姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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馬車が動き出すと、車内はすぐに窒息しそうなほどの沈黙に包まれました。
当主は腕を組み不機嫌そうに口をへの字に曲げて、ただ窓の外を流れる景色を睨んでいます。息子の涼珩リャンハンもまた、膝の上で拳を握りしめ、ひたすらに押し黙っていました。

しばらく走ると夫人の忍耐がついに限界を迎えます。彼女は手に持っていた扇子を座席に叩きつけ、金切り声を上げました。

「あなたも、どうしてずっと黙ってるんです!こんなことになっちまって……当主として何か言ったらどうなんだいっ」

夫はようやく顔を向けました。けれども、その瞳に宿っているのは深い落胆と諦めだけです。

「……お前のせいではないか。すべてお前の不始末でこうなったんだ」

夫の低い声が、火に油を注ぎました。夫人はカッと顔を赤くし、噛みつくように言い返します。

「何ですって!あんたがずっと仕事にかこつけて家を空けてるからじゃないか!こっちがどれだけ大変だったことか……!」

「家のことを任せろと言ったのはお前だ。まさか嫁の持参金に手を付けるなどという恥知らずな真似をしているとは思いもしなかった」

「恥知らずですって!?あの家を維持するために必要だったんだよ!あんたが金を入れないから!」

「潤沢に渡してあっただろう、維持したかったのは家のたことか?」

狭い車内で夫婦が醜い言い合いを続けている間も、息子である涼珩リャンハンは一言も発しませんでした。彼はただ、視線を床に落としています。
彼が考えているのは、今まさに両親が揉めている持参金の返還問題ではありませんでした。蘭珠ランジュから送られてきた訴状は、一つではないのです。

彼はこれから暴かれるであろう「二つ目の訴え」のことで頭がいっぱいで、両親の喧嘩など耳に入っていなかったのです。

          

裁判所に着くと、そこには既に異様な熱気が渦巻いていました。
傍聴席は満員で凌家の醜聞を聞きつけた野次馬や、かつての取引先などが興味深そうにひしめき合っています。

「おい見ろ、凌家の人たちだ」

「あんなにやつれて……噂は本当だったんだな」

「嫁の持参金を使い込んだって話だろう?名家も地に落ちたものだ」

ヒソヒソという嘲笑交じりの話し声が、さざ波のように広がります。夫人は顔をこわばらせ、扇子で顔を隠すようにして席へと向かいました。
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