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サイドストーリー
第三の男3
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「私とマルク様は、卒論指導の研究室が同じでしたでしょう? 風魔法のクレイ先生は最終学年生だけでなく大勢の生徒を抱えていらっしゃいましたから、研究室はいつも人が多くて。どうかすると上級生が幅を利かせてしまって下級生がなかなか部屋の利用や先生への質問がしづらい状況があったかと思うのです。それをマルク様が気づかれ、研究室の空き時間や先生方のお手隙の時間帯の情報を一覧でき、かつ予約もできる魔法陣を開発なさいましたよね。あの魔法陣の活用のおかげで、研究室の利用がとてもしやすくなりました。それに先生への質問の前に、上級生の意見も聞けるよう、関係性の構築にも尽力されました。あのおかげで上下の関係性も改善し、クレイ先生のお手を煩わせることも減りました。私はその手腕に感動したのです。ボトルネックになっている部分に着目して、そこを業務が滞りなく流れるよう改善しつつ、そこに関わる者たちの知識向上や相互理解にも役立たせようなんて発想、私のような凡人には思いつきませんもの」
ユーファミア様のご指摘に、そういやそういうこともやったなと思い出しました。クレイ先生は面倒見がいい先生で、風魔法専攻の学生たちの中でも人気でしたから、なかなか指導してもらえる時間をとるのが難しかったんです。それに研究室には急ぎの用事でもない者たちが出入りしては居座っていることもあって、邪魔だなと思っていました。何が邪魔って、僕は研究室も先生もさくっと利用してさくっと帰りたかったんですよ(先生を利用って言っちゃってなんかすみません)。だってリリアナとのデートに間に合わなかったらヤバいじゃないですか。えぇ僕はそもそも魔法は不得手で、なので卒論も中の上くらいの出来で十分って思ってましたからね。魔法を研究するよりもシステムを構築するとか、状況を整理するとか、そっちの方が得意な事務屋です。だから作りましたよ、予約システム。でもすべてはリリアナとのデート時間を確保するためであって、決してそんな、ユーファミア様が思われるような高尚な理由からではありません。
「あのシステムを利用するたびに、私、マルク様のことを素晴らしい方だと感心し、密かに憧れてもおりました」
そうはにかむように笑うユーファミア様のつぶらな瞳と薔薇色の頬に、リリアナ命の僕ですら胸が撃ち抜かれたかというほどの衝撃で、思わずぼーっとなってしまいます。え、待って、また部屋の温度下がった? うわぁっ! なんか冷たいの飛んできた、危ね! マジで命の危機ですから殿下! 氷を飛ばさないでくださいって! ていうか飛んでくる速度前より上がってません!? 破片っていうよりもはや刃なんですけど! は? 最近水魔法の精度が上がった? あなたが全属性持ちなの知ってますけども一番の得意は火魔法ですよね!? なんで水魔法の精度あがっちゃってるんですかね! 水魔法のエンゲルス先生とは犬猿の仲じゃありませんでしたっけ!?
「カーティス様と仲良くしてくださる側近の方が見つかって、本当に良かったですわ」
部屋の温度が下がったからか、温かいお茶にそれはそれは美味しそうに口をつけるユーファミア様。いや、これ、仲良いっていいますかね? 僕、ある意味あなたのせいで命の危機なんですけど!
「マルクは確か、我々の結婚式の後に式を予定しているんだったよな。……花婿が無事だといいな」
殿下それ、洒落になってませんよね? 僕、ただの宮仕えの新人なんですけど!
その後も殿下の膨大な仕事を捌くための下処理に奔走する僕ですが、まさか退職した筆頭事務官様の後任が本当に見つからず、なし崩し的に筆頭事務官ぽい扱いで殿下にお仕えすることになるとはまだまだ思ってもおらず今ココ、という感じです。
まぁでも殿下の側付きは勉強になることは多いですし、リリアナも応援してくれていますし、氷の刃に心臓抉られることなく無事リリアナと結婚できそうなので、もう良しとすることにしようかなとちょっと思ったりもしています。
そんなこんなで殿下とユーファミア様が無事ご成婚なさった3年後、国王陛下ご夫妻が早々に引退を発表。
この国の舵取りは若いお二人に託されることになるわけですが。
僕の妻となったリリアナとの間の子と、国王ご夫妻の2人目のお子様が同時期に生まれたこともあって、女官だったリリアナは乳母に抜擢されジョブチェンジ。
王家の乳母が無爵の夫人では格好がつかないだろうと、リリアナのおかげで僕に子爵位が与えられることになり。
その後も献身的に国王陛下ご夫妻に仕え、その功績から伯爵に陞爵されて。
やがては引退するるマクレガー宰相の後継としてこの国の宰相位を任される――。
――そんな未来が待っているそうなんですけどね。
「うわっ! だから陛下、氷の刃飛ばすのやめてくださいってば! え、私がユーファミア様を見たから? そりゃ見るくらいするでしょうよ一緒に仕事してるんですから! どんだけ狭量なんですか! ちょおおっと! うち来月には4人目の子が産まれるの知ってますよね!? 産まれる前に父親が死ぬシチュエーションとか断固反対! 勤務環境改善!! ノーモアパワハラ!!!」
……僕、果たしてそれまで長生きできるんでしょうか。
==========
ユーファもいい仕事していますね。
暗い話が続いた中、少しでも明るくなっていただけましたでしょうか。
次回こそはカーティスになるかと。
ユーファミア様のご指摘に、そういやそういうこともやったなと思い出しました。クレイ先生は面倒見がいい先生で、風魔法専攻の学生たちの中でも人気でしたから、なかなか指導してもらえる時間をとるのが難しかったんです。それに研究室には急ぎの用事でもない者たちが出入りしては居座っていることもあって、邪魔だなと思っていました。何が邪魔って、僕は研究室も先生もさくっと利用してさくっと帰りたかったんですよ(先生を利用って言っちゃってなんかすみません)。だってリリアナとのデートに間に合わなかったらヤバいじゃないですか。えぇ僕はそもそも魔法は不得手で、なので卒論も中の上くらいの出来で十分って思ってましたからね。魔法を研究するよりもシステムを構築するとか、状況を整理するとか、そっちの方が得意な事務屋です。だから作りましたよ、予約システム。でもすべてはリリアナとのデート時間を確保するためであって、決してそんな、ユーファミア様が思われるような高尚な理由からではありません。
「あのシステムを利用するたびに、私、マルク様のことを素晴らしい方だと感心し、密かに憧れてもおりました」
そうはにかむように笑うユーファミア様のつぶらな瞳と薔薇色の頬に、リリアナ命の僕ですら胸が撃ち抜かれたかというほどの衝撃で、思わずぼーっとなってしまいます。え、待って、また部屋の温度下がった? うわぁっ! なんか冷たいの飛んできた、危ね! マジで命の危機ですから殿下! 氷を飛ばさないでくださいって! ていうか飛んでくる速度前より上がってません!? 破片っていうよりもはや刃なんですけど! は? 最近水魔法の精度が上がった? あなたが全属性持ちなの知ってますけども一番の得意は火魔法ですよね!? なんで水魔法の精度あがっちゃってるんですかね! 水魔法のエンゲルス先生とは犬猿の仲じゃありませんでしたっけ!?
「カーティス様と仲良くしてくださる側近の方が見つかって、本当に良かったですわ」
部屋の温度が下がったからか、温かいお茶にそれはそれは美味しそうに口をつけるユーファミア様。いや、これ、仲良いっていいますかね? 僕、ある意味あなたのせいで命の危機なんですけど!
「マルクは確か、我々の結婚式の後に式を予定しているんだったよな。……花婿が無事だといいな」
殿下それ、洒落になってませんよね? 僕、ただの宮仕えの新人なんですけど!
その後も殿下の膨大な仕事を捌くための下処理に奔走する僕ですが、まさか退職した筆頭事務官様の後任が本当に見つからず、なし崩し的に筆頭事務官ぽい扱いで殿下にお仕えすることになるとはまだまだ思ってもおらず今ココ、という感じです。
まぁでも殿下の側付きは勉強になることは多いですし、リリアナも応援してくれていますし、氷の刃に心臓抉られることなく無事リリアナと結婚できそうなので、もう良しとすることにしようかなとちょっと思ったりもしています。
そんなこんなで殿下とユーファミア様が無事ご成婚なさった3年後、国王陛下ご夫妻が早々に引退を発表。
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僕の妻となったリリアナとの間の子と、国王ご夫妻の2人目のお子様が同時期に生まれたこともあって、女官だったリリアナは乳母に抜擢されジョブチェンジ。
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やがては引退するるマクレガー宰相の後継としてこの国の宰相位を任される――。
――そんな未来が待っているそうなんですけどね。
「うわっ! だから陛下、氷の刃飛ばすのやめてくださいってば! え、私がユーファミア様を見たから? そりゃ見るくらいするでしょうよ一緒に仕事してるんですから! どんだけ狭量なんですか! ちょおおっと! うち来月には4人目の子が産まれるの知ってますよね!? 産まれる前に父親が死ぬシチュエーションとか断固反対! 勤務環境改善!! ノーモアパワハラ!!!」
……僕、果たしてそれまで長生きできるんでしょうか。
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ユーファもいい仕事していますね。
暗い話が続いた中、少しでも明るくなっていただけましたでしょうか。
次回こそはカーティスになるかと。
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