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ヒロインと攻略対象達と私
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「見つけたわよ!華菊咲穂!ちょっと顔貸しなさい!」
そう言って私の前に現れたのは、噂の方でした。
私もですが、周囲の皆様も世界が止まったようになっていらっしゃいますね。
「君は何を言ってるの?」
一緒にいた方が言ってくださいましたが、転校生さんは私の手首を強く掴んで走り出しました。
どこまで行くんでしょうか・・・?
「あんたはあたしの為に存在するんだから」
「あたしの応援しないなんておかしいわよ」
「あんた転生者じゃないでしょうね!転生者って何?そんなの自分で考えれば」
「あたしは悪役令嬢に断罪されるヒロインになんかならないし!」
このような事を言われながら連れて来られたのは、今は使われていない旧舎でした。
2階の空き部屋に連れ込まれ、いきなり窓の方向に突き飛ばされて椅子ごと倒れてしまいましたよ。
保健室に行ってもいいでしょうか?ダメ?そうですか。
転校生さん曰く、華菊咲穂 という名前は、ヒロインの話を聞くサポートキャラという意味なんだそうです。
ダジャレでしょうか・・・?
あ、話を遮ってはいけないんですね。失礼致しました。
「さっそく始めてもらうわよ!あんたのせいで攻略対象達とうまくいかないんだから!」
そう言って渡されたのは、学園の有名人達の名前を書いた紙。
この方達の情報が必要なんですか?それは知ってる?では何が知りたいのでしょうか。
「逆ハールートに行く方法よ!」
ぎゃくはーとはなんでしょうか。
「役立たないわねこのクズ!逆ハーって言うのは、攻略対象全員とくっつく事よ!」
・・・つまり、全員とお付き合いをするという事ですね。
「そう言ってるじゃん。いちいち聞き返さないでくれる?」
必要な事なので聞き返しただけなのですが。
「婚約者がいる事位分かってるわよ。でもさ、攻略対象はヒロインを愛するって決まってるんだから、やり方さえ間違えなきゃヒロイン断罪ルートには行かないし逆ハーもできる筈よ。あんたがちゃんと働けばね!!」
人に頼る前に自分で行動なさればよろしいのでは?と思いましたが、暴力を振るわれると後で困りますので黙っておかないといけません。
「転校初日にイベントがあったのに無視されるし、その後も全く好感度が上がらないのよ。悪役令嬢が何かやってるとしか思えないわ。あんたも見つからないし打つ手がなくなってたのよ」
その悪役令嬢とは?
「西園寺夏生よ。サポキャラのくせにそんな事も知らないの?」
西園寺様は存じ上げております、とても優しい方ですよ(怒らせなければ)。
「は?優しい?あいつはあたしを殺そうとするのよ!」
この方はなんて恐ろしい事をおっしゃるのでしょうか。
西園寺様がそんな事をする筈がないですし、必要もありませんが・・・。
「ああ、もうその話はいいわ。大事なのは逆ハールートに入る事よ!」
では、転校生さんのおっしゃる乙女ゲームという物の説明からお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
─────・・・・─────────・・・・・・・───・・────zz・・ 寝てはいけませんよ。
────・・・・───・・・・・・・・・───・・・・・・・・・・・・・・・そのお話は3度目ですね、そろそろよろしいでしょうか。
2時間も語ったにも関わらず、全く要点を得ないお話でしたので簡潔にさせていただきますね。
私立貴宮学園に転校してきた心優しいヒロインが心に闇を持つ攻略対象達を癒し、悪役令嬢の嫌がらせに負けずに愛を育んでいく物語。
攻略対象は6名。
5Sクラス 現会長の鷹屋翔様 18歳
3Sクラス 副会長の櫻澤理玖様 18歳
3Sクラス 書記の一ツ木伊吹様 17歳
3Sクラス 文化部委員長の弥栄玲央様 16歳
3Aクラス 運動部委員長の若本紫苑様 17歳
そして隠しキャラのSクラス担任の入間旭先生 32歳
ところで、転校生さんはどのクラスなのでしょう?
「Fクラスよ、ゲームならSなのになぜかFなのよ。絶対に悪役令嬢は何かしたんだわ」
クラスは能力・成績次第でどうとでもなるのですが。
「なによ!あたしがバカだって言いたいの!?」
「その通りだ」
その声と同時に教室の扉が開かれ、攻略対象の方達が入ってこられました。
お待ちしておりました・・・もう少し早く来て下さってもよろしかったのですよ。
「バカどころか大バカだろう」
冷たい声でおっしゃるのはこの国のトップを継ぐ鷹屋様、俺様な所もカッコいいのだそうです。
「本当におかしな事を言いますね」
鷹屋様の側近である櫻澤様の清廉なお顔が歪んでいますね、これは珍しい事のようです。
「俺も頭がいいとは言えないけど、これは凄いよ」
若本様、Aクラスはスポーツ特化ですから。それに毎日遅くまで頑張っていらっしゃるとお聞きしますよ。
「これはレポートにしておく案件だな」
一ツ木様は勉強熱心でいらっしゃいますね、寝食を忘れるのが玉に瑕なのですか。
「さすがの僕も無理だね~」
顔に似合わぬ歯に衣着せぬ発言をなさる弥栄様にいつもの笑顔がございません、素の顔は厳しさがあるのですか。
「まともな奴を担当できるのって幸せな事だな」
入間先生のご指導が完璧だからですよ。
「なっなっなっなんで全員ここにいるのよ!」
皆さんの登場で転校生さんの存在が薄くなっておりました。
旧舎が大切な場所である事をご存じなかったのですか・・・?
「知る訳ないじゃない!あんたがハメたのね!まさか悪役令嬢の手先になったんじゃないでしょうね!」
「その悪役令嬢ってなんなの?」
と、怪訝な顔で入ってこられた西園寺様です。
戸惑うのは当然です、私にも分かりますよ。
「はっ?あんた誰よ!」
「西園寺夏生だけど」
「はーーーー?」
転校生さんが目を見開いて驚いていますが、それは当然です。
西園寺様は、令嬢ではなく令息なのですから・・・。
「ついでに教えておきましょうか」
櫻澤様が、先ほどの用紙を持ち何かを書いています。
「この学園は高宮学園、我らが所属するのは貴宮学園だ。」
櫻澤様が用紙を転校生さんに渡すのと同時に鷹屋様がおっしゃいました。
「もしかして、平仮名しか読めないんじゃな~い?」
弥栄様、追い打ちをかけてはいけません!こういう時はとても楽しそうなお顔をされるのですね。
「僕が令嬢に見えるらしいし、狂ってるんじゃない?」
西園寺様は、身長が伸びるまでよく女の子に間違われて攫われそうになる事も多かったので、綺麗・可愛いは禁句なのです。
どの世界でも有名な話なのですが、これもご存じないのですね。
「ねえ、香穂。君はどうして否定しなかったのかな?」
えっ、こちらに矛先が来るんですか?西園寺様、近いです!近すぎます!怯えますよ!
「香穂?」
転校生さんが覚醒したおかげで西園寺様の視線が逸れました、良かったです。
「あんた・・・華菊咲穂じゃないの?」
転校生さんの目が座ってます・・・こういうのを前門の虎後門の狼というのでしょうか?
「華菊香穂だ、咲穂は香穂の姉で僕の婚約者だよ」
入間先生!それを今言っては・・・。
「はぁ?そんな設定ゲームになかったわよ!!!なんなのよこれ!あんた達はあたしのものでしょ!」
転校生さんが頭を掻きむしり始めました。
こんな動作は初めて見ました、どこで覚えたのですか?
「そろそろ限界だろう」
そうですね、鷹屋様。
「あなたは現状が把握できていますか?」
「分かってるわよ!ここはあたしがヒロインの、あたしの為にある、あたしの世界よ!」
何も分かっていらっしゃらないようです・・・これははっきり言うしかありませんよ。
「あなたは人間ではありません」
そう、高宮学園はアンドロイドの為の学園です。
この学園では、まず人間らしく振る舞う事を覚え、ランクアップすれば持ち主(マスター)の振る舞いを覚え、最終的に人間の影となるのです。
攻略対象様方のアンドロイド達は肉付けが完了しているので、転校生さんは
高宮学園はアンドロイド、そして貴宮学園はそのアンドロイドを正しく使役できるエリートの為の学園。
つまり攻略対象達と悪役令じょ・・・令息は、学園の中でもトップクラスの方々です。
3Sクラスというのは、3体のアンドロイドを使役できるという意味で、Sはエリートとしてのランクを指すのですよ。
ですから、学園と名乗ってはいますが年齢は様々なのです。
転校生さんは習った筈の全てが消去されているようですね。
「これを見ればさすがに理解できるでしょう」
私は内ポケットに入れていた鏡を転校生さんに見せました。
・・・鏡に映るのは肉付け前の姿です。
「何よこれ・・・何なの・・・いいえ、こんなのあたしじゃないわ。あたしの髪はピンクで、目の色はこの世界であたしだけが、選ばれた者だけが持つ金なの。あたしを一目見ただけで皆があたしに憧れるのよ。ほら、あたし綺麗でしょ?ね?あは、あはは、あはははははははは」
転校生さんが狂ったように笑います。
「ここまで来たらもうダメだな。この場で廃棄するぞ」
入間先生がそうおっしゃって、電気銃を転校生さんに向けました。
「コレをプログラミングした人間とウィルスは既に確保しています。顔も指紋も変えていますが反社会組織の幹部でしたよ」
プログラミングを行うのは人間です。
その理由は、アンドロイドに個人としての意思を持たせない為。
300年前、全てをアンドロイドに任せた結果、意思を持つアンドロイドが量産されて戦争を引き起こしました。
170年かけて何とか人間側が勝利をおさめましたが、それ以来重要な仕事をアンドロイドに任せないように定められたのです。
その後、アンドロイドの関する全ての権限を得たのが華菊コーポレーションです。
「さすが香穂、仕事が早いな」
鷹屋様が笑顔でおっしゃいます。
「攻略対象者達の名前を見てすぐに分かったわよ。先生は姉の夫だし、皆は私の愛する婚約者達だもの!」
この言葉に皆様のお顔が明るくなりました、未来は安泰ですね。
戦争が終わる頃には、女性がほとんど死に絶えました。
130年経って、やっと男女の比率が8:2まで回復したそうです。
その為、女性は複数の夫を持ちます、そして危険を回避する為に外には出ません。
アンドロイドも一般で2体、エリートで4体、香穂様はトップなので10体の使役を許されています。
私は、香穂様が12歳になる時から使役しておりますから、こういう重要な案件は必ず私が出動します。
香穂様の為なら壊れても構いません、いいえ壊れるべきだと思っています。
香穂様を傷つける人間もアンドロイドも許しません。
私の全てなのですから。
香穂様の婚約者様方も私を同じ事をおっしゃいますから、私のこの記録は人間の言う愛というものでしょう。
彼女の言葉が私から発せられる時の幸せな気持ちは、私に搭載されている言語の全てを探っても言葉に言い表せません。
ですが、これはスクラップになるまで秘さねばなりません。
愛は記録ではなく、アンドロイドにとって禁忌とされる、感情というものですから。
──────────これは、アンドロイドによる香穂という人間への愛の物語。
そう言って私の前に現れたのは、噂の方でした。
私もですが、周囲の皆様も世界が止まったようになっていらっしゃいますね。
「君は何を言ってるの?」
一緒にいた方が言ってくださいましたが、転校生さんは私の手首を強く掴んで走り出しました。
どこまで行くんでしょうか・・・?
「あんたはあたしの為に存在するんだから」
「あたしの応援しないなんておかしいわよ」
「あんた転生者じゃないでしょうね!転生者って何?そんなの自分で考えれば」
「あたしは悪役令嬢に断罪されるヒロインになんかならないし!」
このような事を言われながら連れて来られたのは、今は使われていない旧舎でした。
2階の空き部屋に連れ込まれ、いきなり窓の方向に突き飛ばされて椅子ごと倒れてしまいましたよ。
保健室に行ってもいいでしょうか?ダメ?そうですか。
転校生さん曰く、華菊咲穂 という名前は、ヒロインの話を聞くサポートキャラという意味なんだそうです。
ダジャレでしょうか・・・?
あ、話を遮ってはいけないんですね。失礼致しました。
「さっそく始めてもらうわよ!あんたのせいで攻略対象達とうまくいかないんだから!」
そう言って渡されたのは、学園の有名人達の名前を書いた紙。
この方達の情報が必要なんですか?それは知ってる?では何が知りたいのでしょうか。
「逆ハールートに行く方法よ!」
ぎゃくはーとはなんでしょうか。
「役立たないわねこのクズ!逆ハーって言うのは、攻略対象全員とくっつく事よ!」
・・・つまり、全員とお付き合いをするという事ですね。
「そう言ってるじゃん。いちいち聞き返さないでくれる?」
必要な事なので聞き返しただけなのですが。
「婚約者がいる事位分かってるわよ。でもさ、攻略対象はヒロインを愛するって決まってるんだから、やり方さえ間違えなきゃヒロイン断罪ルートには行かないし逆ハーもできる筈よ。あんたがちゃんと働けばね!!」
人に頼る前に自分で行動なさればよろしいのでは?と思いましたが、暴力を振るわれると後で困りますので黙っておかないといけません。
「転校初日にイベントがあったのに無視されるし、その後も全く好感度が上がらないのよ。悪役令嬢が何かやってるとしか思えないわ。あんたも見つからないし打つ手がなくなってたのよ」
その悪役令嬢とは?
「西園寺夏生よ。サポキャラのくせにそんな事も知らないの?」
西園寺様は存じ上げております、とても優しい方ですよ(怒らせなければ)。
「は?優しい?あいつはあたしを殺そうとするのよ!」
この方はなんて恐ろしい事をおっしゃるのでしょうか。
西園寺様がそんな事をする筈がないですし、必要もありませんが・・・。
「ああ、もうその話はいいわ。大事なのは逆ハールートに入る事よ!」
では、転校生さんのおっしゃる乙女ゲームという物の説明からお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?
─────・・・・─────────・・・・・・・───・・────zz・・ 寝てはいけませんよ。
────・・・・───・・・・・・・・・───・・・・・・・・・・・・・・・そのお話は3度目ですね、そろそろよろしいでしょうか。
2時間も語ったにも関わらず、全く要点を得ないお話でしたので簡潔にさせていただきますね。
私立貴宮学園に転校してきた心優しいヒロインが心に闇を持つ攻略対象達を癒し、悪役令嬢の嫌がらせに負けずに愛を育んでいく物語。
攻略対象は6名。
5Sクラス 現会長の鷹屋翔様 18歳
3Sクラス 副会長の櫻澤理玖様 18歳
3Sクラス 書記の一ツ木伊吹様 17歳
3Sクラス 文化部委員長の弥栄玲央様 16歳
3Aクラス 運動部委員長の若本紫苑様 17歳
そして隠しキャラのSクラス担任の入間旭先生 32歳
ところで、転校生さんはどのクラスなのでしょう?
「Fクラスよ、ゲームならSなのになぜかFなのよ。絶対に悪役令嬢は何かしたんだわ」
クラスは能力・成績次第でどうとでもなるのですが。
「なによ!あたしがバカだって言いたいの!?」
「その通りだ」
その声と同時に教室の扉が開かれ、攻略対象の方達が入ってこられました。
お待ちしておりました・・・もう少し早く来て下さってもよろしかったのですよ。
「バカどころか大バカだろう」
冷たい声でおっしゃるのはこの国のトップを継ぐ鷹屋様、俺様な所もカッコいいのだそうです。
「本当におかしな事を言いますね」
鷹屋様の側近である櫻澤様の清廉なお顔が歪んでいますね、これは珍しい事のようです。
「俺も頭がいいとは言えないけど、これは凄いよ」
若本様、Aクラスはスポーツ特化ですから。それに毎日遅くまで頑張っていらっしゃるとお聞きしますよ。
「これはレポートにしておく案件だな」
一ツ木様は勉強熱心でいらっしゃいますね、寝食を忘れるのが玉に瑕なのですか。
「さすがの僕も無理だね~」
顔に似合わぬ歯に衣着せぬ発言をなさる弥栄様にいつもの笑顔がございません、素の顔は厳しさがあるのですか。
「まともな奴を担当できるのって幸せな事だな」
入間先生のご指導が完璧だからですよ。
「なっなっなっなんで全員ここにいるのよ!」
皆さんの登場で転校生さんの存在が薄くなっておりました。
旧舎が大切な場所である事をご存じなかったのですか・・・?
「知る訳ないじゃない!あんたがハメたのね!まさか悪役令嬢の手先になったんじゃないでしょうね!」
「その悪役令嬢ってなんなの?」
と、怪訝な顔で入ってこられた西園寺様です。
戸惑うのは当然です、私にも分かりますよ。
「はっ?あんた誰よ!」
「西園寺夏生だけど」
「はーーーー?」
転校生さんが目を見開いて驚いていますが、それは当然です。
西園寺様は、令嬢ではなく令息なのですから・・・。
「ついでに教えておきましょうか」
櫻澤様が、先ほどの用紙を持ち何かを書いています。
「この学園は高宮学園、我らが所属するのは貴宮学園だ。」
櫻澤様が用紙を転校生さんに渡すのと同時に鷹屋様がおっしゃいました。
「もしかして、平仮名しか読めないんじゃな~い?」
弥栄様、追い打ちをかけてはいけません!こういう時はとても楽しそうなお顔をされるのですね。
「僕が令嬢に見えるらしいし、狂ってるんじゃない?」
西園寺様は、身長が伸びるまでよく女の子に間違われて攫われそうになる事も多かったので、綺麗・可愛いは禁句なのです。
どの世界でも有名な話なのですが、これもご存じないのですね。
「ねえ、香穂。君はどうして否定しなかったのかな?」
えっ、こちらに矛先が来るんですか?西園寺様、近いです!近すぎます!怯えますよ!
「香穂?」
転校生さんが覚醒したおかげで西園寺様の視線が逸れました、良かったです。
「あんた・・・華菊咲穂じゃないの?」
転校生さんの目が座ってます・・・こういうのを前門の虎後門の狼というのでしょうか?
「華菊香穂だ、咲穂は香穂の姉で僕の婚約者だよ」
入間先生!それを今言っては・・・。
「はぁ?そんな設定ゲームになかったわよ!!!なんなのよこれ!あんた達はあたしのものでしょ!」
転校生さんが頭を掻きむしり始めました。
こんな動作は初めて見ました、どこで覚えたのですか?
「そろそろ限界だろう」
そうですね、鷹屋様。
「あなたは現状が把握できていますか?」
「分かってるわよ!ここはあたしがヒロインの、あたしの為にある、あたしの世界よ!」
何も分かっていらっしゃらないようです・・・これははっきり言うしかありませんよ。
「あなたは人間ではありません」
そう、高宮学園はアンドロイドの為の学園です。
この学園では、まず人間らしく振る舞う事を覚え、ランクアップすれば持ち主(マスター)の振る舞いを覚え、最終的に人間の影となるのです。
攻略対象様方のアンドロイド達は肉付けが完了しているので、転校生さんは
高宮学園はアンドロイド、そして貴宮学園はそのアンドロイドを正しく使役できるエリートの為の学園。
つまり攻略対象達と悪役令じょ・・・令息は、学園の中でもトップクラスの方々です。
3Sクラスというのは、3体のアンドロイドを使役できるという意味で、Sはエリートとしてのランクを指すのですよ。
ですから、学園と名乗ってはいますが年齢は様々なのです。
転校生さんは習った筈の全てが消去されているようですね。
「これを見ればさすがに理解できるでしょう」
私は内ポケットに入れていた鏡を転校生さんに見せました。
・・・鏡に映るのは肉付け前の姿です。
「何よこれ・・・何なの・・・いいえ、こんなのあたしじゃないわ。あたしの髪はピンクで、目の色はこの世界であたしだけが、選ばれた者だけが持つ金なの。あたしを一目見ただけで皆があたしに憧れるのよ。ほら、あたし綺麗でしょ?ね?あは、あはは、あはははははははは」
転校生さんが狂ったように笑います。
「ここまで来たらもうダメだな。この場で廃棄するぞ」
入間先生がそうおっしゃって、電気銃を転校生さんに向けました。
「コレをプログラミングした人間とウィルスは既に確保しています。顔も指紋も変えていますが反社会組織の幹部でしたよ」
プログラミングを行うのは人間です。
その理由は、アンドロイドに個人としての意思を持たせない為。
300年前、全てをアンドロイドに任せた結果、意思を持つアンドロイドが量産されて戦争を引き起こしました。
170年かけて何とか人間側が勝利をおさめましたが、それ以来重要な仕事をアンドロイドに任せないように定められたのです。
その後、アンドロイドの関する全ての権限を得たのが華菊コーポレーションです。
「さすが香穂、仕事が早いな」
鷹屋様が笑顔でおっしゃいます。
「攻略対象者達の名前を見てすぐに分かったわよ。先生は姉の夫だし、皆は私の愛する婚約者達だもの!」
この言葉に皆様のお顔が明るくなりました、未来は安泰ですね。
戦争が終わる頃には、女性がほとんど死に絶えました。
130年経って、やっと男女の比率が8:2まで回復したそうです。
その為、女性は複数の夫を持ちます、そして危険を回避する為に外には出ません。
アンドロイドも一般で2体、エリートで4体、香穂様はトップなので10体の使役を許されています。
私は、香穂様が12歳になる時から使役しておりますから、こういう重要な案件は必ず私が出動します。
香穂様の為なら壊れても構いません、いいえ壊れるべきだと思っています。
香穂様を傷つける人間もアンドロイドも許しません。
私の全てなのですから。
香穂様の婚約者様方も私を同じ事をおっしゃいますから、私のこの記録は人間の言う愛というものでしょう。
彼女の言葉が私から発せられる時の幸せな気持ちは、私に搭載されている言語の全てを探っても言葉に言い表せません。
ですが、これはスクラップになるまで秘さねばなりません。
愛は記録ではなく、アンドロイドにとって禁忌とされる、感情というものですから。
──────────これは、アンドロイドによる香穂という人間への愛の物語。
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