【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
157 / 192
第十三章 嘘に紛れた思惑

第百五十七話

しおりを挟む
 トントントン。
 ドアがノックされる音でティモシーは目を覚ます。いつの間にかうたた寝をしてしまったようだった。
 はいと返事をしてドアを開けるとレオナールが立っていた。

 「あ、レオナール王子……」
 「お話し宜しいですか?」

 ティモシーは頷き招き入れる。そして椅子に腰を下ろした。

 「ベットに横になっていても宜しいですよ」
 「え? いえ、大丈夫です。具合が悪いわけじゃないので……」

 どちらかと言うと、レオナールの方が顔色が悪い。

 「そうですか……」

 レオナールも椅子に腰を下ろした。

 「あの……。ブラッドリーさんは?」
 「はい。傷は浅く命に別状はありません。どうやらトンマーゾが言うように、痺れ薬のせいで眠っているようです」
 「さっきはごめんなさい」

 俯いたままティモシーは謝った。

 「何故謝るのです?」
 「俺もレオナール王子やエイブさんが倒れたら医療行為をすると思う。出来ると思うから……」
 「あなた既に習っていたのですか?」

 これにはレオナールは驚いた。ティモシーは薬師になったばかりだ。本当ならこれからそれを学ぶのだ。

 「ごめんなさい。薬師でもないのに母さんに教わっていました。それなのにさっきあんな事言って……」
 「いえ、それはもう宜しいです」

 レオナールは小さくため息をついた。魔術だけではなく薬師としても勝てそうもないと自信をなくしそうだった。

 「私もあなたに謝りにきたのですよ」
 「え?」

 ティモシーは驚いて顔を上げた。また悲しげな顔だ。

 「あなたが命を狙われているのは、ミュアンさんのせいではなく、私のせいなのです」

 ティモシーはハッとしてドアに目を向ける。

 「ちょっと待って!」

 そう言うとドアに向かいそっと開ける。そして通路の様子を伺うと戻って来る。

 「トンマーゾさんが聞き耳立てているかもって思ったけど大丈夫だった」

 ティモシーの行動に少しレオナールに笑顔が戻る。感情のまま素直に行動する。羨ましく思う事でもあった。
 ティモシーが椅子に座り直すと、レオナールは続きを話し出す。

 「どうやら私の命を狙う口実を作る為に、あなたたちに危害を加えようとしたようなのです……」
 「え?」

 意外なレオナールの言葉にティモシーはジッと彼を見た。

 「逆だったのです。私があなた達を巻き込んだのです……」

 そう言った後、レオナールは俯いた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

上流階級はダンジョンマスター!?そんな世界で僕は下克上なんて求めません!!

まったりー
ファンタジー
転生した主人公は、平民でありながらダンジョンを作る力を持って生まれ、その力を持った者の定めとなる貴族入りが確定します。 ですが主人公は、普通の暮らしを目指し目立たない様振る舞いますが、ダンジョンを作る事しか出来ない能力な為、奮闘してしまいます。

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

商人でいこう!

八神
ファンタジー
「ようこそ。異世界『バルガルド』へ」

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

処理中です...