7 / 32
6 後悔
しおりを挟む
「おはようございます」
「レベッカ嬢、おはよう。おや?綺麗な髪留めだね?」
事務長はこういうところ、なかなか目敏いので油断ができない。しかし突っ込まれるであろうことは予想範囲内だ。
「お褒めいただき、ありがとうございます」
私は何事もなかったかのように、さらりとお礼を返した。彼はフッと笑ったがそれ以上は何も言ってこなかったのでセーフだ。
アリシアさんも「似合ってますね!」と言ってくれたが、少し鈍い彼女は誰に貰ったのかは気に留めていないようだった。
廊下でばったりと彼と会うと、私が髪留めをしているのに気が付いてそれはそれは嬉しそうに笑った。
「レベッカさん、おはようございます!」
「お、おはようございます」
廊下には他の魔法使いや職員達もいるので、ここでは髪留めの話はしたくない。それを察してくれたのかレオンさんは私の傍に近付いて来て、甘い声で囁いた。
「すごく似合ってます。綺麗です」
目を細めたその顔がとても色っぽくって、ドキッと胸が高鳴った。そして彼は自分の左胸のポケットをトントンと指で叩いた。促されるままそこを見ると……私があげたペンが入っていた。
「レベッカさん、愛してます」
ペンを大事そうにひと撫でしてから、彼は私から身体を離した。
「じゃあ、仕事行ってきますね!」
「行って……らっしゃい」
レオンさんは急にニパッと笑って、いつもの調子で手をブンブンと振って去って行った。私は真っ赤になってその場にしゃがみ込んだ。
ああ、なぜ急にあんな『男』の顔をするんだ。恥ずかしくて、どうしたらいいかわからないではないか。
そんな私の戸惑いをよそに、この日からレオンさんは私と遠くで目が合うと同じようにペンを撫でる仕草をするようになった。
そしてその仕草の後には、必ず口をパクパクさせる。最初は何を言っているのかわからなかったが……気が付いてしまった。これは『あ・い・し・て・る』だ。
――なんという恥ずかしいことを。
レオンさんは若いからなのか、元々の性格なのかこういうことを恥ずかし気もなくさらりとやってのける。
彼の愛情表現はいつも真っ直ぐで、迷いがない。自分には無いものなので、それはとても眩しい。私は彼の愛に応えることも、強く拒否することもしないままずるずると微妙な関係が続いていった。
私はずるい。だけど、彼の傍にいるとお日様の下にいるようにポカポカと気持ちが温かくなるのだ。
もう少し、もう少しだけ。彼の将来を考えればすぐに突き放すべきだとわかっているのに、なかなかそれができなかった。彼も何かを感じているのか、私に告白の返事を求めるようなことはしなかった。
それからもレオンさんとはお昼の休憩時間に話したり、たまに週末に出かけたり……そんな穏やかで幸せな日々が続いていた。
♢♢♢
そんなある日。事務仕事を終えて、帰ろうとしたところアリシアさんが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「レベッカさん!さっき廊下で聞いてしまったんです。あの……今日の討伐でレオンさんが倒れたそうです」
「……え?」
私はそれを聞いて目の前が真っ暗になった。倒れた……?レオンさんが?
「今はこちらに戻られて医務室にいらっしゃるそうです。早く行ってあげてください」
私はこくんと頷き、全速力で医務室まで走った。王宮内は走ってはいけないとわかっているけれど、今は許して欲しい。
――何があったの?どうか無事でいて。
私は祈るような気持ちで、医務室まで来た。ノックをしたが返事がない。そっと中に入ると、そこには綺麗な顔で眠っているレオンさんがいた。
ぱっと見は外傷はなさそうで、安心する。じゃあ何故倒れたんだろうか。その時、ガチャッと扉が開いて一人の男性が入って来た。
「……ノックなしで開けてしまって、すみません。まさか誰かいると思わなくて」
この男性は確かレオンさんと一緒に入団した同期のライナー様だ。何度か書類のやり取りをしたことがあるが、無口な方なのであまり話したことはない。
「いえ、私こそ勝手に入ってしまい申し訳ありません。あの、レオンさんはどうされたのですか?」
私が質問すると、ライナー様は悔しそうに唇を噛み締めグッと拳を握りしめた。
「……魔力切れで倒れたんです」
「魔力切れ?」
それならば傷がないのも納得だ。しかし、彼ほどの魔力量をもった人がそれが全てなくなるまで使うなんて……どんな魔物と戦ったのだろうか。
「俺は何もできなかったんです。こいつと違って俺は力がないから……不甲斐ないですけど」
ライナー様は苦しそうにそう話してくれた。優秀な彼に力がないはずがない。そもそもレオンさんと比べるのは間違っている。
「あなたに力が無いはずありません。レオンさんは才能があるだけでなく、努力も惜しまないすごい方です。でも……規格外のレオンさんとご自身を比べるなんて無意味ですわ。きっと水魔法の精度ならライナー様の方が上ですし、少なくとも提出書類の正確さは絶対にあなたの勝ちです」
最後は冗談っぽくそう言った私を見て、彼は少し驚いたような顔をした後フッと笑った。
「ありがとうございます。そうですね、俺は俺ですよね……なんかレオンがあなたを慕う意味がわかりました」
そんなことを言われて私は首を傾げた。レオンさんが私を慕う意味とは?
「こいつ、お任せしていいですか?あなたが傍にいてくださった方がレオンは喜ぶと思うんで」
「承りました。喜ばれるかどうかは、わかりませんけれど」
「こいつは、俺の前でいつもあなたのことばかり話してますよ。でも……書類の書き方はわざとわからないふりして甘えてると思うので、一度しっかり怒った方がいいですよ。最初は本当にできなかったかもしれませんが、あいつは頭もいいはずだから覚えられないはずないです」
そう言って少し笑いながら失礼します、と彼は医務室から出て行った。書類の件は薄々そうかもしれないと思っていたが……やはりそうなのね。
私は「困った人ね」と呟いて、そっとレオンさんの手を握った。
――どうして魔力切れになるまで無茶をしたの?
魔法使いは魔力を使い切ると、倒れてしまう。だから、絶対に余力を残して戦わねばならないことは基本中の基本だ。それをレオンさんが知らぬはずはない。
「ゔうっ……ぐっ……」
何時間もそうしていたので、うとうとしていたが……彼の苦し気な声にハッと意識が戻った。
「レオンさん、レオンさんっ!!」
私が必死に呼びかけると、彼の瞼がゆっくりと開き段々と焦点が合ってきた。
「レベッカ……さ……ん……ど……して?」
喉がカラカラのようで、声が掠れている。私は彼の身体をゆっくりと起こして、水を差し出した。
上手く力が入らないようで、水が飲めずに半分以上ポタポタと口から流れる。服が濡れるので、私は慌てて口元をハンカチで押さえた、
「水もまともに飲めないなんて……格好悪……」
そしてそのまま、ずるずるとベッドに沈み込んだ。本当に力が入らないようだ。私は彼の頬を両手で掴んだ。
「格好悪くなんてないわ!」
「レベッカ……さん?」
「あなたは倒れるまで頑張ったんでしょう?充分すごいじゃないですか」
慰めるつもりが、怒ったような言い方になってしまったことを反省した。
「今は……俺に優しくしないでください」
彼は私から顔が見えないように壁際に寝返りをうった。何があったのかわからないが、レオンさんにとって辛いことがあったのは間違いがない。
私は何も言わずに彼の頭を撫で続けた。天才と言われているが、彼が努力していないはずがない。いつもニコニコ笑っているからその努力にみんなが気付かないだけ。
私は目立たない場所で一人残って魔法の練習をしている彼を何度も見かけている。王宮の図書室でも、いつも難しい魔法の本を真剣に読んで頑張っているものね。
――出逢った時もあなたは努力していたわね。
「くっ……ふっ……」
ベッドから噛み殺したような嗚咽が聞こえてくる。私に泣き顔は見られたくないだろうから、頭にタオルをかけた。
そのまま三十分程経過すると、レオンさんはポツリポツリと話し始めた。
「俺……自分の力を過信してて……」
「いざと言う時……魔力が足りなくて……テレポーテーションもできなくて……森に迷い込んでいた小さな女の子に……傷が……」
苦しそうな声のレオンさんに胸がぎゅっと苦しくなる。
「……その子は助かったの?」
「命は……問題ありません」
「そう、良かったわ。あなたがいなければ、きっとその子は助かってなかった。大事な命をあなたが守ったの」
しかし、レオンさんは『無傷で助けられた筈だった』と後悔しているのだ。
「……はい」
レオンさんは力なく返事をした。
「俺、もっともっと強くなります」
彼はゴシゴシと目を擦ってから、ゆっくりと起き上がった。
「レベッカさん、恥ずかしいところをお見せしました。それにご迷惑をおかけしてすみませんでした。でも……あなたが傍にいてくれて良かったです」
彼は恥ずかしそうに眉を下げて、少しだけ笑った。
「あなたなら強くなれます」
私は彼をギュッと抱き締めて、背中をよしよしと撫でた。彼は驚いたのか、一瞬ピクッと身体が跳ねた。
「大丈夫。レオンさんなら絶対大丈夫よ」
レオンさんは私の服をくしゃりと掴んで、肩に顔を埋めた。
「そんなに甘やかされたら……困ります」
「いいから。何も考えずにたっぷりお姉さんに甘えなさい」
私はわざと冗談っぽく、くすくすと笑ってそう言った。すると彼は身体を離して、きゅっと口を引き締めて真剣な顔をした。
「すごく魅力的なお誘いですけど、俺はあなたに甘えてもらえる男になりたいんです」
「えっ?」
彼はガシガシと頭を掻いて「沢山訓練して、早くあなたに相応しくなります」と言ってフラフラとベッドから立ち上がって「本当にありがとうございました」と呟いて振り向かずに部屋を出て行った。
…………………………
お読みいただきありがとうございます。
本日はもう一話、夕方に更新します。
「レベッカ嬢、おはよう。おや?綺麗な髪留めだね?」
事務長はこういうところ、なかなか目敏いので油断ができない。しかし突っ込まれるであろうことは予想範囲内だ。
「お褒めいただき、ありがとうございます」
私は何事もなかったかのように、さらりとお礼を返した。彼はフッと笑ったがそれ以上は何も言ってこなかったのでセーフだ。
アリシアさんも「似合ってますね!」と言ってくれたが、少し鈍い彼女は誰に貰ったのかは気に留めていないようだった。
廊下でばったりと彼と会うと、私が髪留めをしているのに気が付いてそれはそれは嬉しそうに笑った。
「レベッカさん、おはようございます!」
「お、おはようございます」
廊下には他の魔法使いや職員達もいるので、ここでは髪留めの話はしたくない。それを察してくれたのかレオンさんは私の傍に近付いて来て、甘い声で囁いた。
「すごく似合ってます。綺麗です」
目を細めたその顔がとても色っぽくって、ドキッと胸が高鳴った。そして彼は自分の左胸のポケットをトントンと指で叩いた。促されるままそこを見ると……私があげたペンが入っていた。
「レベッカさん、愛してます」
ペンを大事そうにひと撫でしてから、彼は私から身体を離した。
「じゃあ、仕事行ってきますね!」
「行って……らっしゃい」
レオンさんは急にニパッと笑って、いつもの調子で手をブンブンと振って去って行った。私は真っ赤になってその場にしゃがみ込んだ。
ああ、なぜ急にあんな『男』の顔をするんだ。恥ずかしくて、どうしたらいいかわからないではないか。
そんな私の戸惑いをよそに、この日からレオンさんは私と遠くで目が合うと同じようにペンを撫でる仕草をするようになった。
そしてその仕草の後には、必ず口をパクパクさせる。最初は何を言っているのかわからなかったが……気が付いてしまった。これは『あ・い・し・て・る』だ。
――なんという恥ずかしいことを。
レオンさんは若いからなのか、元々の性格なのかこういうことを恥ずかし気もなくさらりとやってのける。
彼の愛情表現はいつも真っ直ぐで、迷いがない。自分には無いものなので、それはとても眩しい。私は彼の愛に応えることも、強く拒否することもしないままずるずると微妙な関係が続いていった。
私はずるい。だけど、彼の傍にいるとお日様の下にいるようにポカポカと気持ちが温かくなるのだ。
もう少し、もう少しだけ。彼の将来を考えればすぐに突き放すべきだとわかっているのに、なかなかそれができなかった。彼も何かを感じているのか、私に告白の返事を求めるようなことはしなかった。
それからもレオンさんとはお昼の休憩時間に話したり、たまに週末に出かけたり……そんな穏やかで幸せな日々が続いていた。
♢♢♢
そんなある日。事務仕事を終えて、帰ろうとしたところアリシアさんが慌てた様子で部屋に入ってきた。
「レベッカさん!さっき廊下で聞いてしまったんです。あの……今日の討伐でレオンさんが倒れたそうです」
「……え?」
私はそれを聞いて目の前が真っ暗になった。倒れた……?レオンさんが?
「今はこちらに戻られて医務室にいらっしゃるそうです。早く行ってあげてください」
私はこくんと頷き、全速力で医務室まで走った。王宮内は走ってはいけないとわかっているけれど、今は許して欲しい。
――何があったの?どうか無事でいて。
私は祈るような気持ちで、医務室まで来た。ノックをしたが返事がない。そっと中に入ると、そこには綺麗な顔で眠っているレオンさんがいた。
ぱっと見は外傷はなさそうで、安心する。じゃあ何故倒れたんだろうか。その時、ガチャッと扉が開いて一人の男性が入って来た。
「……ノックなしで開けてしまって、すみません。まさか誰かいると思わなくて」
この男性は確かレオンさんと一緒に入団した同期のライナー様だ。何度か書類のやり取りをしたことがあるが、無口な方なのであまり話したことはない。
「いえ、私こそ勝手に入ってしまい申し訳ありません。あの、レオンさんはどうされたのですか?」
私が質問すると、ライナー様は悔しそうに唇を噛み締めグッと拳を握りしめた。
「……魔力切れで倒れたんです」
「魔力切れ?」
それならば傷がないのも納得だ。しかし、彼ほどの魔力量をもった人がそれが全てなくなるまで使うなんて……どんな魔物と戦ったのだろうか。
「俺は何もできなかったんです。こいつと違って俺は力がないから……不甲斐ないですけど」
ライナー様は苦しそうにそう話してくれた。優秀な彼に力がないはずがない。そもそもレオンさんと比べるのは間違っている。
「あなたに力が無いはずありません。レオンさんは才能があるだけでなく、努力も惜しまないすごい方です。でも……規格外のレオンさんとご自身を比べるなんて無意味ですわ。きっと水魔法の精度ならライナー様の方が上ですし、少なくとも提出書類の正確さは絶対にあなたの勝ちです」
最後は冗談っぽくそう言った私を見て、彼は少し驚いたような顔をした後フッと笑った。
「ありがとうございます。そうですね、俺は俺ですよね……なんかレオンがあなたを慕う意味がわかりました」
そんなことを言われて私は首を傾げた。レオンさんが私を慕う意味とは?
「こいつ、お任せしていいですか?あなたが傍にいてくださった方がレオンは喜ぶと思うんで」
「承りました。喜ばれるかどうかは、わかりませんけれど」
「こいつは、俺の前でいつもあなたのことばかり話してますよ。でも……書類の書き方はわざとわからないふりして甘えてると思うので、一度しっかり怒った方がいいですよ。最初は本当にできなかったかもしれませんが、あいつは頭もいいはずだから覚えられないはずないです」
そう言って少し笑いながら失礼します、と彼は医務室から出て行った。書類の件は薄々そうかもしれないと思っていたが……やはりそうなのね。
私は「困った人ね」と呟いて、そっとレオンさんの手を握った。
――どうして魔力切れになるまで無茶をしたの?
魔法使いは魔力を使い切ると、倒れてしまう。だから、絶対に余力を残して戦わねばならないことは基本中の基本だ。それをレオンさんが知らぬはずはない。
「ゔうっ……ぐっ……」
何時間もそうしていたので、うとうとしていたが……彼の苦し気な声にハッと意識が戻った。
「レオンさん、レオンさんっ!!」
私が必死に呼びかけると、彼の瞼がゆっくりと開き段々と焦点が合ってきた。
「レベッカ……さ……ん……ど……して?」
喉がカラカラのようで、声が掠れている。私は彼の身体をゆっくりと起こして、水を差し出した。
上手く力が入らないようで、水が飲めずに半分以上ポタポタと口から流れる。服が濡れるので、私は慌てて口元をハンカチで押さえた、
「水もまともに飲めないなんて……格好悪……」
そしてそのまま、ずるずるとベッドに沈み込んだ。本当に力が入らないようだ。私は彼の頬を両手で掴んだ。
「格好悪くなんてないわ!」
「レベッカ……さん?」
「あなたは倒れるまで頑張ったんでしょう?充分すごいじゃないですか」
慰めるつもりが、怒ったような言い方になってしまったことを反省した。
「今は……俺に優しくしないでください」
彼は私から顔が見えないように壁際に寝返りをうった。何があったのかわからないが、レオンさんにとって辛いことがあったのは間違いがない。
私は何も言わずに彼の頭を撫で続けた。天才と言われているが、彼が努力していないはずがない。いつもニコニコ笑っているからその努力にみんなが気付かないだけ。
私は目立たない場所で一人残って魔法の練習をしている彼を何度も見かけている。王宮の図書室でも、いつも難しい魔法の本を真剣に読んで頑張っているものね。
――出逢った時もあなたは努力していたわね。
「くっ……ふっ……」
ベッドから噛み殺したような嗚咽が聞こえてくる。私に泣き顔は見られたくないだろうから、頭にタオルをかけた。
そのまま三十分程経過すると、レオンさんはポツリポツリと話し始めた。
「俺……自分の力を過信してて……」
「いざと言う時……魔力が足りなくて……テレポーテーションもできなくて……森に迷い込んでいた小さな女の子に……傷が……」
苦しそうな声のレオンさんに胸がぎゅっと苦しくなる。
「……その子は助かったの?」
「命は……問題ありません」
「そう、良かったわ。あなたがいなければ、きっとその子は助かってなかった。大事な命をあなたが守ったの」
しかし、レオンさんは『無傷で助けられた筈だった』と後悔しているのだ。
「……はい」
レオンさんは力なく返事をした。
「俺、もっともっと強くなります」
彼はゴシゴシと目を擦ってから、ゆっくりと起き上がった。
「レベッカさん、恥ずかしいところをお見せしました。それにご迷惑をおかけしてすみませんでした。でも……あなたが傍にいてくれて良かったです」
彼は恥ずかしそうに眉を下げて、少しだけ笑った。
「あなたなら強くなれます」
私は彼をギュッと抱き締めて、背中をよしよしと撫でた。彼は驚いたのか、一瞬ピクッと身体が跳ねた。
「大丈夫。レオンさんなら絶対大丈夫よ」
レオンさんは私の服をくしゃりと掴んで、肩に顔を埋めた。
「そんなに甘やかされたら……困ります」
「いいから。何も考えずにたっぷりお姉さんに甘えなさい」
私はわざと冗談っぽく、くすくすと笑ってそう言った。すると彼は身体を離して、きゅっと口を引き締めて真剣な顔をした。
「すごく魅力的なお誘いですけど、俺はあなたに甘えてもらえる男になりたいんです」
「えっ?」
彼はガシガシと頭を掻いて「沢山訓練して、早くあなたに相応しくなります」と言ってフラフラとベッドから立ち上がって「本当にありがとうございました」と呟いて振り向かずに部屋を出て行った。
…………………………
お読みいただきありがとうございます。
本日はもう一話、夕方に更新します。
8
あなたにおすすめの小説
もふもふグリフォンの旦那様に溺愛されています
さら
恋愛
無能だと罵られ、聖女候補から追放されたリリア。
行き場を失い森を彷徨っていた彼女を救ったのは――翼を広げる巨大なグリフォンだった。
人の姿をとれば美丈夫、そして彼は自らを「旦那様」と名乗り、リリアを過保護に溺愛する。
森での穏やかな日々、母の故郷との再会、妹や元婚約者との因縁、そして国を覆う“影の徒”との決戦。
「伴侶よ、風と共に生きろ。おまえを二度と失わせはしない」
追放から始まった少女の物語は、
もふもふ旦那様の翼に包まれて――愛と祈りが国を救う、大団円へ。
「幼馴染は、安心できる人で――独占する人でした」
だって、これも愛なの。
恋愛
幼い頃の無邪気な一言。
「お兄様みたいな人が好き」――その言葉を信じ続け、彼はずっと優しく隣にいてくれた。
エリナにとってレオンは、安心できる幼馴染。
いつも柔らかく笑い、困ったときには「無理しなくていい」と支えてくれる存在だった。
けれど、他の誰かの影が差し込んだ瞬間、彼の奥に潜む本音が溢れ出す。
「俺は譲らないよ。誰にも渡さない」
優しいだけじゃない。
安心と独占欲――その落差に揺さぶられて、エリナの胸は恋に気づいていく。
安心できる人が、唯一の人になるまで。
甘く切ない幼馴染ラブストーリー。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。
秋月一花
恋愛
旅芸人のひとりとして踊り子をしながら各地を巡っていたアナベルは、十五年前に一度だけ会ったことのあるレアルテキ王国の国王、エルヴィスに偶然出会う。
「君の力を借りたい」
あまりにも真剣なその表情に、アナベルは詳しい話を聞くことにした。
そして、その内容を聞いて彼女はエルヴィスに協力することを約束する。
こうして踊り子のアナベルは、エルヴィスの寵姫として王宮へ入ることになった。
目的はたったひとつ。
――王妃イレインから、すべてを奪うこと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる