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女の戦い3
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(あっ、この声……)
何度か聞いたことのある声に凛子はそっと息を潜めた。今自分が出ていったら大変なことになりそうなのが目に見えたからだ。
「れ、麗奈さんっ……」
女性社員の声色が固く、怯えた色に変わった。
「あなた達、こうして本人のいない狭~いトイレでしか何も言えないのかしら? だから社長ファンクラブとか言ってみんな平等的なことを言ってるけど、それはただの逃げよね。自分に自信がないだけ。だから周りを巻き込んで弱いもので固まる。本当、街灯に集まる虫けらね。そんな自分って恥ずかしくないわけ? まぁあなた達虫けらが社長に告白しようが何しようが私達は全く痛くも痒くもないわよ。ねぇ、凛子さん?」
……はい?
(わわわわ私がここにいるってバレてる!?)
「早く出てきなさいよ」
麗奈に催促され、凛子はしぶしぶ個室から出た。視界に映るのは堂々とピンヒールで腕を組んで立っている麗奈と顔色を真っ青にした見たことのない女性社員二人組だ。
「ど、どうもこんにちは……」
凛子はヒクヒクと顔を引き攣らせて三人を見た。なんとも言えない気まずい雰囲気が四人を包み込む。
「凛子さん、なんか言ってやんなさいよ。言われっぱなしで悔しくないわけ?」
キッと鋭い目線で麗奈に見られ、味方されているのか敵視されているのか良くわからない。それでも麗奈のさっきの言葉は凛子の胸にすごく突き刺さっていた。
自分に自信がないから逃げているのは自分も同じだ。悪口を言われようがじっと耐えてきた。悔しい気持ちをぐっと飲み込んで耐えてきた。飲み込んできたけれど悔しいに決まってる。悔しくて、悔しくて、どうして自分ばっかり言われなきゃいけないんだと。
あぁ! もう言ってやる。
「……私は、確かに麗奈さんみたいに美人でもないですけど、あ、あなた達みたいに心までブスではありません! 私は社長にずっと片思いしてるんです! 絶対に優ちゃんのこと諦めませんっ!」
凛子はハァハァと全力で百メートル走でもした後かのように息切れしている。自分のことを目の敵にされている人に面と向かって気持ちを伝えるのは初めてだ。なんだか、すごくスッキリした。スッキリしたけれど反動で手足がガクガクと小さく震えている。
凛子の勢いに女性社員は引きつった顔のまま女子トイレから逃げるように出ていった。残された凛子は恐る恐る麗奈の方を見る。すると麗奈は満足そうに笑っていた。
何度か聞いたことのある声に凛子はそっと息を潜めた。今自分が出ていったら大変なことになりそうなのが目に見えたからだ。
「れ、麗奈さんっ……」
女性社員の声色が固く、怯えた色に変わった。
「あなた達、こうして本人のいない狭~いトイレでしか何も言えないのかしら? だから社長ファンクラブとか言ってみんな平等的なことを言ってるけど、それはただの逃げよね。自分に自信がないだけ。だから周りを巻き込んで弱いもので固まる。本当、街灯に集まる虫けらね。そんな自分って恥ずかしくないわけ? まぁあなた達虫けらが社長に告白しようが何しようが私達は全く痛くも痒くもないわよ。ねぇ、凛子さん?」
……はい?
(わわわわ私がここにいるってバレてる!?)
「早く出てきなさいよ」
麗奈に催促され、凛子はしぶしぶ個室から出た。視界に映るのは堂々とピンヒールで腕を組んで立っている麗奈と顔色を真っ青にした見たことのない女性社員二人組だ。
「ど、どうもこんにちは……」
凛子はヒクヒクと顔を引き攣らせて三人を見た。なんとも言えない気まずい雰囲気が四人を包み込む。
「凛子さん、なんか言ってやんなさいよ。言われっぱなしで悔しくないわけ?」
キッと鋭い目線で麗奈に見られ、味方されているのか敵視されているのか良くわからない。それでも麗奈のさっきの言葉は凛子の胸にすごく突き刺さっていた。
自分に自信がないから逃げているのは自分も同じだ。悪口を言われようがじっと耐えてきた。悔しい気持ちをぐっと飲み込んで耐えてきた。飲み込んできたけれど悔しいに決まってる。悔しくて、悔しくて、どうして自分ばっかり言われなきゃいけないんだと。
あぁ! もう言ってやる。
「……私は、確かに麗奈さんみたいに美人でもないですけど、あ、あなた達みたいに心までブスではありません! 私は社長にずっと片思いしてるんです! 絶対に優ちゃんのこと諦めませんっ!」
凛子はハァハァと全力で百メートル走でもした後かのように息切れしている。自分のことを目の敵にされている人に面と向かって気持ちを伝えるのは初めてだ。なんだか、すごくスッキリした。スッキリしたけれど反動で手足がガクガクと小さく震えている。
凛子の勢いに女性社員は引きつった顔のまま女子トイレから逃げるように出ていった。残された凛子は恐る恐る麗奈の方を見る。すると麗奈は満足そうに笑っていた。
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