姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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……企みは上々のように見えました。
このような細工を思いついたのは夫人が初めてというわけではありません。

財政が逼迫している良家という存在は、上流や下級に関わらずそう珍しいことではなくて……
それだけ、先人たちが知恵を重ねて、どうにか資産を逃がさないように編み出した手法のうちの一つです。

(そう……こうやって仕込みさえしておけば、役人の来襲だって何てことはないよ)

従業員を取りまとめている男性にもそう言いつけ、夫人は椅子から立ち上がりました。

「それじゃ、後は任せたからね。また近いうちに見に来るから……それから、今後のことだけど……」

使用人に預けていた帽子を被り直すと、扉の方へ歩みを進めながらいくつか指示も送ります。
それらの一つ一つにメモを取ったり、また暗記をしながら男性は頷きます。

「はい、かしこまりました。おい、お前たち。奥様がお帰りだ」

男性の一声で従業員たちは皆立ち上がり、顔を伏せるようにして夫人を見送ります。
そのまま、男性だけは施設の外まで来て、馬車へと乗り込む夫人の姿を見届けました。

馬車の窓から日よけのカーテンを少しだけ開けて、夫人は外にいる男性へと短く告げます。

「良いかい、前々から言ってはいるけどね。くれぐれも、直接屋敷の方へ来るなんてことがないように」

「は!それはもう重々皆にも言い聞かせてありますので……道中、お気を付けくださいませ」

男性の言葉を聞き終えた夫人がカーテンを閉め、御者へ短い合図を送ります。
馬車はまた、来た道を戻って侯爵家の屋敷へと静かに走り出しました。
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