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第十五章 謀略に始まり謀略で終わる
第百七十一話
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「で、話って何?」
三人を見送った後、エイブが不機嫌そうに聞く。
「二人共魔力は練れそう?」
ミュアンの言葉にそうだったと二人は試してみる。
「練れる……久しぶりの感覚」
「練れます! ありがとうござます!」
魔力は少ないが、二人共練れるようになっていた。
「思った通りね」
「でもどうやって練れなくなる魔力を手に入れたんだろう?」
封印された魔力だ。普通は手に入らない。
「これでしょうね」
そう言って、ミュアンはティモシーのポーチから持ち出した黒い石を見せた。
「それって……」
「魔術師の組織が使っていた黒い石では?!」
二人は驚く。
「封印はしましたが、その魔力はそこにあった岩に蓄積されていったのでしょう。長い年月をかけこの石になった」
石の正体をミュアンはそう説明した。
「げ! 知らないで使っていたよ」
「魔術として使う分には問題ないでしょう。ただし、この魔力をそのまま使うとなると違います。サラスチニ国はこれの研究をしていました」
魔術師の組織が使っていた使い方では影響はないが、この魔力を抽出して魔力として使えば、練れなくなるという事である。
「では、私達はその石から取り出した魔力で練れなくされていたという事ででしょうか?」
「おそらくは。効果のほどを調べるのにあなた達は利用されたのでしょうね。もう時間がありません。三人でその魔力の場所に行き封印を解き、その封印を解いた魔力を散布します!」
「……魔力練れる様になったと思ったら、また練れなくなるわけか……」
「……そう上手くいくででしょうか? その場所をサラスチニ国は知っているのですよね?」
ミュアンは頷く。
「あのさ、ちょっといいかな? 俺、さっきミュアンさんから聞かされた事しか知らないからさ、確認したいんだけど……魔術師の組織=サラスチニ国って事でいいんだよね?」
「……そうですよ。本当に何も聞いていないのですか?」
ため息をしつつ言ったレオナールの問いにエイブは頷いた。
ミュアンの話を聞く限り、それしか思い当たらない。事実を知った第三者がという事もなくはないが、そう簡単に出来る事でもない。
「……で、レオナール王子は、魔術師の組織の存在をどうやって知ったの?」
「そ、そこからなのですか?」
更なる質問にレオナールは言葉に詰まる。当事者なのにと。
「いや別に教えてくれなくてもいいけどさ。もしかして、ハルフォード国に接触したから知っている訳じゃないのかなって思って……」
「あなたどんな組織か知らずにいたのですか?!」
あまりの事にレオナールは声が裏返る。しかしふっと思い出す。彼がティモシーを手に掛けようとした事を。
「あなた、いい加減な事を言うものではありませんよ。ティモシーの胸に刻印を施そうとしたではありませんか! 何も知らなかったのであれば、おかしいでしょう!」
「あれは……」
「ティモシーに刻印を?」
二人はハッとする。エイブはバレたと、レオナールは知らなかったのかと驚く。
「ご存知なかったのですか?」
手を組んだぐらいなのだから知っていると思っていたのである。
「えぇ。何も。何故黙っていました?」
そうミュアンに問われても言える訳がなかった。トンマーゾの様にいかない相手である。
「えっと、出来心と言うか……。売るつもりなんてなかったから!」
「出来心で傷物にしたのですか!」
「き、傷物?!」
「魔術師が見れば、刻印は見えます! 婿に行けなくなるではありませんか!」
そう言って凄みながら一歩近づくミュアンから逃げる様にエイブは後ずさる。
「さっき。普通の人間として育てたとかいってなかったっけ? それなのに魔術師と結婚させる気なの? というか、作戦が成功すれば、みんなただの人なのでは?」
「えぇ、そうね。でも、元魔術師には見えますから!」
「す、すみません……」
エイブにはもう謝るしか手段はない。
「ミュアンさん落ち着いて下さい」
「いいわ。事が済んだらちゃんとお聞きします!」
「………」
余計な事を振ってしまったとエイブは後悔する。
「あの、ところでミュアンさん。その痕の事なのですが、普通の人間には見えない様なのですが何故でしょう? 練れなくなった私達と一体何が違うのでしょうか?」
「あら? わかりませんか? 人間は使わないモノは退化するのです。魔術の能力もそうです。練る事が出来なくなったので練る能力が退化し、魔術師ではないものは魔力を取り入れても練れなくなった」
「では、見えなくなったのは、そういう機会がなくなったから退化したという事ですか?」
ミュアンは頷く。
魔術を使えなくなり、年代を追うごとに魔術に関する能力が退化していった。その結果、魔力を練れなくなりレジストの能力なども消滅した。そういう事だろうと語ったのだ。
三人を見送った後、エイブが不機嫌そうに聞く。
「二人共魔力は練れそう?」
ミュアンの言葉にそうだったと二人は試してみる。
「練れる……久しぶりの感覚」
「練れます! ありがとうござます!」
魔力は少ないが、二人共練れるようになっていた。
「思った通りね」
「でもどうやって練れなくなる魔力を手に入れたんだろう?」
封印された魔力だ。普通は手に入らない。
「これでしょうね」
そう言って、ミュアンはティモシーのポーチから持ち出した黒い石を見せた。
「それって……」
「魔術師の組織が使っていた黒い石では?!」
二人は驚く。
「封印はしましたが、その魔力はそこにあった岩に蓄積されていったのでしょう。長い年月をかけこの石になった」
石の正体をミュアンはそう説明した。
「げ! 知らないで使っていたよ」
「魔術として使う分には問題ないでしょう。ただし、この魔力をそのまま使うとなると違います。サラスチニ国はこれの研究をしていました」
魔術師の組織が使っていた使い方では影響はないが、この魔力を抽出して魔力として使えば、練れなくなるという事である。
「では、私達はその石から取り出した魔力で練れなくされていたという事ででしょうか?」
「おそらくは。効果のほどを調べるのにあなた達は利用されたのでしょうね。もう時間がありません。三人でその魔力の場所に行き封印を解き、その封印を解いた魔力を散布します!」
「……魔力練れる様になったと思ったら、また練れなくなるわけか……」
「……そう上手くいくででしょうか? その場所をサラスチニ国は知っているのですよね?」
ミュアンは頷く。
「あのさ、ちょっといいかな? 俺、さっきミュアンさんから聞かされた事しか知らないからさ、確認したいんだけど……魔術師の組織=サラスチニ国って事でいいんだよね?」
「……そうですよ。本当に何も聞いていないのですか?」
ため息をしつつ言ったレオナールの問いにエイブは頷いた。
ミュアンの話を聞く限り、それしか思い当たらない。事実を知った第三者がという事もなくはないが、そう簡単に出来る事でもない。
「……で、レオナール王子は、魔術師の組織の存在をどうやって知ったの?」
「そ、そこからなのですか?」
更なる質問にレオナールは言葉に詰まる。当事者なのにと。
「いや別に教えてくれなくてもいいけどさ。もしかして、ハルフォード国に接触したから知っている訳じゃないのかなって思って……」
「あなたどんな組織か知らずにいたのですか?!」
あまりの事にレオナールは声が裏返る。しかしふっと思い出す。彼がティモシーを手に掛けようとした事を。
「あなた、いい加減な事を言うものではありませんよ。ティモシーの胸に刻印を施そうとしたではありませんか! 何も知らなかったのであれば、おかしいでしょう!」
「あれは……」
「ティモシーに刻印を?」
二人はハッとする。エイブはバレたと、レオナールは知らなかったのかと驚く。
「ご存知なかったのですか?」
手を組んだぐらいなのだから知っていると思っていたのである。
「えぇ。何も。何故黙っていました?」
そうミュアンに問われても言える訳がなかった。トンマーゾの様にいかない相手である。
「えっと、出来心と言うか……。売るつもりなんてなかったから!」
「出来心で傷物にしたのですか!」
「き、傷物?!」
「魔術師が見れば、刻印は見えます! 婿に行けなくなるではありませんか!」
そう言って凄みながら一歩近づくミュアンから逃げる様にエイブは後ずさる。
「さっき。普通の人間として育てたとかいってなかったっけ? それなのに魔術師と結婚させる気なの? というか、作戦が成功すれば、みんなただの人なのでは?」
「えぇ、そうね。でも、元魔術師には見えますから!」
「す、すみません……」
エイブにはもう謝るしか手段はない。
「ミュアンさん落ち着いて下さい」
「いいわ。事が済んだらちゃんとお聞きします!」
「………」
余計な事を振ってしまったとエイブは後悔する。
「あの、ところでミュアンさん。その痕の事なのですが、普通の人間には見えない様なのですが何故でしょう? 練れなくなった私達と一体何が違うのでしょうか?」
「あら? わかりませんか? 人間は使わないモノは退化するのです。魔術の能力もそうです。練る事が出来なくなったので練る能力が退化し、魔術師ではないものは魔力を取り入れても練れなくなった」
「では、見えなくなったのは、そういう機会がなくなったから退化したという事ですか?」
ミュアンは頷く。
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