姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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蘭珠ランジュは、平静を装った……大声ではなくとも、静かに通る声を出して場の面々へと告げました。

「……それでは、わたくしは先に自室へ戻らせて頂きます」

(どう見ても、お話にも不要なようですし……)

それが証拠に、姑と連花リェンホア蘭珠ランジュのその言葉も姿も、まるでこの部屋にいなかったような対応をしてこちらへ目線も寄越しません。

「新しい部屋を用意しなくてはならないねぇ」

「家具も全て新調いたしましょうお義母様ぁ、いっそのことお義母様のお使いの物も手配してぇ……」

「あら、いいわね。連花リェンホアは本当に気が利くこと。ねぇ、涼珩リャンハン……?」

「え?あ、あぁ……そうですね、お母様……」

二人の会話は留まることを知らないでいて。
蘭珠ランジュは再び心の中だけでため息をついて、そっと席を立ちました。

涼珩リャンハンは、姑と第二夫人に挟まれて曖昧な相槌を打っていたのですが、蘭珠ランジュの為に広間の扉が開かれてるのを見て、やっと彼女が部屋を出ていこうとしているのに気付いたようでした。

心ここにあらず、と言ったところだったので……先ほどの蘭珠ランジュの声は、彼にだけは本当に聞こえなかったのかもしれません。

「あ……蘭珠ランジュ!ちょっと待て、まだ話は……」

ガタンッ!

慌てたように立ち上がる涼珩リャンハン。使用人が椅子をずらす前にそうしたものですから、脚がしっかりと茶器へ当たってしまい……
茶器があえなく倒れてしまいます。淹れたての紅茶が、卓上へこぼれて行きました。

──ばしゃっ

「ぎゃあっ!?」

「お、お義母様!」

膝の上に熱々の紅茶を浴びてしまったのでしょうか、そんな悲鳴が聞こえました。
扉を閉じるときになって聞こえたその声……ですが、今度は蘭珠ランジュが知らないふりをして、そっと静かに退出をしました。



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