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発展編
分かり合えること 13
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「瑞樹、どうした?」
「いえ、滝沢さんの方こそ不安そうな顔しているなって……あっすいません」
つい口が滑ってしまった。だって滝沢さんが珍しく随分ハラハラした表情をしていたから。
「それはだなぁ……この弁当を君のお兄さんに全部食われそうで不安なんだよ」
「クスっ兄さんは大食漢だから、すいません」
「おお瑞樹もこれ食ってみろよ。上手いぞ~なんだかハイカラな料理だ。ほらここに座れ」
兄さんに腕を引っ張られ、滝沢さんと兄さんとの間に座らされた。
「これ何て料理だ?」
「あぁこれはチリコンカンですよ。豆の缶詰にハーブやスパイスを加えました」
「初めて食べるぜ。で、こっちは何だ」
「タイの生春巻きに南タイのカレーで、タイ米も炊いてきましたよ。タイへ出張に行った時に食べてから気に入って、よく作っていましてね」
「へぇワールドワイドだな。お前……料理上手だな。瑞樹ちょっとこれ温めてくれないか」
「はい、兄さん」
台所でカレーやご飯を温め直すと、とてもいい匂いが漂ってきて、腹がぐうぅと鳴った。
うわっ恥ずかしい。聞かれてないよな?慌てて振り向くと、背後に滝沢さんが立っていたので驚いた。
「あっ兄は?」
「準備している間にシャワー浴びてくるってさ、だから今二人きりだ」
「そっそうですか。今日は僕が先に使わせてもらったから」
「ふぅん……瑞樹はいつも謙虚だな。お兄さんの顔も立てて……」
「兄には本当に良くしてもらっているので……あっそれより、今日はどうしてここに?兄が殴ってすいませんでした。どこか怪我しませんでしたか」
やっと滝沢さんの事情を窺う余裕が出て来た。
「それな。ホテルで会ったカメラマン覚えてるか。君を新郎になる人と間違えた奴さ」
「えぇ覚えていますが……それが?」
「アイツが空港で瑞樹が男と抱き合っているのを見たっていうもんだから、モヤッとしてしまってな」
「え……空港って?あっ……もしかして兄を迎えに行った時のことを見られていたんですか」
あれは……確かに誤解されるような光景だったかもしれない。相手が兄さんだからって油断していたかもしれない。誰が見ているかも分からない公衆の面前で……男同士抱き合ってしまった。
「……心配かけましたよね。ごめんなさい」
「いや、俺が勝手に勘違いしただけだ。君の兄さんだって最初から聞いていれば驚かなかったのに、すまんな」
「謝らないでください。兄のことをちゃんと話してなかった僕が悪いんです」
やっぱり全部僕が悪い。いつだって……こんな風に僕の行いや存在が、周りに悪い影響をもたらしてしまうんだ。
函館の家にいた時だって、そうだった。
潤……何でお前があんなことをするようになったのか、理解出来なかった。思春期を迎えたお前が興味を持ったのは、女性の躰ではなく僕の躰だった。
(よせっ!何でこんなことをするんだ?お願いだ。もう僕に触らないでくれ……)
(お前が悪いんだよ!俺の家にノコノコやってきて!だからこれ位いいだろう。減るもんじゃないし。ミズキを見ているとイラつくんだよ!)
理由を問うと……お前は僕の存在がイラつくからだと言い放った。
人の存在ってなんだろう?
僕の存在って一体……
潤に恨まれるために生きているのか。
母さんも広樹兄さんも他人の子供の僕に惜しみない愛を注いでくれたのに、潤だけは違った。でも頭の片隅では……現実社会ってそんなもんだろうとどこか諦めもついていた。
万人に好かれる人なんて、いない。
近しい人に嫌われ疎まれ嫌がらせされることもあるということを、潤から学んだ。
物を隠されたり捨てられたりするいやがらせだけだったら、まだ我慢できた。でも僕の躰を興奮した目で見て、触れてくるのだけは耐えられなかった。
だから潤がもっと成長して取り返しがつかなくなる前に、逃げようと思った。
「瑞樹……俺は怒ってるんじゃないよ。心から安堵している」
気が付くと潤のことを思い出してキツク唇を噛んでいたようで、滝沢さんが指先で解してくれた。
「あっ……」
「どうした?考えこんで……また暗い顔だ。俺の勘違いが瑞樹をそんな表情にさせてしまったのか。ごめんな、瑞樹のこと疑ってごめん。好きだ……君のこと。好きすぎて君のこととなると見境がなくなっているよな。余裕ないんだ。大人の俺だけど。それにしても君のお兄さんで良かったよ。本気で妬いたぞ」
思いやりのある優しさが溢れている人だ。
この人は……潤とは違う!
僕を疎んでいない。
僕の存在を認めてくれている。
「あっ……」
返事をしようと口を開くが、上手く言葉が出てこない。
滝沢さんの愛情があまりに優しくて、ありがたくて泣きそうになる。
彼の前だと涙腺が緩んでしまうのは何故だろう。
「あぁまた泣きそうな顔だ」
そのままいつも泣きそうな時に兄さんがしてくれたように、僕の後頭部を抱き寄せ胸元に抱いてくれた。
「駄目です……スーツが皺に」
「あぁ?そんなの構わないよ。君の方が大事だ」
浴室からは、ずっとシャワー音が聞こえていた。
だから……僕はそのまま滝沢さんのことを見上げ、瞼を閉じた。
今……ここで、あなたのキスが欲しい。
「いえ、滝沢さんの方こそ不安そうな顔しているなって……あっすいません」
つい口が滑ってしまった。だって滝沢さんが珍しく随分ハラハラした表情をしていたから。
「それはだなぁ……この弁当を君のお兄さんに全部食われそうで不安なんだよ」
「クスっ兄さんは大食漢だから、すいません」
「おお瑞樹もこれ食ってみろよ。上手いぞ~なんだかハイカラな料理だ。ほらここに座れ」
兄さんに腕を引っ張られ、滝沢さんと兄さんとの間に座らされた。
「これ何て料理だ?」
「あぁこれはチリコンカンですよ。豆の缶詰にハーブやスパイスを加えました」
「初めて食べるぜ。で、こっちは何だ」
「タイの生春巻きに南タイのカレーで、タイ米も炊いてきましたよ。タイへ出張に行った時に食べてから気に入って、よく作っていましてね」
「へぇワールドワイドだな。お前……料理上手だな。瑞樹ちょっとこれ温めてくれないか」
「はい、兄さん」
台所でカレーやご飯を温め直すと、とてもいい匂いが漂ってきて、腹がぐうぅと鳴った。
うわっ恥ずかしい。聞かれてないよな?慌てて振り向くと、背後に滝沢さんが立っていたので驚いた。
「あっ兄は?」
「準備している間にシャワー浴びてくるってさ、だから今二人きりだ」
「そっそうですか。今日は僕が先に使わせてもらったから」
「ふぅん……瑞樹はいつも謙虚だな。お兄さんの顔も立てて……」
「兄には本当に良くしてもらっているので……あっそれより、今日はどうしてここに?兄が殴ってすいませんでした。どこか怪我しませんでしたか」
やっと滝沢さんの事情を窺う余裕が出て来た。
「それな。ホテルで会ったカメラマン覚えてるか。君を新郎になる人と間違えた奴さ」
「えぇ覚えていますが……それが?」
「アイツが空港で瑞樹が男と抱き合っているのを見たっていうもんだから、モヤッとしてしまってな」
「え……空港って?あっ……もしかして兄を迎えに行った時のことを見られていたんですか」
あれは……確かに誤解されるような光景だったかもしれない。相手が兄さんだからって油断していたかもしれない。誰が見ているかも分からない公衆の面前で……男同士抱き合ってしまった。
「……心配かけましたよね。ごめんなさい」
「いや、俺が勝手に勘違いしただけだ。君の兄さんだって最初から聞いていれば驚かなかったのに、すまんな」
「謝らないでください。兄のことをちゃんと話してなかった僕が悪いんです」
やっぱり全部僕が悪い。いつだって……こんな風に僕の行いや存在が、周りに悪い影響をもたらしてしまうんだ。
函館の家にいた時だって、そうだった。
潤……何でお前があんなことをするようになったのか、理解出来なかった。思春期を迎えたお前が興味を持ったのは、女性の躰ではなく僕の躰だった。
(よせっ!何でこんなことをするんだ?お願いだ。もう僕に触らないでくれ……)
(お前が悪いんだよ!俺の家にノコノコやってきて!だからこれ位いいだろう。減るもんじゃないし。ミズキを見ているとイラつくんだよ!)
理由を問うと……お前は僕の存在がイラつくからだと言い放った。
人の存在ってなんだろう?
僕の存在って一体……
潤に恨まれるために生きているのか。
母さんも広樹兄さんも他人の子供の僕に惜しみない愛を注いでくれたのに、潤だけは違った。でも頭の片隅では……現実社会ってそんなもんだろうとどこか諦めもついていた。
万人に好かれる人なんて、いない。
近しい人に嫌われ疎まれ嫌がらせされることもあるということを、潤から学んだ。
物を隠されたり捨てられたりするいやがらせだけだったら、まだ我慢できた。でも僕の躰を興奮した目で見て、触れてくるのだけは耐えられなかった。
だから潤がもっと成長して取り返しがつかなくなる前に、逃げようと思った。
「瑞樹……俺は怒ってるんじゃないよ。心から安堵している」
気が付くと潤のことを思い出してキツク唇を噛んでいたようで、滝沢さんが指先で解してくれた。
「あっ……」
「どうした?考えこんで……また暗い顔だ。俺の勘違いが瑞樹をそんな表情にさせてしまったのか。ごめんな、瑞樹のこと疑ってごめん。好きだ……君のこと。好きすぎて君のこととなると見境がなくなっているよな。余裕ないんだ。大人の俺だけど。それにしても君のお兄さんで良かったよ。本気で妬いたぞ」
思いやりのある優しさが溢れている人だ。
この人は……潤とは違う!
僕を疎んでいない。
僕の存在を認めてくれている。
「あっ……」
返事をしようと口を開くが、上手く言葉が出てこない。
滝沢さんの愛情があまりに優しくて、ありがたくて泣きそうになる。
彼の前だと涙腺が緩んでしまうのは何故だろう。
「あぁまた泣きそうな顔だ」
そのままいつも泣きそうな時に兄さんがしてくれたように、僕の後頭部を抱き寄せ胸元に抱いてくれた。
「駄目です……スーツが皺に」
「あぁ?そんなの構わないよ。君の方が大事だ」
浴室からは、ずっとシャワー音が聞こえていた。
だから……僕はそのまま滝沢さんのことを見上げ、瞼を閉じた。
今……ここで、あなたのキスが欲しい。
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