3 / 105
3
しおりを挟む
義母は顔を満面の笑みにして第二夫人である連花へ、そして自身の息子である涼珩へと視線を向けました。
そして最後に、ちらっと見下すような笑顔を浮かべて蘭珠を一瞥します。
「全くねぇ、それに比べたって……」
そこから続く言葉は分かっていました。
「一年もこの名門凌家に居たって言うのに、何にも跡継ぎの気配がない夫人だって居るのにねぇ」
ちくりと蘭珠を刺す言葉をこぼした姑に、いつものように連花が続けます。
「あらぁ、誰のお話なのかしら……連花でしたら、そんなことになったら恥ずかしくって嫁ぎ先にいられませんわぁ!」
「全くそうよ、わたくしの代の頃でしたらすぐに嫁ぎ先へ頭を下げて、自分から実家へ帰ります……なんて申し出なくてはいけないわ」
「お義母様、連花は今だってそうする覚悟でしてよぉ」
「連花は本当に出来た嫁ですわね、それに比べて…………」
部屋には二人の笑い声が響いていますが、蘭珠にはとても寒々しく感じられました。
はっきりと言うまでもなく、その嫌味は蘭珠に向けられているものだからです。
涼珩の父であり、名門凌家当主……つまり蘭珠の義父は一年のほとんどを勤務地の首都にて過ごしています。
名門凌家の領地から首都へは、馬車で数日ほど。
そのため、現在屋敷において実権を握っているのは姑の存在でした。
その姑と、姑がお気に入りである第二夫人の連花は二人で楽しそうに会話を弾ませています。
少しばかりのお祝いの空気があったはずの食卓も、今は既に蘭珠の悪口で盛り上がる二人がいるばかり。
それでも、その二人にとっては悪口が何よりの娯楽だというように生き生きと明るい顔をしていました。
(はぁ……また始まってしまいましたわ)
そして最後に、ちらっと見下すような笑顔を浮かべて蘭珠を一瞥します。
「全くねぇ、それに比べたって……」
そこから続く言葉は分かっていました。
「一年もこの名門凌家に居たって言うのに、何にも跡継ぎの気配がない夫人だって居るのにねぇ」
ちくりと蘭珠を刺す言葉をこぼした姑に、いつものように連花が続けます。
「あらぁ、誰のお話なのかしら……連花でしたら、そんなことになったら恥ずかしくって嫁ぎ先にいられませんわぁ!」
「全くそうよ、わたくしの代の頃でしたらすぐに嫁ぎ先へ頭を下げて、自分から実家へ帰ります……なんて申し出なくてはいけないわ」
「お義母様、連花は今だってそうする覚悟でしてよぉ」
「連花は本当に出来た嫁ですわね、それに比べて…………」
部屋には二人の笑い声が響いていますが、蘭珠にはとても寒々しく感じられました。
はっきりと言うまでもなく、その嫌味は蘭珠に向けられているものだからです。
涼珩の父であり、名門凌家当主……つまり蘭珠の義父は一年のほとんどを勤務地の首都にて過ごしています。
名門凌家の領地から首都へは、馬車で数日ほど。
そのため、現在屋敷において実権を握っているのは姑の存在でした。
その姑と、姑がお気に入りである第二夫人の連花は二人で楽しそうに会話を弾ませています。
少しばかりのお祝いの空気があったはずの食卓も、今は既に蘭珠の悪口で盛り上がる二人がいるばかり。
それでも、その二人にとっては悪口が何よりの娯楽だというように生き生きと明るい顔をしていました。
(はぁ……また始まってしまいましたわ)
88
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
王太子に婚約破棄されてから一年、今更何の用ですか?
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しいます。
ゴードン公爵家の長女ノヴァは、辺境の冒険者街で薬屋を開業していた。ちょうど一年前、婚約者だった王太子が平民娘相手に恋の熱病にかかり、婚約を破棄されてしまっていた。王太子の恋愛問題が王位継承問題に発展するくらいの大問題となり、平民娘に負けて社交界に残れないほどの大恥をかかされ、理不尽にも公爵家を追放されてしまったのだ。ようやく傷心が癒えたノヴァのところに、やつれた王太子が現れた。
婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~
ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された
「理由はどういったことなのでしょうか?」
「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」
悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる
それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。
腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから
越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。
新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。
一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?
「義妹に譲れ」と言われたので、公爵家で幸せになります
恋せよ恋
恋愛
「しっかり者の姉なら、婚約者を妹に譲ってあげなさい」
「そうだよ、バネッサ。君なら、わかるだろう」
十五歳の冬。父と婚約者パトリックから放たれた無慈悲な言葉。
再婚相手の連れ子・ナタリアの図々しさに耐えてきたバネッサは、
その瞬間に決意した。
「ええ、喜んで差し上げますわ」
将来性のない男も、私を軽んじる家族も、もういらない。
跡継ぎの重責から解放されたバネッサは、その類まれなる知性を見込まれ、
王国の重鎮・ヴィンセント公爵家へ嫁ぐことに。
「私は、私を一番に愛してくれる場所で幸せになります!」
聡明すぎる令嬢による、自立と逆転のハッピーエンド。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる