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小学生編
日々うらら 9
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「ん……宗吾さ……ん?」
温かな温もりに包まれて、目覚めた。
でも……まだ眠いし、身体も少し怠い。
そうだ、10日間も離れていたので、昨夜は互いに強く欲情してしまい、かなり濃密な時間を過ごした。だから記憶を失うように眠ってしまったんだ。
のそりと起き上がり乱れた前髪を掻き分けて、隣にいる宗吾さんに話かけた。
「宗吾さん……今、何時ですか」
返事がないので、サイドテーブルに手を伸ばして時計を確認すると、なんと8時30分だった。 えっ!? 芽生くんは8時10分には家を出ないと間に合わないのに、どうしよう!
「宗吾さん、た、大変です! 僕たち、寝坊してしまいました」
ゆさゆさと布団を揺らしてから、違和感を抱いた。
「宗吾さん……じゃない?」
布団を捲ると、焦げ茶色の大きなクマのぬいぐるみだった。(宗吾さんが出張中の時、身代わりに寝ていた子だ)
「どこ? どこですか」
慌てて飛び起きてリビングに行くと、家中がしーんと静まりかえっていた。
「芽生くん? 宗吾さん……?」
慌ててキョロキョロと見渡すと、机の上にメモが置いてあったので飛びついた。
……
瑞樹、落ち着け。もまずは深呼吸だ!
そのままベッドにUターンして、芽生からの手紙を読んでくれ。
気持ちが落ちつくよ。
……
宗吾さんからのメッセージに、一気に沸き起こりそうだった喪失感や恐怖を抑え込んで寝室に戻ると、あどけない文字の手紙を見つけた。
「これって……芽生くんからの手紙?」
一生懸命書いてくれたのが伝わるよ。
濃い鉛筆でぎっしり書かれた手紙に胸を打たれた
……
お兄ちゃん、おはよう!
ぼくとパパはいないけれど、すぐにかえってくるからね。
あのね……きょうはゆっくりねむってほしかったから、わざとおこさなかったんだ。
ぼくね、パパがいなかった10にちかん、とってもたのしかったよ。
お兄ちゃんがいてくれたから、さみしくなかったよ。
お兄ちゃんって……やさしくって、やさしくって、ほわんとしているんだもん。
アサガオのことも、たくさんありがとう。
みんなにみてもらうの、たのしみ。
じゃあ、がっこうにいってきます!
またあとでね!
ぜったいに、ぜったいに、だいじょうぶだよ!
お兄ちゃんのことがだいすきなメイより
……
「あっ……」
芽生くん、ありがとう!
君は、こんなに優しく強いお手紙を書けるようになったんだね。僕と初めて会った時は、手取り足取りお世話にしてあげないと生きていけない小さな子供だったのに。
今は、僕を励まし、僕を喜ばし、大切にしてくれる存在になった。
嬉しくて、ただ嬉しくて……涙がはらはらと溢れた。
僕……泣き虫になってしまった。
「うっ……芽生くん……宗吾さん」
手紙を胸に抱きしめて、泣いた。
ひとりが寂しくない。
ひとりが怖くない。
僕はもう一人ではないのが嬉しくて有り難くて……
朝から涙が止まらない。
手紙を汚さないようにしないと。
これは僕の宝物になる!!
カチャ――
僕が布団に蹲って泣いていると、扉が開いて宗吾さんが現れた。
「瑞樹、やっぱり泣いていたのか」
「うっ……」
宗吾さんを見たら安堵して、また涙が溢れてきてしまった。
「あー、泣くな。昨夜は俺のせいで疲れさせてしまったからさ、少しでも休んで欲しかったんだよ」
「宗吾さん……芽生くんのお手紙、ひっく……うれしくて」
「あー よしよし」
宗吾さんがベッドに駆け寄ってくれ、僕を抱きしめてくれる。
「宗吾さんの手紙がリビングにあったので、すぐに冷静になれました」
「じゃあ置いて正解だな」
「はい……焦って飛び起きたので」
「そうだと思ったよ。だが、この涙は……温かいな」
「う……」
広い背中に手を伸ばし、彼の匂いをスンと吸って、安堵した。
「芽生を学校まで送ってきたんだ」
「大丈夫でしたか」
「あぁ……芽生も芽生なりに成長しているんだな」
「はい、手紙の内容にはびっくりしました。こんなに心のこもった優しい手紙を書けるようになって」
「それは瑞樹が芽生を心から愛してくれているからだよ。瑞樹が注いでくれた愛情は、そうやって君に返ってくるんだよ」
宗吾さんの言葉って、どうしていつも揺らがないのだろう。情熱的でパワフルで、真っ直ぐな宗吾さんを家族の軸にしているから、僕と芽生くんはぶれずにいられる。
「瑞樹、お・は・よ・う」
「……宗吾さん」
啄むようなキスを浴びながら、いつもの朝がちゃんとやってきたことを噛みしめた。
「宗吾さん……僕は弱いです。ひとりで置いていかれるのが、この歳になっても苦手で怖い。とても臆病な小さな人間です」
「瑞樹、それでいい。人は弱いものだ。だから人と人は支え合って、交流して、心を生かしているんだよ。俺も人と優しい交流が出来る人でありたいよ。全部瑞樹が教えてくれた」
ギュッと抱きしめられ、背中を撫でられた。
恋人として裸で激しく求められるのも、朝日に包まれながら、家族として大切に包まれるのも好きだ。
「宗吾さん……僕は本当に幸せになりました」
「瑞樹、君の口からその言葉を聞けて、嬉しいよ」
「……はい。自然に出てきました」
今日から9月、間もなく秋がやってくる。そして色づきながら深まって、やがて冬になる。そうやって、また季節は巡っていく。
今は、どんな季節も僕と一緒に過ごして欲しい人が、すぐ傍にいてくれる。
「ずっとずっと……傍にいて下さい」
「離さないよ」
温かな温もりに包まれて、目覚めた。
でも……まだ眠いし、身体も少し怠い。
そうだ、10日間も離れていたので、昨夜は互いに強く欲情してしまい、かなり濃密な時間を過ごした。だから記憶を失うように眠ってしまったんだ。
のそりと起き上がり乱れた前髪を掻き分けて、隣にいる宗吾さんに話かけた。
「宗吾さん……今、何時ですか」
返事がないので、サイドテーブルに手を伸ばして時計を確認すると、なんと8時30分だった。 えっ!? 芽生くんは8時10分には家を出ないと間に合わないのに、どうしよう!
「宗吾さん、た、大変です! 僕たち、寝坊してしまいました」
ゆさゆさと布団を揺らしてから、違和感を抱いた。
「宗吾さん……じゃない?」
布団を捲ると、焦げ茶色の大きなクマのぬいぐるみだった。(宗吾さんが出張中の時、身代わりに寝ていた子だ)
「どこ? どこですか」
慌てて飛び起きてリビングに行くと、家中がしーんと静まりかえっていた。
「芽生くん? 宗吾さん……?」
慌ててキョロキョロと見渡すと、机の上にメモが置いてあったので飛びついた。
……
瑞樹、落ち着け。もまずは深呼吸だ!
そのままベッドにUターンして、芽生からの手紙を読んでくれ。
気持ちが落ちつくよ。
……
宗吾さんからのメッセージに、一気に沸き起こりそうだった喪失感や恐怖を抑え込んで寝室に戻ると、あどけない文字の手紙を見つけた。
「これって……芽生くんからの手紙?」
一生懸命書いてくれたのが伝わるよ。
濃い鉛筆でぎっしり書かれた手紙に胸を打たれた
……
お兄ちゃん、おはよう!
ぼくとパパはいないけれど、すぐにかえってくるからね。
あのね……きょうはゆっくりねむってほしかったから、わざとおこさなかったんだ。
ぼくね、パパがいなかった10にちかん、とってもたのしかったよ。
お兄ちゃんがいてくれたから、さみしくなかったよ。
お兄ちゃんって……やさしくって、やさしくって、ほわんとしているんだもん。
アサガオのことも、たくさんありがとう。
みんなにみてもらうの、たのしみ。
じゃあ、がっこうにいってきます!
またあとでね!
ぜったいに、ぜったいに、だいじょうぶだよ!
お兄ちゃんのことがだいすきなメイより
……
「あっ……」
芽生くん、ありがとう!
君は、こんなに優しく強いお手紙を書けるようになったんだね。僕と初めて会った時は、手取り足取りお世話にしてあげないと生きていけない小さな子供だったのに。
今は、僕を励まし、僕を喜ばし、大切にしてくれる存在になった。
嬉しくて、ただ嬉しくて……涙がはらはらと溢れた。
僕……泣き虫になってしまった。
「うっ……芽生くん……宗吾さん」
手紙を胸に抱きしめて、泣いた。
ひとりが寂しくない。
ひとりが怖くない。
僕はもう一人ではないのが嬉しくて有り難くて……
朝から涙が止まらない。
手紙を汚さないようにしないと。
これは僕の宝物になる!!
カチャ――
僕が布団に蹲って泣いていると、扉が開いて宗吾さんが現れた。
「瑞樹、やっぱり泣いていたのか」
「うっ……」
宗吾さんを見たら安堵して、また涙が溢れてきてしまった。
「あー、泣くな。昨夜は俺のせいで疲れさせてしまったからさ、少しでも休んで欲しかったんだよ」
「宗吾さん……芽生くんのお手紙、ひっく……うれしくて」
「あー よしよし」
宗吾さんがベッドに駆け寄ってくれ、僕を抱きしめてくれる。
「宗吾さんの手紙がリビングにあったので、すぐに冷静になれました」
「じゃあ置いて正解だな」
「はい……焦って飛び起きたので」
「そうだと思ったよ。だが、この涙は……温かいな」
「う……」
広い背中に手を伸ばし、彼の匂いをスンと吸って、安堵した。
「芽生を学校まで送ってきたんだ」
「大丈夫でしたか」
「あぁ……芽生も芽生なりに成長しているんだな」
「はい、手紙の内容にはびっくりしました。こんなに心のこもった優しい手紙を書けるようになって」
「それは瑞樹が芽生を心から愛してくれているからだよ。瑞樹が注いでくれた愛情は、そうやって君に返ってくるんだよ」
宗吾さんの言葉って、どうしていつも揺らがないのだろう。情熱的でパワフルで、真っ直ぐな宗吾さんを家族の軸にしているから、僕と芽生くんはぶれずにいられる。
「瑞樹、お・は・よ・う」
「……宗吾さん」
啄むようなキスを浴びながら、いつもの朝がちゃんとやってきたことを噛みしめた。
「宗吾さん……僕は弱いです。ひとりで置いていかれるのが、この歳になっても苦手で怖い。とても臆病な小さな人間です」
「瑞樹、それでいい。人は弱いものだ。だから人と人は支え合って、交流して、心を生かしているんだよ。俺も人と優しい交流が出来る人でありたいよ。全部瑞樹が教えてくれた」
ギュッと抱きしめられ、背中を撫でられた。
恋人として裸で激しく求められるのも、朝日に包まれながら、家族として大切に包まれるのも好きだ。
「宗吾さん……僕は本当に幸せになりました」
「瑞樹、君の口からその言葉を聞けて、嬉しいよ」
「……はい。自然に出てきました」
今日から9月、間もなく秋がやってくる。そして色づきながら深まって、やがて冬になる。そうやって、また季節は巡っていく。
今は、どんな季節も僕と一緒に過ごして欲しい人が、すぐ傍にいてくれる。
「ずっとずっと……傍にいて下さい」
「離さないよ」
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