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第9話
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「おめでとう、レネット。これを提出すれば経営家として登録される」
お父様がそう言って、修了証を渡してくれた。
頑張ったもの。学園に通いながらの勉強は大変だったわ。
「本当に2年で覚えてしまうなんてね。自慢の娘だわ」
お母様がにっこりとして言う。
2年生になる一か月程前に、予定通り経営家として登録できる。
覚えが悪ければ、2年経っても修了証を貰えない事もあるし、休みがちなら仕事をしたトータルの日数が満たなくて、という事もある。
私はその点、ほぼ休みなしだったから日数が足りないなんて事もないし、わからない事は気兼ねなく聞けた。
「これで学園生活を過ごせるわね」
「過ごしているわよ」
「普通の令嬢の様に、寄り道しておいでって事よ」
「そうだな。ガストンとデートでもしたらどうだ」
「もう、お父様ったら」
まさかデートしてこいなどと言われると思っていなかった私は、驚いた。
けど、よく考えてみれば、私達2度しか会ってないわ。向こうも何も言って来ないし、放置していたけど大丈夫よね?
次の日、修了証を提出して経営家証をもらい私は、晴れて経営家の資格を得たのだ。
「あれ? レネット嬢?」
「うん? フランシスク様。まさかこんな街中で出くわすなんてびっくりですわ」
「私もだ。珍しいね」
「えへへ。実はめでたく経営家の資格を得ました」
「凄いね! 君は真面目だな。学園を卒業してからでもいいのに。おめでとう」
「ありがとう」
経営家証を見せると、祝ってくれた。
女のクセにと思う令息もいるというけど、祝ってくれたのが嬉しい。
そうなのよね。ガストン様に「おめでとう」と言われる日は来ない。
「そういえば、仕事以外に彼とは会っているの?」
「彼?」
「ルトルン子息だよ」
「いえ。顔合わせの後は学園入学前に一度会ったきりです」
「それ本当?」
「うん」
凄く驚かれた。
まあ、普通は会うよね。きっと。
「あの……普通はどれくらいの頻度で会うものなのでしょうか」
「え? えーと……人それぞれだとは思うけど。彼の場合は、君の家に婿に来るんだよね?」
フランシスク様の問いにそうだと、頷く。
「なら普通は、彼が少なくとも仕事の手伝いに学園が休みの日に来るものだと思う。婿になるならそうするんじゃないかな? 私も休日はそうしている。好きになって婚約したのなら別だろうけどね。休日はデートにあてるだろうから」
なるほど。ガストン様が手伝いに来るという事は一度もないわね。
彼に婚約者がいなかったのは、そういうのが嫌だったからなのかしら。お父様なら別に来なくても大丈夫だと言っていそうだわ。
「でも、皆が皆そうではないだろうから。お手紙のやり取りだけとか。一応、領地も違うのだし」
「そ、そうね……手紙ね」
手紙ね。そう言えば、遠ければそうするわね、きっと。でも私達は、二時間程の距離。手伝いに来るのが普通よね。
「もしかして、それもしていないの?」
「あははは。忙しくて頭になかったわ」
「君が書かなくても向こうから書く事もできるのだけど……」
「まあね。ガストン様も学校の入学の為の勉強に忙しいのかもしれないわ」
「勉強ね……」
うん? なんか呆れられている?
うーむ。政略結婚ってこんなもんだと思っていたけど、このまま結婚して上手く行くのかしら私達。
お父様が言う様に、一度デートに誘ってみようかしら。
◇
今日は、お祝いしてくれた。
と言っても、いつもより豪華な食事なだけだけど。
「今日って何の日?」
不思議そうにアンナが聞いてきた。
「色々上手くいったからお祝いだ」
お父様が、普段飲まないワインを一口ごくんと飲み、上機嫌に返す。
「あら、それはよかったわね。私もワインを頂いていいかしら」
エルダ夫人がそう言うと、お父様は侍女に入れる様に言う。ウルミーシュ子爵もワインを頂く。
「久しぶりの酒だ」
ウルミーシュ子爵は、嬉しそうに言った。
お酒は、贅沢品だからね。
私に感謝してよ。と心の中で言っておく。
今日は、和やかに夜が更けて行った。
お父様がそう言って、修了証を渡してくれた。
頑張ったもの。学園に通いながらの勉強は大変だったわ。
「本当に2年で覚えてしまうなんてね。自慢の娘だわ」
お母様がにっこりとして言う。
2年生になる一か月程前に、予定通り経営家として登録できる。
覚えが悪ければ、2年経っても修了証を貰えない事もあるし、休みがちなら仕事をしたトータルの日数が満たなくて、という事もある。
私はその点、ほぼ休みなしだったから日数が足りないなんて事もないし、わからない事は気兼ねなく聞けた。
「これで学園生活を過ごせるわね」
「過ごしているわよ」
「普通の令嬢の様に、寄り道しておいでって事よ」
「そうだな。ガストンとデートでもしたらどうだ」
「もう、お父様ったら」
まさかデートしてこいなどと言われると思っていなかった私は、驚いた。
けど、よく考えてみれば、私達2度しか会ってないわ。向こうも何も言って来ないし、放置していたけど大丈夫よね?
次の日、修了証を提出して経営家証をもらい私は、晴れて経営家の資格を得たのだ。
「あれ? レネット嬢?」
「うん? フランシスク様。まさかこんな街中で出くわすなんてびっくりですわ」
「私もだ。珍しいね」
「えへへ。実はめでたく経営家の資格を得ました」
「凄いね! 君は真面目だな。学園を卒業してからでもいいのに。おめでとう」
「ありがとう」
経営家証を見せると、祝ってくれた。
女のクセにと思う令息もいるというけど、祝ってくれたのが嬉しい。
そうなのよね。ガストン様に「おめでとう」と言われる日は来ない。
「そういえば、仕事以外に彼とは会っているの?」
「彼?」
「ルトルン子息だよ」
「いえ。顔合わせの後は学園入学前に一度会ったきりです」
「それ本当?」
「うん」
凄く驚かれた。
まあ、普通は会うよね。きっと。
「あの……普通はどれくらいの頻度で会うものなのでしょうか」
「え? えーと……人それぞれだとは思うけど。彼の場合は、君の家に婿に来るんだよね?」
フランシスク様の問いにそうだと、頷く。
「なら普通は、彼が少なくとも仕事の手伝いに学園が休みの日に来るものだと思う。婿になるならそうするんじゃないかな? 私も休日はそうしている。好きになって婚約したのなら別だろうけどね。休日はデートにあてるだろうから」
なるほど。ガストン様が手伝いに来るという事は一度もないわね。
彼に婚約者がいなかったのは、そういうのが嫌だったからなのかしら。お父様なら別に来なくても大丈夫だと言っていそうだわ。
「でも、皆が皆そうではないだろうから。お手紙のやり取りだけとか。一応、領地も違うのだし」
「そ、そうね……手紙ね」
手紙ね。そう言えば、遠ければそうするわね、きっと。でも私達は、二時間程の距離。手伝いに来るのが普通よね。
「もしかして、それもしていないの?」
「あははは。忙しくて頭になかったわ」
「君が書かなくても向こうから書く事もできるのだけど……」
「まあね。ガストン様も学校の入学の為の勉強に忙しいのかもしれないわ」
「勉強ね……」
うん? なんか呆れられている?
うーむ。政略結婚ってこんなもんだと思っていたけど、このまま結婚して上手く行くのかしら私達。
お父様が言う様に、一度デートに誘ってみようかしら。
◇
今日は、お祝いしてくれた。
と言っても、いつもより豪華な食事なだけだけど。
「今日って何の日?」
不思議そうにアンナが聞いてきた。
「色々上手くいったからお祝いだ」
お父様が、普段飲まないワインを一口ごくんと飲み、上機嫌に返す。
「あら、それはよかったわね。私もワインを頂いていいかしら」
エルダ夫人がそう言うと、お父様は侍女に入れる様に言う。ウルミーシュ子爵もワインを頂く。
「久しぶりの酒だ」
ウルミーシュ子爵は、嬉しそうに言った。
お酒は、贅沢品だからね。
私に感謝してよ。と心の中で言っておく。
今日は、和やかに夜が更けて行った。
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