姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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夫人は慌てて膝をつき、涙を浮かべて夫の袖を掴みます。

「そんな……あたしだって、そんなつもりじゃなかったのに!大体その持参金の話だってただの誤解で……あの女がややこしいものを持ってくるから……!」


夫人は必死に言い訳を試みますが、夫の怒りは収まりませんでした。眉をひそめ苛立ちを抑えきれないように、夫人の手を払います。

「これで凌家の面目が丸つぶれだぞ。一度とは言え縁のあった者と役人が組んで返還を求めてくるなんて、どれだけ恥ずかしいことか分らんのか?……いや、面目どころか…… 」

その先を、当主は口にすることが出来ませんでした。没落、という二文字が浮かんだからです。
夫人は唇を噛みました。しおらしいふりをしても絆されない夫に対しても苛立ちはありました。

「それもこれもあの女が悪いに決まってるじゃないですか……こんなのは騙されたようなもんですよ!わざと凌家を陥れようとしてるに決まってるんだ、徹底的に戦わなくちゃなりません」

妻の声をほとんど聞いていないような表情で、当主は通達を睨みつけて息を吐きます。

「しかしこれは……こっちの訴えはどういうことなんだ」

「え……?」

「ここだ、持参金の返還とは別に……出ていった第一夫人、その名誉回復のための訴状が届いている」

「名誉だって……?」

夫人は訴状を覗きます。そこには……彼らにとっては意味の分からない文章が並んでいました。




……その話し合いは書斎にて、当主と夫人の二人だけで行われました。

子息である涼珩リャンハンはもちろん、その元第二夫人……今となっては正夫人となった連花リェンホアは当然不参加にされています。

しかし連花リェンホアは、この話をひっそりと聞いていました。
正確には、本人が直接……ではなくて、彼女が小金を握らせていた使用人から聞いたのです。

(ふぅん……結局ここもダメになるってことぉ?)

連花リェンホアは、暗い笑顔を浮かべました。

それが、第一夫人であった蘭珠ランジュがもたらした結果だというのはいささか不満がありましたが……
けれど、自分を冷遇したこの家が潰れてしまうかもしれないというのは後ろ暗い喜びが浮かんでくるものです。

(一緒に沈むなんて絶対ごめんだわぁ……さっさと抜け出す準備をしないと)
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