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成就編
深まる絆 19
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いよいよ明日は、運動会だ。
あれから宗吾さんは毎朝おにぎりの練習を頑張った。僕も卵焼きをマスターしたので、お弁当作りに関しては大丈夫そうだ。
「葉山、お疲れさん。明日もよろしくな」
「ごめん。明日は」
「あっそうか、休みだったな。いよいよ運動会か。天気だといいな」
「悪いな。菅野は日曜日も出なのに」
「いいって、しっかり家族サービスして来いよ。新米パパさん! 」
新米パパか……ちょっと違うけれども、ちょっと嬉しい響きだ。
そういえば去年、幼稚園に向かうタクシーでも『若いパパさん』って言われたな。去年より今年は、もう少しパパさんっぽくなっているのだろうか。って、僕は何を考えているんだか……芽生くんのパパは宗吾さんなのに、たまに宗吾さんのポジションが眩しく感じてしまうなんて。
「うん、頑張ってくるよ」
「俺は……まぁ金森の面倒をみとくよ」
「はは、一番それが申し訳ないよ。ほんと、ごめんな」
10月は結婚式シーズンで花業界にとって繁忙期だ。本当は明日も仕事が入っていたが、特別に休ませてもらった。新人の教育を任されているのに申し訳ないが、どうしても譲れなかった。だって大切な芽生くんの幼稚園最後の運動会だから。
去年は宗吾さんがニューヨーク出張中だったので、僕が仕事を途中で抜け出して駆けつけた。一緒に踊ったマイムマイムはとても楽しかったけれども、その後、大変な事が起きて……あれは、もう済んだことだ。だが打たれた頬の痛みは、今思い出しても辛くなるな。
「あ、もう降りないと」
最寄り駅で宗吾さんと芽生くんと待ち合わせして、スーパーに買い物に行く約束をしていた。
改札を抜けると二人が笑顔で僕を迎えてくれていた。
去年の辛い思い出に引きずられそうになっていたので、その光景に安堵した。幸せはすぐ傍にある……大丈夫だ。
「おにいちゃん、おかえりさない」
「瑞樹、お疲れさん」
「ただいま! 」
駅でこのような挨拶をするのは照れ臭いが、『ただいま』と言える人の存在が嬉しい。
宗吾さんと芽生くんは大きなエコバッグを持って、いかにも特別な買い出しの雰囲気だったので、僕も運動会モードに一気に突入した。
「じゃ、スーパーに行くぞ」
「はい!」
最寄りのスーパーに行くと、普段より人が多かった。
「あれ? 鶏肉売り場が妙に混んでいますね」
「みな、唐揚げ目当てだろう」
「あぁなるほど」
確かに見渡すと、幼稚園くらいのお子さんがいそうなママたちが多いような。するとメイくんと同じ位の男の子が、こちらに向かってトコトコ走ってきた。
「メイ! 」
「コータくん! 」
芽生くんの親友のコータくん登場で、二人は手を取ってピョンピョンしている。
クスッ、可愛い光景だ。
「こんばんは、滝沢さんと瑞樹くん」
「あ、コータくんママも買い出しですか」
「えぇ明日のお弁当の具材を買いに」
「僕たちもです」
「あ、なら、早く行かないと鶏肉が売り切れちゃうわよ。それから明日、家族で座って観戦したかったら、場所取りは必須よ」
「場所取り?」
それは初耳だ。
「あの、皆さん早くから並ぶのですか」
宗吾さんのやる気に満ちた声が響く。
「開門は7時だけど、その前から並ぶのよ。まぁパパさんの仕事かな」
「なるほど、聞いておいてよかったです。知らなかったな」
「年長さんは出番多いから、前の席を取れるといいですね」
「えぇ頑張ります」
ってことは、明日何時に起きたらいいのかな。
「瑞樹、4時起きだな」
「う……はい。がんばります」
「俄然やる気が出て来たぞー」
「くすっ、宗吾さんって追い込まれるとやる気がでる人なんですね」
「そうか。瑞樹に対してはいつもだが」
「もう……っ、早く買い物をしましょう」
鶏もも肉は1kgも買い込んだ。それから生のたらこと鮭、卵と海苔。野菜はブロッコリーとミニトマトでいいかな。そうだ、果物もいるかな。
「芽生くん、フルーツは何がいいかな。りんご……梨? それとも葡萄がいい? 」
「んーっとね、ボクはイチゴがいい」
「うーん……ごめんね。苺はまだ季節外れで出ていないよ」
「えーそうなの? じゃあこれがいい」
「ん?……ええっ!! 」
それってチューブの練乳だよぉ……
苺もないにの、何故ここに売っているんだ?
僕へのいやがらせのようだ。
「おっ芽生。それってまさかの練乳じゃないか! ずいぶんとお目が高いな。よしよしパパが買ってやろう。ちょうど使いきって切らしていたしな」
「やったー! こいミルク味だーいすき!パパ~イチゴじゃなかったら、何につけたらおいしいかな」
「お! それはだなぁ」
「ちょ、ちょっと! 芽生くん虫歯になるから駄目だよ」
二人の会話に、ギョッとした。変な汗がドバっと出るよ。
あぁぁ……しかも、また胸の先っぽが期待に疼くし。
北海道旅行から、どんだけ練乳に引っ張られるんだかと苦笑してしまった。
危険回避で、今日は絶対宗吾さんとは絶対に別室だな。とにかく明日は早起きしないといけないのだから、練乳で遊んでいる場合じゃない。
っていうか、あれは旅限定だったはず!!
あーもう抹殺せねば。誰を? 何を?
頭の中で必死に自分の反応に言い訳していると……
「くすくすっ、瑞樹くんってば、さっきから百面相して、どうしちゃったの? 」
コータ君ママにばっちり見られていたようで、がっくしと肩を落とす羽目になった。
あれから宗吾さんは毎朝おにぎりの練習を頑張った。僕も卵焼きをマスターしたので、お弁当作りに関しては大丈夫そうだ。
「葉山、お疲れさん。明日もよろしくな」
「ごめん。明日は」
「あっそうか、休みだったな。いよいよ運動会か。天気だといいな」
「悪いな。菅野は日曜日も出なのに」
「いいって、しっかり家族サービスして来いよ。新米パパさん! 」
新米パパか……ちょっと違うけれども、ちょっと嬉しい響きだ。
そういえば去年、幼稚園に向かうタクシーでも『若いパパさん』って言われたな。去年より今年は、もう少しパパさんっぽくなっているのだろうか。って、僕は何を考えているんだか……芽生くんのパパは宗吾さんなのに、たまに宗吾さんのポジションが眩しく感じてしまうなんて。
「うん、頑張ってくるよ」
「俺は……まぁ金森の面倒をみとくよ」
「はは、一番それが申し訳ないよ。ほんと、ごめんな」
10月は結婚式シーズンで花業界にとって繁忙期だ。本当は明日も仕事が入っていたが、特別に休ませてもらった。新人の教育を任されているのに申し訳ないが、どうしても譲れなかった。だって大切な芽生くんの幼稚園最後の運動会だから。
去年は宗吾さんがニューヨーク出張中だったので、僕が仕事を途中で抜け出して駆けつけた。一緒に踊ったマイムマイムはとても楽しかったけれども、その後、大変な事が起きて……あれは、もう済んだことだ。だが打たれた頬の痛みは、今思い出しても辛くなるな。
「あ、もう降りないと」
最寄り駅で宗吾さんと芽生くんと待ち合わせして、スーパーに買い物に行く約束をしていた。
改札を抜けると二人が笑顔で僕を迎えてくれていた。
去年の辛い思い出に引きずられそうになっていたので、その光景に安堵した。幸せはすぐ傍にある……大丈夫だ。
「おにいちゃん、おかえりさない」
「瑞樹、お疲れさん」
「ただいま! 」
駅でこのような挨拶をするのは照れ臭いが、『ただいま』と言える人の存在が嬉しい。
宗吾さんと芽生くんは大きなエコバッグを持って、いかにも特別な買い出しの雰囲気だったので、僕も運動会モードに一気に突入した。
「じゃ、スーパーに行くぞ」
「はい!」
最寄りのスーパーに行くと、普段より人が多かった。
「あれ? 鶏肉売り場が妙に混んでいますね」
「みな、唐揚げ目当てだろう」
「あぁなるほど」
確かに見渡すと、幼稚園くらいのお子さんがいそうなママたちが多いような。するとメイくんと同じ位の男の子が、こちらに向かってトコトコ走ってきた。
「メイ! 」
「コータくん! 」
芽生くんの親友のコータくん登場で、二人は手を取ってピョンピョンしている。
クスッ、可愛い光景だ。
「こんばんは、滝沢さんと瑞樹くん」
「あ、コータくんママも買い出しですか」
「えぇ明日のお弁当の具材を買いに」
「僕たちもです」
「あ、なら、早く行かないと鶏肉が売り切れちゃうわよ。それから明日、家族で座って観戦したかったら、場所取りは必須よ」
「場所取り?」
それは初耳だ。
「あの、皆さん早くから並ぶのですか」
宗吾さんのやる気に満ちた声が響く。
「開門は7時だけど、その前から並ぶのよ。まぁパパさんの仕事かな」
「なるほど、聞いておいてよかったです。知らなかったな」
「年長さんは出番多いから、前の席を取れるといいですね」
「えぇ頑張ります」
ってことは、明日何時に起きたらいいのかな。
「瑞樹、4時起きだな」
「う……はい。がんばります」
「俄然やる気が出て来たぞー」
「くすっ、宗吾さんって追い込まれるとやる気がでる人なんですね」
「そうか。瑞樹に対してはいつもだが」
「もう……っ、早く買い物をしましょう」
鶏もも肉は1kgも買い込んだ。それから生のたらこと鮭、卵と海苔。野菜はブロッコリーとミニトマトでいいかな。そうだ、果物もいるかな。
「芽生くん、フルーツは何がいいかな。りんご……梨? それとも葡萄がいい? 」
「んーっとね、ボクはイチゴがいい」
「うーん……ごめんね。苺はまだ季節外れで出ていないよ」
「えーそうなの? じゃあこれがいい」
「ん?……ええっ!! 」
それってチューブの練乳だよぉ……
苺もないにの、何故ここに売っているんだ?
僕へのいやがらせのようだ。
「おっ芽生。それってまさかの練乳じゃないか! ずいぶんとお目が高いな。よしよしパパが買ってやろう。ちょうど使いきって切らしていたしな」
「やったー! こいミルク味だーいすき!パパ~イチゴじゃなかったら、何につけたらおいしいかな」
「お! それはだなぁ」
「ちょ、ちょっと! 芽生くん虫歯になるから駄目だよ」
二人の会話に、ギョッとした。変な汗がドバっと出るよ。
あぁぁ……しかも、また胸の先っぽが期待に疼くし。
北海道旅行から、どんだけ練乳に引っ張られるんだかと苦笑してしまった。
危険回避で、今日は絶対宗吾さんとは絶対に別室だな。とにかく明日は早起きしないといけないのだから、練乳で遊んでいる場合じゃない。
っていうか、あれは旅限定だったはず!!
あーもう抹殺せねば。誰を? 何を?
頭の中で必死に自分の反応に言い訳していると……
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