10 / 35
10 自分の生き方
しおりを挟む
『完全無欠』
誰からも必要とされている、完璧な存在の勇者様。
『不完全』
何も突出しているモノがなくて、誰にも特に必要とされない荷物番の俺。
こんな正反対の俺たちは永遠に交わる事はないし、俺の声は絶対にヒカリ君には届かない。
それは分かっている。分かっているけど────……。
「かぼちゃの煮物、ブタの角煮……。」
ボソッと呟いた声にわずかにヒカリ君の方が揺れる。
「あとは、インゲンの鰹節あえに山芋の醤油焼き!」
────ピクピク……!
今度は耳が僅かに動いた。
多分これはヒカリ君の好物になったモノのはず。
食べた時に少しだけ纏う空気が柔らかくなったから。
「あとは~……どこでも寝転がって寝れるけど、本当はそれが嫌なんだ。意外に綺麗好きなんだよな~。
干したての布団もあるからさ、いつでも帰ってこいよ。」
見てない所で干したての布団に顔を埋めてウットリしているのも知っている!
俺はそれを思い出し、キラッ!と目を光らせる。
どんなにうっとおしいって言われたって、俺はいつだって全力で人と関わろうと決めている。
だから人生の中で関わる事ができた人の事は、沢山見て、聞いて、話して自分なりの答えを出してきた。
住んでいる世界が、持っているモノが、境遇が、年齢が、外見が────。
何もかも違えど、こうしてせっかく出会えたのだから、俺はヒカリ君ともっと関わってみたいと思っている。
理解したいとか、支えたいとかそんな大層なことは思っていない。
ただ俺は俺の生き方を貫きたいだけなんだ。俺が今まで生きてきた人生で選んだ生き方を。
そう思って掛けた言葉だったが、ヒカリ君はソロ……と、こちらを振り向こうと顔を僅かに動かし…………。
「ちょっと!!聞いてるの!!?無能力者のくせに選ばれし戦士の私を無視するんじゃないわよ!!
この加齢臭モンスター!!」
────ビシッ!!と目の前で指を差されて、意識は突然現実へと戻る。
あ……あれれぇぇ~????
また白昼夢を見た気持ちで周りをキョロキョロすると、それについてもギャーギャーとアイリーンが文句を言うのでとりあえず謝って落ち着かせた。
最近ちょくちょく飛んでしまう意識に危機感を覚えたが、近所のおばあちゃんが「現実も夢の一種よ~。」って言ってたし、まぁいっか!と笑って流した。
ガミガミと文句を言われながら、ハハハ~と笑っていると────。
「相変わらずの能天気な間抜け面。いいね、役立たずは暇でさ。」
背後から聞き覚えのある声がして、俺は慌てて振り返ると一週間ぶりに見る冷たい瞳が。
「あ、おかえり。」
そう言うと、ヒカリ君は眉を潜めながら俺を無視して木の根本に座る。
『ご飯ちょうだい』
さもそう言わんがばかりの『お座り』と『待て』を同時に行って待つヒカリ君は、悲しい程いつも通り!
俺はやれやれとため息をつきながら、先程出来立ての『豆腐の揚げ出し醤油漬け』を盛り付け、更にヒカリ君の好物をこれでもかと皿に追加でいれて差し出してやると、パクパクと文句も言わずに大人しく食べだす。
その食べっぷりにニッコリしながら、煮出したばかりのお茶も渡してやると────今回はその手を振り払う事なくお茶を受け取ってくれた。
誰からも必要とされている、完璧な存在の勇者様。
『不完全』
何も突出しているモノがなくて、誰にも特に必要とされない荷物番の俺。
こんな正反対の俺たちは永遠に交わる事はないし、俺の声は絶対にヒカリ君には届かない。
それは分かっている。分かっているけど────……。
「かぼちゃの煮物、ブタの角煮……。」
ボソッと呟いた声にわずかにヒカリ君の方が揺れる。
「あとは、インゲンの鰹節あえに山芋の醤油焼き!」
────ピクピク……!
今度は耳が僅かに動いた。
多分これはヒカリ君の好物になったモノのはず。
食べた時に少しだけ纏う空気が柔らかくなったから。
「あとは~……どこでも寝転がって寝れるけど、本当はそれが嫌なんだ。意外に綺麗好きなんだよな~。
干したての布団もあるからさ、いつでも帰ってこいよ。」
見てない所で干したての布団に顔を埋めてウットリしているのも知っている!
俺はそれを思い出し、キラッ!と目を光らせる。
どんなにうっとおしいって言われたって、俺はいつだって全力で人と関わろうと決めている。
だから人生の中で関わる事ができた人の事は、沢山見て、聞いて、話して自分なりの答えを出してきた。
住んでいる世界が、持っているモノが、境遇が、年齢が、外見が────。
何もかも違えど、こうしてせっかく出会えたのだから、俺はヒカリ君ともっと関わってみたいと思っている。
理解したいとか、支えたいとかそんな大層なことは思っていない。
ただ俺は俺の生き方を貫きたいだけなんだ。俺が今まで生きてきた人生で選んだ生き方を。
そう思って掛けた言葉だったが、ヒカリ君はソロ……と、こちらを振り向こうと顔を僅かに動かし…………。
「ちょっと!!聞いてるの!!?無能力者のくせに選ばれし戦士の私を無視するんじゃないわよ!!
この加齢臭モンスター!!」
────ビシッ!!と目の前で指を差されて、意識は突然現実へと戻る。
あ……あれれぇぇ~????
また白昼夢を見た気持ちで周りをキョロキョロすると、それについてもギャーギャーとアイリーンが文句を言うのでとりあえず謝って落ち着かせた。
最近ちょくちょく飛んでしまう意識に危機感を覚えたが、近所のおばあちゃんが「現実も夢の一種よ~。」って言ってたし、まぁいっか!と笑って流した。
ガミガミと文句を言われながら、ハハハ~と笑っていると────。
「相変わらずの能天気な間抜け面。いいね、役立たずは暇でさ。」
背後から聞き覚えのある声がして、俺は慌てて振り返ると一週間ぶりに見る冷たい瞳が。
「あ、おかえり。」
そう言うと、ヒカリ君は眉を潜めながら俺を無視して木の根本に座る。
『ご飯ちょうだい』
さもそう言わんがばかりの『お座り』と『待て』を同時に行って待つヒカリ君は、悲しい程いつも通り!
俺はやれやれとため息をつきながら、先程出来立ての『豆腐の揚げ出し醤油漬け』を盛り付け、更にヒカリ君の好物をこれでもかと皿に追加でいれて差し出してやると、パクパクと文句も言わずに大人しく食べだす。
その食べっぷりにニッコリしながら、煮出したばかりのお茶も渡してやると────今回はその手を振り払う事なくお茶を受け取ってくれた。
149
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる
kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。
かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。
そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。
「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」
おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)
家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
シレッとBL大賞に応募していました!良ければ投票よろしくおねがいします!
俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします
椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう!
こうして俺は逃亡することに決めた。
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる