幸せな存在 ~歩み寄る恋をしよう~

志生帆 海

文字の大きさ
472 / 1,865
成就編

深まる絆 8

しおりを挟む
 宗吾さんの幼い頃の写真を見出したら、夢中になってしまった。芽生くんも初めてだったようで、ふたりで前のめりだ。

「パパ、リレーのせんしゅにおうえんだんもしていたんだね。かっこいいな」
「うん、リレーの時の悔し涙はいいね。キリッとしている」
「よーし! ボクも負けないぞ。リレーもがんばる」
「芽生くんを応援しているよ」

 そんな話をしていると、玄関のインターホンが鳴った。

「あら、誰かしら?」
「あの、僕が出ます」
「ふふ、やっぱり男手があるといいわね」
 
 そう言ってもらえるのは嬉しい。

 僕は宗吾さんに抱かれる方だが……男としての矜恃は、やっぱり持っているわけで……こんな風にお母さんに頼りにされるのは気分がいい。

「はい?」

 インターホンに出ると、女性の声がした。あれ、この声は……

「あ、美智さんですか」
「まぁ瑞樹くんも来ていたのね」
「今、開けますね」

 美智さんは、宗吾さんのお兄さんの奥さんだ。

「お母さん、美智さんでした」
「あら? もしかしてまたおかずを持ってきてくれたのかも」

 案の定、玄関をあけると、大きな風呂敷を抱えた美智さんが立っていた。

「瑞樹くんも来ていたのね。芽生くんと?」
「はい、今日は芽生くんと幼稚園のあと、庭の手入れがてら寄らせていただきました」
「そうなのね、ちょうどよかったわ。実はコロッケを揚げたんだけど……食べきれないから持ってきたの」
「いい匂いがしますね」

 リビングに美智さんと入ると、すぐに芽生くんが飛んできた。

「あーお姉さんだ!」
「芽生くん、元気だった?」
「うん! 」

 美智さんが風呂敷を広げると、洋風なお重箱に美味しそうなコロッケがずらりと並んでいた。

「わ、美味しそうですね! 」
「ありがとう。作ったのはいいんだけど、揚げ物をしていたら急に食欲がなくなってしまったのよ。ムカムカして……ごはんの匂いが急に駄目になったみたい。あの、よかったら皆さんで食べてもらえるかしら」
「まぁ……そうなの? あら。でもそれって、もしかして……美智さんちょっといい?」

 お母さんと美智さんが台所でこっそり何か話している、何だろう?

 聞くつもりはなかったが、聞こえてきてしまった。

「もしかして……」
「あ、そういえば。二カ月……来ていないわ」
「まぁ、それは早く検査薬で確認してみたら? 」
「そうですね! もしそうだったら……嬉しいです」

 もしかして……あ、そういうことなのかな。

 お腹に赤ちゃん……?

 そう思うと、なんだか急にドキドキしてきた。

 お兄さんと美智さんの間に赤ちゃんがやってきたら、きっと楽しくなるだろうな。

「あの、やっぱり気になるので、今すぐ検査薬を買いに行ってきます」
「まぁ……でも、まだ気持ち悪いんでしょう。ここまで来るのにくたびれたでしょうし、少し休憩しなさい。そうだわ、憲吾に買ってきてもらうのはどう?」
「あ、実は憲吾さんも、もうすぐ来る予定になっているので、連絡してみようかしら。さっき電車に乗ったと連絡があったので」
「ちょうどいいじゃない! 」

 え……! 

 ということは、憲吾さんに妊娠検査薬を買ってくるように頼むってこと? 

 それっていいの?

 疑問がプカプカと浮かんでくる。

 真面目な憲吾さんが、真顔でドラッグストアで、それを買うシーンを想像してしまった。

「おにいちゃん、どうしたの?」
「ん、あ、いや。ふたりが幸せそうな話をしているみたいだなって」
「うんうん、おばあちゃんもお姉さんも、ワクワクしているね」
「そうだね」
「あれ? おにいちゃんもワクワクしてる?」
「わ! 顔に出ていた?」

 立ち聞きしてニヤつくなんて、まずいな。

「いいお顔だよ!」
「そ、そうかな」
「お兄ちゃんのそういうお顔だいすきだから、ボクもワクワクしてきた」

 ワクワク、楽しい気持ちって、連鎖していくのかな。

 じゃあ、宗吾さんにもしてもらいたいな。

「ねぇ芽生くん、パパもここに呼ぼうか」
「うん、みんなでよるごはんをたべようよ。コロッケいっぱいあったし」
「そうだね、久しぶりにここで集まろう!」

 なんだか楽しいことが起こりそうで、やっぱりワクワクする。

 いい予感でいっぱいだよ。



 


 
しおりを挟む
感想 85

あなたにおすすめの小説

この冬を超えたら恋でいい

天気
BL
夜の街で、凪は人生の底にいた。 古いアパートに帰る途中、父の残した借金の取り立てに絡まれ、逃げ場を失う。 そこに現れたのは、大手企業の社長・鷹宮だった。 偶然の救い。年齢も立場も違う二人は、その夜を境に交わることになる。 事情を多く語らない凪は、不幸が当たり前のように身にまとい、誰かに頼ることを知らない。 一方の鷹宮は、完璧な成功者として生きてきた男だった。 危険から守るため、鷹宮は凪を一時的に自宅へ迎え入れる。 冬の同居生活の中で、凪は少しずつ日常を取り戻していく。 大学へ通い、温かい食事をし、夜を一人で怯えずに眠る。 しかし、守られることに慣れない凪は、距離が近づくほどに自分から一歩引いてしまう。 それは、失うことを恐れる、健気で不器用な選択だった。 一方、鷹宮は気づいてしまう。 凪が笑うだけで、胸が満たされることに。 そんな自分の感情から凪を守るつもりで引いた距離が、 凪を遠ざけてしまう。 近づきたい。 けれど、踏み込めば壊してしまうかもしれない。 互いを思うほど、すれ違いは深くなる。 2人はこの冬を越えることができるのかーー

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

【bl】砕かれた誇り

perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。 「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」 「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」 「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」 彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。 「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」 「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」 --- いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。 私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、 一部に翻訳ソフトを使用しています。 もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、 本当にありがたく思います。

君の想い

すずかけあおい
BL
インターホンを押すと、幼馴染が複雑そうな表情で出てくる。 俺の「泊めて?」の言葉はもうわかっているんだろう。 今夜、俺が恋人と同棲中の部屋には、恋人の彼女が来ている。 〔攻め〕芳貴(よしき)24歳、燈路の幼馴染。 〔受け〕燈路(ひろ)24歳、苗字は小嶋(こじま)

処理中です...