居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
12 / 58

第11話

しおりを挟む
 「たまにはゆっくりすればいいのに。ガストンとのデートはどうなった?」

 と、唐突にお父様がいうから咽ちゃったじゃないの。

 「もうお父様ったら」
 「彼は忙しいのか?」
 「えーと……」
 「お手紙を出し合っていたのよね?」
 「え……」

 やっぱりそれが普通なのね。
 って、適当な事も言えないし。

 「えーと、実は手紙は苦手でまだ一度も書いた事はないの」
 「え……」
 「ガストンから来た事は? まあ見た事はないが」
 「な、ないです」

 ガストン様からの手紙を見かけた事はないけど、密かにと思っていたのね。実は、顔すら忘れそうな程です。ごめんなさい。

 「そ、そうか……。いや、お前は悪くない」
 「そうよね」

 って、なんで目配せしているの?
 触れちゃいけなかったかぁって感じ?

 「レネット。実はな」

 うん? お父様が急に真顔になった。何の話かしら。

 「レネットのレリーフを考案しておいたんだ」
 「はい!?」

 そういうと、数点を私の前に置いた。
 ここで言うレリーフとは、印鑑の様なもの。サインの後に押す。婚姻前の成人した者が持つ事が多い。
 絶対に必要な物ではないけど、資格を持っている者は、サインの偽装を防ぐ為に作る。
 家紋をアレンジした物が多く、私も学園を卒業したら作る事になっただろうけど。

 「えーと……」
 「突然だが、君はもう二つの資格を持つ成人だ。早くはない」

 この国では、貴族学園を卒業した貴族は、成人と見なされる。私はまだ卒業していないけど、何か資格を有していると卒業していなくても成人として扱われる。

 だとしても早くはないけど、性急すぎる気もするわね。
 私の意見を聞かずに、作ってあるのだもの。何かあったのかしら?

 グリンマトル家の家紋はマリーゴールドがモチーフになっている。だから私のレリーフもマリーゴールドが入っていた。
 レリーフは、丸ではなくて四角。
 私は、5つの中から1つ選んだ。

 「これにするわ。用意してくれてありがとう」
 「では明日、登録してくるといい」
 「え? 明日ですか?」

 二人は、真面目な顔で頷く。
 絶対に何かあるわね。でも、何となく聞けない。
 私は、わかったと頷いた。

 次の日、言われた通りレリーフの登録を済ませ屋敷に帰ると、驚く事にガストン様に出会った。

 「え? ガストン様? お久しぶりです」
 「レネット! あ……違うんだ」
 「え?」

 応接室から出て来たガストン様が、私を見た途端そう言った。
 何の話?

 「ルトルン令息、私達はこれから大事な話があります。ご用事が終わったならお帰り下さい」

 お母様が怖い。
 いつも笑顔のお父様も……。
 え? ガストン様は何をやらかしたの?

 「し、失礼します」

 礼をすると、ガストン様は慌ててこの場を去って行った。

 「一体何があったのですか?」

 そう尋ねると、私を応接室に入るように促す。

 「実はな。彼は浮気をしていたみたいなのだ」
 「え! 浮気ですか?」
 「俺は、ルトルン伯爵と連絡を取り合っていてな。彼が手紙のやり取りをしていると聞いた」

 だから私と手紙のやり取りをしているか確認したのね。
 そして、していないと知ってガストン様を問い詰めたと。

 「明日、ルトルン伯爵家に行って来る。すまない。彼は知り合いの紹介でな。領地持ちの息子だから大丈夫だろうと思っていたのだが」
 「焦って、ちゃんと調べもしないでそのまま話を進めるからでしょう」
 「え……」

 もうお父様ったら。

 「ところで、レリーフは登録してきたか」
 「はい」
 「ルトルン伯爵はやり手だと聞く。ないとは思うが、婚約解消を申し出たら、何か仕掛けてくるかもしれん。用心をするのに越したことはない。まあ俺がちゃんとしていれば、こうはなっていなかったのだがな」
 「お父様……。大丈夫ですわ。お父様が頼りない分、私がしっかりしますから」
 「これは一本取られたな」

 私達は、笑い合う。
 元々、政略結婚ですらなかったのだから大丈夫でしょう。たぶん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~

ふわふわ
恋愛
地味で目立たない伯爵令嬢・エルカミーノは、王太子カイロンとの政略婚約を強いられていた。 しかし、転生聖女ソルスティスに心を奪われたカイロンは、公開の舞踏会で婚約破棄を宣言。「地味でお前は不要!」と嘲笑う。 周囲から「悪役令嬢」の烙印を押され、辺境追放を言い渡されたエルカミーノ。 だが内心では「やったー! これで自由!」と大喜び。 実は彼女は前世の記憶を持つ天才錬金術師で、希少素材ゼロで最強ポーションを作れるチート級の才能を隠していたのだ。 追放先の辺境で、忠実なメイド・セシルと共に薬草園を開き、のんびりスローライフを始めるエルカミーノ。 作ったポーションが村人を救い、次第に評判が広がっていく。 そんな中、隣国から視察に来た冷徹で美麗な魔導公爵・ラクティスが、エルカミーノの才能に一目惚れ(?)。 「君の錬金術は国宝級だ。僕の国へ来ないか?」とスカウトし、腹黒ながらエルカミーノにだけ甘々溺愛モード全開に! 一方、王都ではソルスティスの聖魔法が効かず魔瘴病が流行。 エルカミーノのポーションなしでは国が危機に陥り、カイロンとソルスティスは後悔の渦へ……。 公開土下座、聖女の暴走と転生者バレ、国際的な陰謀…… さまざまな試練をラクティスの守護と溺愛で乗り越え、エルカミーノは大陸の救済者となり、幸せな結婚へ! **婚約破棄ざまぁ×隠れチート錬金術×辺境スローライフ×冷徹公爵の甘々溺愛** 胸キュン&スカッと満載の異世界ファンタジー、全32話完結!

私がいなくなっても構わないと言ったのは、あなたの方ですよ?

睡蓮
恋愛
セレスとクレイは婚約関係にあった。しかし、セレスよりも他の女性に目移りしてしまったクレイは、ためらうこともなくセレスの事を婚約破棄の上で追放してしまう。お前などいてもいなくても構わないと別れの言葉を告げたクレイであったものの、後に全く同じ言葉をセレスから返されることとなることを、彼は知らないままであった…。 ※全6話完結です。

ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件

ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。 スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。 しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。 一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。 「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。 これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。

虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を

柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。 みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。 虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました

青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。 しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。 「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」 そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。 実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。 落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。 一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。 ※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

処理中です...