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第2章 国交回復の経緯
(9)国交回復と新たな婚約について
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外交員や政務官は宣伝こそ積極的にしてはいないが、正式な訪問であり公にされてはいた。けれどルセアノの皇太子が入国したことを知るのはティリシス国王と宰相、その護衛騎士の一部である。
ディーデリヒは内密に国王へ謁見し、すぐにでも国交を回復したい旨を伝えた。
ティリシスでも国交回復は検討されておりそれについては前向きだったが、婚姻政策について国王は渋った。
現国王までの四代ほどは第一王子の王位継承が続いている。それが伝統というほどのものでないのは理解しているが、自分の代で四代続いたそれを変えるのもどうなのか。
しかしパトリツィアとの婚姻がなくなれば後ろ楯のないヘルムートの立太子は難しい。
ラインマイヤー公爵は国王が優柔不断なのを知っていた。臣籍降下したとはいえ同母兄弟で年も近いため、一緒に育ったのだ。
だから第一王子とパトリツィアの婚約が正式に発表されていないのをこれ幸いと、宰相として婚姻政略の有効性を説き国王を説得したのだった。
ラインマイヤー公爵はヘルムートを素行不良で王位を継げるかも分からず下位貴族の娘に入れあげていると認識していた。
そんな第一王子よりも隣国の皇太子であり、パトリツィアを望んでいるディーデリヒに嫁がせた方が娘が幸せになれると考えたのだ。
こうしてティリシス王国第一王子ヘルムート・ビシュケンスとパトリツィア・ラインマイヤーの婚約は二十日間で解消された。
正式に婚約が解消される三日前、パトリツィアにはヘルムートとの婚約解消が伝えられた。同時に国交回復の婚姻政策のためにパトリツィアがルセアノ皇国へ嫁ぐことも知らされた。
確かにディーデリヒとはお互いに国交回復へ向けて動くことを約束していた。そのためにも将来的には第一王子の王子妃となり隣国との国交のために働くつもりだった。
それを帰国してすぐ宰相を務める父にも相談していた。
けれど、王弟で宰相の父親に公爵の娘でしかないパトリツィアが国交回復を実現したいと伝えただけで、こうも急に事態が動くものだろうか。パトリツィアは不思議に思った。
不思議に思ってディーデリヒに手紙を書こうと考えた、その翌日、ディーデリヒが直接ラインマイヤー公爵邸を訪ねて来たときには言葉も出ないほどに驚いた。
「あなたが婚約したと聞いて、いてもたってもいられなかった」
向かい合って座ったディーデリヒの言葉にパトリツィアの胸の奥がドキドキと高鳴る。今まで生きてきて感じたことのない種類の緊張感だった。
気がつけば給仕人の姿も侍女の姿も部屋にない。応接室のドアや窓は開いているものの、パトリツィアは初めて家族以外の男性と二人きりになったのだ。
恐慌状態とまではいかなくとも、かなり混乱していた。
「あの、どうして……その、いてもたっても……?」
「一目見て、誰かも知れない貴女を僕の妃にしたいと思った。したい、というか絶対にするのだと決めた」
まっすぐと薄赤の瞳で他のなにも目に入らないという様子のディーデリヒに、さらに「一目惚れだよ」と囁くように言い募られる。
身体中が熱くなって、耳の奥でドクドクと血の流れる音がして、なにも考えられなくて、パトリツィアは卒倒しそうとだけ思った。
ディーデリヒは内密に国王へ謁見し、すぐにでも国交を回復したい旨を伝えた。
ティリシスでも国交回復は検討されておりそれについては前向きだったが、婚姻政策について国王は渋った。
現国王までの四代ほどは第一王子の王位継承が続いている。それが伝統というほどのものでないのは理解しているが、自分の代で四代続いたそれを変えるのもどうなのか。
しかしパトリツィアとの婚姻がなくなれば後ろ楯のないヘルムートの立太子は難しい。
ラインマイヤー公爵は国王が優柔不断なのを知っていた。臣籍降下したとはいえ同母兄弟で年も近いため、一緒に育ったのだ。
だから第一王子とパトリツィアの婚約が正式に発表されていないのをこれ幸いと、宰相として婚姻政略の有効性を説き国王を説得したのだった。
ラインマイヤー公爵はヘルムートを素行不良で王位を継げるかも分からず下位貴族の娘に入れあげていると認識していた。
そんな第一王子よりも隣国の皇太子であり、パトリツィアを望んでいるディーデリヒに嫁がせた方が娘が幸せになれると考えたのだ。
こうしてティリシス王国第一王子ヘルムート・ビシュケンスとパトリツィア・ラインマイヤーの婚約は二十日間で解消された。
正式に婚約が解消される三日前、パトリツィアにはヘルムートとの婚約解消が伝えられた。同時に国交回復の婚姻政策のためにパトリツィアがルセアノ皇国へ嫁ぐことも知らされた。
確かにディーデリヒとはお互いに国交回復へ向けて動くことを約束していた。そのためにも将来的には第一王子の王子妃となり隣国との国交のために働くつもりだった。
それを帰国してすぐ宰相を務める父にも相談していた。
けれど、王弟で宰相の父親に公爵の娘でしかないパトリツィアが国交回復を実現したいと伝えただけで、こうも急に事態が動くものだろうか。パトリツィアは不思議に思った。
不思議に思ってディーデリヒに手紙を書こうと考えた、その翌日、ディーデリヒが直接ラインマイヤー公爵邸を訪ねて来たときには言葉も出ないほどに驚いた。
「あなたが婚約したと聞いて、いてもたってもいられなかった」
向かい合って座ったディーデリヒの言葉にパトリツィアの胸の奥がドキドキと高鳴る。今まで生きてきて感じたことのない種類の緊張感だった。
気がつけば給仕人の姿も侍女の姿も部屋にない。応接室のドアや窓は開いているものの、パトリツィアは初めて家族以外の男性と二人きりになったのだ。
恐慌状態とまではいかなくとも、かなり混乱していた。
「あの、どうして……その、いてもたっても……?」
「一目見て、誰かも知れない貴女を僕の妃にしたいと思った。したい、というか絶対にするのだと決めた」
まっすぐと薄赤の瞳で他のなにも目に入らないという様子のディーデリヒに、さらに「一目惚れだよ」と囁くように言い募られる。
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