……」
裏で繋がっているかもしれないと思う相手に結界を張るのを許した事になる。普通ならあり得ない。結界と言いながら、どんな魔法陣を使われるかわからないからだ。
「ピルッガ!」
「上等手段だろう? 相手に協力するそぶりを見せ近づき懐に入る」
「そんな……」
レオナールは愕然とする。信用を得るどころか疑われていたのだ。今回はそこまで考えが及ばなかった。何せ知ったのは、偶然だった。イリステーナが助けを求めにきたからだ。
「すまないレオナール殿。気を悪くしないでほしい。ピルッガ失礼が過ぎるぞ!」
「ふん。俺は可能性を言ったまでだがな」
ピルッガはレオナールを疑っている様子だった。
「違います。私はエクランド国に頼まれ魔術師の組織の情報を集めていたのです! そこにイリステーナ皇女が助けを求めやってきました。だからこうして……」
「ほう。随分お人好しだな。だが、それはおかなしな話だな」
「おかしいとは?」
「エクランド国がハルフォード国の王子を拘束しているという噂を耳にしたのだが?」
「なんですって!」
ピルッガの言葉にレオナールとブラッドリーは驚く。
やっとレオナールは、ピルッガがここまで自分を疑っている理由がわかった。だが噂は見る人が見れば事実だった。
「オレ……私が先に質問しても宜しいか?」
ピルッガそう聞いた。
「はい。何でしょうか?」
「魔術師だと名乗ったのは何故だ?」
「え?」
まさかそんな質問を今されると思っていなかったレオナールは驚いた。
「何をしようとしている?」
「いえ……。私はただ、魔術師達の逃げ場を作ろうとしただけです」
「では、魔術師をかき集めている訳ではないと?」
ピルッガは鋭い目つきでレオナールを見つめた。
レオナールは彼が言いたい事がわかった。魔術師を集め世界を牛耳ろうとしているのではないかと疑っていると。
しかし実際に逃げて来る者は、力ない者達がほとんどだった。脅威になるような魔術が使えなくとも、魔術が使えるだけで見つかればそこに居られなくなる者達だ。能力でいえば、レオナールよりずっと下の者達。
確かに魔術師ではない者達から見れば脅威だろう。だがレオナールは、文献で魔術師の国が他にもあるのを知っていた。世界を手中に収めるつもりなら、こっそり裏でやるだろう。それにヴィルターヌ帝国や魔術師の組織には、その者達がいくらいようが戦力にはならない。
「国は関係なく、私の独断でやっている事です……」
「はぁ?」
今度は、ピルッガが驚いて見せた。
「どのような経緯でそこに至ったのだ?」
モゼレスも驚いて質問をする。
「どのようなと言われましても……」
「突然思いついた訳でもあるまい。きっかけを聞いている」
そう問われレオナールは何がきっかけだったか考える。
「いやその前に個人で集めるのは無理だろう。居場所を提供しなくてはならい。それにお金だってかかるだろう?」
「それは協力者がおりまして……」
「協力者? どなたですか?」
レオナールの側でぼそっと呟いた。振り向けばブラッドリーも驚いた顔をしていた。
「そんな事に加担する者がいたのですか?」
レオナールはブラッドリーと目が合うもそらし俯いた。
「その協力者があなたにそれを提案したのではないか?」
モゼレスは訪ねる。
直接言われてはいない。するなら協力しようと言われた。だがきっかけが何だったか思い出せなかった。突然決意した訳ではなく、気が付くとそう言う話になっていた。
「何故そうなったんだろう……」
レオナールはぼぞっと呟いた。
あの時はここまでの事態になるとは思っていなかった。逆にその内認められると思っていたのである。でもそうはならなかった。
「あなたもその協力者も頭が悪すぎるな。善意でやったとしても悪意を持って来る者がいるかもしれないと言うのに……」
「ピルッガ!」
ふんとピルッガは鼻を鳴らす。
「それは……わかっております……」
「で、その話が本当なら魔術師の組織とは繋がりはないんだな?」
「え?」
「裏で手を組んでいるんじゃないかと言っている!」
「何を言って……」
裏で繋がっているかもしれないと思う相手に結界を張るのを許した事になる。普通ならあり得ない。結界と言いながら、どんな魔法陣を使われるかわからないからだ。
「ピルッガ!」
「上等手段だろう? 相手に協力するそぶりを見せ近づき懐に入る」
「そんな……」
レオナールは愕然とする。信用を得るどころか疑われていたのだ。今回はそこまで考えが及ばなかった。何せ知ったのは、偶然だった。イリステーナが助けを求めにきたからだ。
「すまないレオナール殿。気を悪くしないでほしい。ピルッガ失礼が過ぎるぞ!」
「ふん。俺は可能性を言ったまでだがな」
ピルッガはレオナールを疑っている様子だった。
「違います。私はエクランド国に頼まれ魔術師の組織の情報を集めていたのです! そこにイリステーナ皇女が助けを求めやってきました。だからこうして……」
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「おかしいとは?」
「エクランド国がハルフォード国の王子を拘束しているという噂を耳にしたのだが?」
「なんですって!」
ピルッガの言葉にレオナールとブラッドリーは驚く。
やっとレオナールは、ピルッガがここまで自分を疑っている理由がわかった。だが噂は見る人が見れば事実だった。
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