冷徹社長は幼馴染の私にだけ甘い

森本イチカ

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過保護の社長2

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「失礼します……」


 中に入るとワークチェアに座っていた優が凛子の姿を確認すると優しく微笑み立ち上がった。


「凛子、入社おめでとう。よく頑張ったね」


 優は凛子の目の前に立ち、嬉しそうに凛子の頭を撫でた。


「社長。あ、ありがとうございます」
「社長だなんて他人行儀だな。いつものように名前で呼んでくれ」


 身長の高い優は腰を曲げて凛子の顔を覗き込んだ。


「優ちゃん。ありがとう。そしてよろしくお願いします」
「うん。凛子のこれからの活躍、期待しているよ。念願の社会人だもんな」
「優ちゃんの力になれるように頑張るね」


 優は目を細めて「あぁ」と頷いた。優は周りからクールだの、冷徹だのと冷めた印象を持たれやすいが凛子はそう思った事は一度もない。キリッとした瞳は笑うと優しくなる。凛子、凛子と優しい声で名前を呼んでくれる。凛子がまだ学生の時は勉強を教えてくれて、正解すると優は凛子の頭を優しく撫でながら「よくできました」と褒めてくれた。美味しいご飯だって何度も作ってもらったことがある。とにかく凛子は優に対してクールなイメージは一つもないのだ。


 凛子の中で優は常に自分の中で大切で一番の存在。優を好きだという気持ちは息をするように当たり前のこと。もし、優に対しての好きという気持ちを諦めなければならなくなった時、自分はきっと深い深い海の底に沈んでいくように息が吸えずにもがくだろう。上にあがりたい、優に助けてくれと手を伸ばしてしまう自分を想像できてしまう。


 優が自分に優しくしてくれるのは妹のような存在だから。それは十分に分かっている。でも、やっと優と少しでも並べる社会人になったのだ。少しくらい大人扱いしてもらいたいと凛子は思った。


「凛子は広報部に配属になったんだよな? もし、なにか困ったことがあったらすぐに俺に言うんだよ。必ず助けてあげるから」
「優ちゃん……」


 凛子は唇をきゅっと噛む。お兄ちゃんのような言葉に嬉しさと悔しさが入り交じる。キュンとする大人の余裕を感じる言葉だが、やはり子供扱いされている気がして凛子は素直にありがとうが言えなかった。


「本当優は凛子ちゃんに対して過保護なんだよな~」


 ガチャット扉が開き、優の第一秘書、村上一樹(むらかみかずき)が社長室に入ってきた。茶髪の髪を短く切りそろえた一樹は見た目は優とは正反対の爽やか系。一樹も優同様、凛子の記憶ではモテているイメージしかなく、一樹は優の二個年下で高校時代の後輩だ。年齢差関係なく優と一樹はフラットな関係を築いている。


「あっ、一樹くんっ……じゃなくて、村上さん。お久し振りです」
「凛子ちゃん久しぶり~! 普通に今まで通り一樹くんでいいから。それより、念願の就職おめでとう。念願の大人の女に一歩近づいたな!」


 一樹は凛子に向かってパチンとウインクをした。一樹は凛子が優のことを好きなことを知っている。むしろ凛子の気持ちを知らないのは鈍感な優、本人くらいだ。


 麗奈は自分だけが蚊帳の外が面白くないのか、キッと鋭い眼光で凛子を人睨みしてからふらっと社長室を出ていった。


「一樹、お前はもういいから仕事に戻れ」


 優は一樹に冷たく言い放つ。こういうところが他人には冷徹に見えてしまう所なのだろう。言われた一樹は何も気にせず「はいよ~」と明るく軽い返事で社長室を出ていった。


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