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23 禁忌【レオン視点】
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俺はあることを調べるために今、王宮の書庫に来ている。それだけなら問題はないが、ここは王族や一定の権限のある人しか入れない立ち入り禁止エリアだ。間違っても下っ端の俺が入れる場所ではない。
だが、誰にも見つからぬように魔法で移動を繰り返し探索で鍵を見つけるのは簡単だった。
鍵だけではなく扉にはご丁寧に強めの結界まで張ってあったが、難なく解け潜り込むことができたのだ。
――俺の魔力が強いのはレベッカさんを助けるためのものかもしれない。
ついそんなことを思ってしまう。この力があって本当に良かった。見つかっていないとはいえ、長時間ここにいるわけにはいかない。さっさと目的のものを探し出さなければ……。
役立ちそうな本を片っ端から開けていく。ここには今は禁止されているが昔行われていたであろう、生贄が必要な怪しい黒魔術や悪魔の召喚のやり方……魔法を使っての敵国スパイへの拷問の方法等きな臭い本が並んでいる。
つまりここにあるのは今では『禁忌』とされているものばかりだ。だからこそ一般公開されていないのだ。
『不死鳥』
俺が探していたのはこの鳥のことだ。今では伝説上の生き物だとされているが……俺の読みが当たっていればこの生物はいるはずだ。魔物ではなく聖獣と呼ばれる神聖な生き物。
――フェニックスは寿命を延ばしてくれる。
「やはり……具体的な記録がある」
俺は昔、祖父にフェニックスは実際にいると聞いたことがあった。何百年も前の国王が、私利私欲のため沢山の魔法使いに命じてフェニックスを生け捕りにしようとしたことがあったらしい。
それに怒ったフェニックスは襲ってきた魔法使い達を全滅させ、国に多大な被害が出た。それを知った次の国王は同じ過ちを決して繰り返さないように、フェニックスを探すことを禁じ……今や伝説の生き物として名前だけが知られる存在になったのだ。
『レオン、私はフェニックスが空を飛んでいるのを見たことがあるんだ。炎のような赤い羽をもった美しい聖獣だったよ』
『本当!?僕も見てみたいな』
『レオンは魔力が強いからいつか会えるかもしれないな。なに、邪な心がなければ怖いことはない』
その話を思い出したのだ。そして確信した。フェニックスは必ずいる。詳しい生息地や、具体的な見た目等詳しく書かれている本がここにあるからだ。
だが、何をしたら寿命を延ばしてくれるのかは書かれていなかった。それが本当なのかさえわからない。
「レベッカさんの寿命を元通りにして欲しいっていう願いは……邪な願いなのかな」
――しかし、行くしかない。
僅かでも可能性があるのなら、何処へでも行くと決めていた。もしダメだったなら……すぐに別の手段を試すまでだ。俺は絶対に何があっても諦めることなんてできない。
「お前、一体どういうつもりだ?」
いきなり後ろから低く恐ろしい声が聞こえて、俺はゆっくりと振り向いた。
「さっさと答えろ。陛下に突き出す前に理由くらいは聞いてやる」
「……団長、流石ですね。他の誰も気が付いていなかったのに」
「甘いんだよ。ここの結界を張ったのは俺だ。ちなみに破られたらすぐに俺にわかるように魔法をかけてある」
なるほど、二重に魔法をかけてあるのか。むしろ侵入した犯人を捕まえるために、それなりの結界にしてわざと入れるようにしてあったのかもしれない。だから俺でも破れたのか……。
「ここにお前が見ていいものはない」
「終わったらどんな罰でも受けます。今は見逃してください。どうしても今やらなきゃだめなんです。他の誰にも迷惑はかけません」
俺は団長にそう告げた。団長は恐ろしい顔でギロリと睨みつけた。
「ふざけんなよ。お前の都合を勝手に押し付けるんじゃねぇ」
「俺が助けなきゃいけないんです。彼女は怒るだろうけど、自分より大事な存在なんです。それに今度は俺が守る番だから」
「彼女って……レベッカ嬢のことか」
団長の瞳を真っ直ぐ見つめた。理解してもらえなくてもいい。ただ、今は何も言わずに行かせて欲しい。レベッカさんが助かるなら、謹慎を受けようが魔法省を追い出されようが何でもいい。例え……俺が死んでしまったとしても。
「おい……っ!レオン、待て!!」
団長の叫び声を無視して、俺はテレポーテーションでフェニックスの生息地近くの街に移動した。以前この辺は任務で来たことがある。手間が省けてよかった。
フェニックスは深い深い山の中にいると書いてあった。街で情報を集めるが、詳しいことは全く出てこない。それはそうか……国が消した事実だもんな。どんな願いも叶うなんて知ったら、世界中からフェニックスを狙う奴等が出てきてしまう。
『フェニックスはこの街を守ってくれる守護鳥さ。ほとんど姿を現さないから、見ることができたら幸運になると言われているよ』
そんなことを露天商の店主が教えてくれた。なるほど……民衆には願いを叶えてくれるという部分は隠されており、幸運の象徴のように言われているようだ。
俺は一泊して、魔力を蓄えて山の中に入った。どれだけ深い山なのか、フェニックスはいるのかどうかさえもわからない。
「……おかしい。ここは前に通ったはずなのに」
山の頂上を目指しているはずなのに、ある場所から何度も何度も同じ景色が繰り返される。丸一日歩き回ったが、一向に上に行くことができない。
空間が歪んでいるような不思議な感じだ。これは魔法なのだろうか。
「もう三日間も探しているのに……」
俺は野宿をしながら広大な山全てを探し回ったが何故か上には辿り着けない。目印をつけながら先に進んでもいつの間にか同じ場所に戻されている。様々な種類の魔法も試してみたが、どれも効果はなく一定の場所から先は入れないように結界のようなものが張ってあるようだった。
しかし、俺は入れないということはいるということなのではないかとも思っていた。
どうやら今夜もこの森で過ごすことになりそうだ。寝床になりそうな場所に火を焚き、川の水を飲み携帯食料を齧った。ボソボソとしていてあまり美味しくないが、贅沢は言ってられない。
『死にたくなけりゃ何でも多めに用意しておけ』
これは団長の教えだった。それを守って食料を持って来ておいてよかった。
実は街にテレポーテーションで移動しようとしたが、何らかの力で阻止された。この森に来るには自力で登って降りねばらないらしい。行き帰りの時間も惜しいので、俺はここから出るのを諦めた。
しかし、明日には食料も尽きる。一度降りねばならなくなるだろう。
「レベッカさんに……逢いたいな」
彼女の色の石が入ったネックレスをぎゅっと握りしめて、彼女に貰った万年筆を撫でてから目を閉じた。すると、ふんわりと笑う彼女の顔が鮮明に思い出された。
『レオンさん、どこへ行かれていたのですか?探しましたよ』
彼女は少しムッとして俺の頭をコツンと叩いた後、優しく抱き締めてくれた。
『もう何処にも行かないでください。ずっと二人で一緒にいましょう』
パチパチと火が燃える音を聞きながら、例え夢であってもその幸せを手放したくなくて目を開けることができなかった。
「ふっ……都合のいい夢だな」
鼻の辺りがツンと痛くなるが、俺に泣く資格などない。涙が溢れないようにギリッと唇を強く噛み締めた。
俺はSランクの魔力量を持った魔法使いなのに、なぜ彼女を救えないのだろう。空、風、火、水、地……どの魔法も使えるのにレベッカさんの役には立たない。エースだ、天才だなんて言われても何の意味もない。
これは多くの人々を救える力。だけど一番愛する女性を救うことはできない。
――なんて無力なんだろう。
彼女は自分の命を削ってまで俺を助けてくれたのに。それだけじゃない。俺が辛い時は寄り添ってくれて『大丈夫だ』と励まして勇気をくれた。疲れた時は抱き締めて癒してくれた。アリアちゃんのことだって……俺が苦しんでいたから自分の命を削って怪我の跡を治してくれたのだろう。
貰ってばかりの自分に嫌気が差してくる。彼女は多くを与えるのに、見返りを求めない。何もあげられない自分が不甲斐ない。
【どうやら諦めの悪い者が来ているようだな】
頭の中に声が響いた瞬間ぶわっと風が吹いたので、驚いて顔をあげるとそこには真っ赤な翼を持った美しい大きな鳥がいた。
――不死鳥。
鳥は光を纏っていて、今は真夜中だというのに神々しく輝いていた。
だが、誰にも見つからぬように魔法で移動を繰り返し探索で鍵を見つけるのは簡単だった。
鍵だけではなく扉にはご丁寧に強めの結界まで張ってあったが、難なく解け潜り込むことができたのだ。
――俺の魔力が強いのはレベッカさんを助けるためのものかもしれない。
ついそんなことを思ってしまう。この力があって本当に良かった。見つかっていないとはいえ、長時間ここにいるわけにはいかない。さっさと目的のものを探し出さなければ……。
役立ちそうな本を片っ端から開けていく。ここには今は禁止されているが昔行われていたであろう、生贄が必要な怪しい黒魔術や悪魔の召喚のやり方……魔法を使っての敵国スパイへの拷問の方法等きな臭い本が並んでいる。
つまりここにあるのは今では『禁忌』とされているものばかりだ。だからこそ一般公開されていないのだ。
『不死鳥』
俺が探していたのはこの鳥のことだ。今では伝説上の生き物だとされているが……俺の読みが当たっていればこの生物はいるはずだ。魔物ではなく聖獣と呼ばれる神聖な生き物。
――フェニックスは寿命を延ばしてくれる。
「やはり……具体的な記録がある」
俺は昔、祖父にフェニックスは実際にいると聞いたことがあった。何百年も前の国王が、私利私欲のため沢山の魔法使いに命じてフェニックスを生け捕りにしようとしたことがあったらしい。
それに怒ったフェニックスは襲ってきた魔法使い達を全滅させ、国に多大な被害が出た。それを知った次の国王は同じ過ちを決して繰り返さないように、フェニックスを探すことを禁じ……今や伝説の生き物として名前だけが知られる存在になったのだ。
『レオン、私はフェニックスが空を飛んでいるのを見たことがあるんだ。炎のような赤い羽をもった美しい聖獣だったよ』
『本当!?僕も見てみたいな』
『レオンは魔力が強いからいつか会えるかもしれないな。なに、邪な心がなければ怖いことはない』
その話を思い出したのだ。そして確信した。フェニックスは必ずいる。詳しい生息地や、具体的な見た目等詳しく書かれている本がここにあるからだ。
だが、何をしたら寿命を延ばしてくれるのかは書かれていなかった。それが本当なのかさえわからない。
「レベッカさんの寿命を元通りにして欲しいっていう願いは……邪な願いなのかな」
――しかし、行くしかない。
僅かでも可能性があるのなら、何処へでも行くと決めていた。もしダメだったなら……すぐに別の手段を試すまでだ。俺は絶対に何があっても諦めることなんてできない。
「お前、一体どういうつもりだ?」
いきなり後ろから低く恐ろしい声が聞こえて、俺はゆっくりと振り向いた。
「さっさと答えろ。陛下に突き出す前に理由くらいは聞いてやる」
「……団長、流石ですね。他の誰も気が付いていなかったのに」
「甘いんだよ。ここの結界を張ったのは俺だ。ちなみに破られたらすぐに俺にわかるように魔法をかけてある」
なるほど、二重に魔法をかけてあるのか。むしろ侵入した犯人を捕まえるために、それなりの結界にしてわざと入れるようにしてあったのかもしれない。だから俺でも破れたのか……。
「ここにお前が見ていいものはない」
「終わったらどんな罰でも受けます。今は見逃してください。どうしても今やらなきゃだめなんです。他の誰にも迷惑はかけません」
俺は団長にそう告げた。団長は恐ろしい顔でギロリと睨みつけた。
「ふざけんなよ。お前の都合を勝手に押し付けるんじゃねぇ」
「俺が助けなきゃいけないんです。彼女は怒るだろうけど、自分より大事な存在なんです。それに今度は俺が守る番だから」
「彼女って……レベッカ嬢のことか」
団長の瞳を真っ直ぐ見つめた。理解してもらえなくてもいい。ただ、今は何も言わずに行かせて欲しい。レベッカさんが助かるなら、謹慎を受けようが魔法省を追い出されようが何でもいい。例え……俺が死んでしまったとしても。
「おい……っ!レオン、待て!!」
団長の叫び声を無視して、俺はテレポーテーションでフェニックスの生息地近くの街に移動した。以前この辺は任務で来たことがある。手間が省けてよかった。
フェニックスは深い深い山の中にいると書いてあった。街で情報を集めるが、詳しいことは全く出てこない。それはそうか……国が消した事実だもんな。どんな願いも叶うなんて知ったら、世界中からフェニックスを狙う奴等が出てきてしまう。
『フェニックスはこの街を守ってくれる守護鳥さ。ほとんど姿を現さないから、見ることができたら幸運になると言われているよ』
そんなことを露天商の店主が教えてくれた。なるほど……民衆には願いを叶えてくれるという部分は隠されており、幸運の象徴のように言われているようだ。
俺は一泊して、魔力を蓄えて山の中に入った。どれだけ深い山なのか、フェニックスはいるのかどうかさえもわからない。
「……おかしい。ここは前に通ったはずなのに」
山の頂上を目指しているはずなのに、ある場所から何度も何度も同じ景色が繰り返される。丸一日歩き回ったが、一向に上に行くことができない。
空間が歪んでいるような不思議な感じだ。これは魔法なのだろうか。
「もう三日間も探しているのに……」
俺は野宿をしながら広大な山全てを探し回ったが何故か上には辿り着けない。目印をつけながら先に進んでもいつの間にか同じ場所に戻されている。様々な種類の魔法も試してみたが、どれも効果はなく一定の場所から先は入れないように結界のようなものが張ってあるようだった。
しかし、俺は入れないということはいるということなのではないかとも思っていた。
どうやら今夜もこの森で過ごすことになりそうだ。寝床になりそうな場所に火を焚き、川の水を飲み携帯食料を齧った。ボソボソとしていてあまり美味しくないが、贅沢は言ってられない。
『死にたくなけりゃ何でも多めに用意しておけ』
これは団長の教えだった。それを守って食料を持って来ておいてよかった。
実は街にテレポーテーションで移動しようとしたが、何らかの力で阻止された。この森に来るには自力で登って降りねばらないらしい。行き帰りの時間も惜しいので、俺はここから出るのを諦めた。
しかし、明日には食料も尽きる。一度降りねばならなくなるだろう。
「レベッカさんに……逢いたいな」
彼女の色の石が入ったネックレスをぎゅっと握りしめて、彼女に貰った万年筆を撫でてから目を閉じた。すると、ふんわりと笑う彼女の顔が鮮明に思い出された。
『レオンさん、どこへ行かれていたのですか?探しましたよ』
彼女は少しムッとして俺の頭をコツンと叩いた後、優しく抱き締めてくれた。
『もう何処にも行かないでください。ずっと二人で一緒にいましょう』
パチパチと火が燃える音を聞きながら、例え夢であってもその幸せを手放したくなくて目を開けることができなかった。
「ふっ……都合のいい夢だな」
鼻の辺りがツンと痛くなるが、俺に泣く資格などない。涙が溢れないようにギリッと唇を強く噛み締めた。
俺はSランクの魔力量を持った魔法使いなのに、なぜ彼女を救えないのだろう。空、風、火、水、地……どの魔法も使えるのにレベッカさんの役には立たない。エースだ、天才だなんて言われても何の意味もない。
これは多くの人々を救える力。だけど一番愛する女性を救うことはできない。
――なんて無力なんだろう。
彼女は自分の命を削ってまで俺を助けてくれたのに。それだけじゃない。俺が辛い時は寄り添ってくれて『大丈夫だ』と励まして勇気をくれた。疲れた時は抱き締めて癒してくれた。アリアちゃんのことだって……俺が苦しんでいたから自分の命を削って怪我の跡を治してくれたのだろう。
貰ってばかりの自分に嫌気が差してくる。彼女は多くを与えるのに、見返りを求めない。何もあげられない自分が不甲斐ない。
【どうやら諦めの悪い者が来ているようだな】
頭の中に声が響いた瞬間ぶわっと風が吹いたので、驚いて顔をあげるとそこには真っ赤な翼を持った美しい大きな鳥がいた。
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